EPISODEⅧ 異能力の代償

「お前らさぁ…」

アストラルの中心、桜を制御した紅輝こうきはぷるぷると拳を震わせて叫んだ。

「こんなの簡単に受け入れられる訳ねぇだろぉっ?!」

同じ場所に居た蒼月あるな或空あるくはびくりと身体を跳ねさせた。

申し訳なさそうに蒼月あるな紅輝こうきを宥める。

「ごめんね。でも時は一刻を争う状況なの…。」

「そ、それにしたって…!もっとなんかあるだろ?!」

「…じゃあすい達にはどうするべきだ?こっちは少しでも早く準備を整えたいんだ。」

人間をパニックに陥れないようにデュナミスに引き入れる方法。

その方法は人間に聞いてみるのが手っ取り早いと判断した或空あるくは、一旦紅輝こうきの家に移動することを提案した。


紅輝こうき 宅=

紅輝こうきの記憶媒体内部にアクセスして座標を算出して、紅輝こうき宅の部屋の中。

或空あるくQUASARクエイサーについての詳細を説明していた。


QUASARクエイサーは、天星世界に存在するクェイサーをエネルギー源として人間の中に存在する潜在能力を強制的に目覚めさせる媒体を或空あるくがアプリに落とし込んだモノを指す。

もし、目覚めた能力を制御する事が出来なければ、その人間は能力に喰い殺されてしまう。

異能力を制御できた者だけが、デュミナスとしてその能力を扱うことができる。


「…じゃあ、あの時…俺が桜を制御出来なかったら死んでたってのか…?」

「いや、最悪の場合はオレが喰い止めるつもりだったけど。」

或空あるくがばつの悪そうな表情を向けると、紅輝こうきは苦笑いしてスマホを取り出してQUASARクエイサーをいじる。

徐々に目を輝かせる紅輝こうき

元よりオカルト好きな紅輝こうきにはデュナミスとなって異能力を扱えることに喜びを感じていた。

「この血液分離ハイマ・アフェレシスってのも、俺が使えるのか?!」

自身のスマホに入ったQUASARクエイサー内の能力の解説を食い入るように読み込む。

「あぁ、体内の血液を使って別の物体を生成できるはずだけど。」

「うっわぁ、なんか怖ぇけど…やってみるか…。」

紅輝こうきは恐る恐る目を閉じると集中力を高めて手に力を籠める。

掌から噴き出た血液が少しの桜を纏いながら短剣を生成することに成功した。

「…っは…ぁ!!で、でき…た…!!」

瞬間、ふらつく紅輝こうきの身体。

「…あぁ、う、ぇ?なん…だ、これ…?」

「あー、勿論、血液使ってんだから慣れなきゃ貧血起こすぞ?」

ばたりと倒れた紅輝こうき蒼月あるなが慌てて支える。

「ちょっと、大丈夫?!てか、或空あるくも見てないで手伝ってよ!」

「はーぁ?治せるの蒼月あるなだけだろ?」

投げやりな態度を見せる或空あるくに溜め息を吐きながら、傷病転移ビオス・ユンクティオ紅輝こうきの貧血を治した。

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