EPISODEⅥ デュナミスの創始

 夜が明け、朝になる。

 時刻は人間界で午前5時。

「みー、また夜になったら来るねー!」

 未来空みらくは笑顔でそう言って、天星世界へ戻っていった。

「さて、どうやって人間と会おうか。」

「また会う約束でもしとけばよかったね。」

 少しの間、熟考する。

 途方に暮れるという方が合っているかもしれない。

 そんな最中、蒼月あるなが思い出したように口を開いた。

「あ。そういえばさ、クェイサーってボクにも分けられないの?」

「………確かに、いけるかもな。」

 或空あるくが即答しなかったのは、まだ不安が残るから。

 でもデュナミスがいないと、この世界は前に進めないから。

 天狼星の管理者である2人は決断した。


「デュナミスを…、蒼月あるなの名の下に…。」

μετενσάρκωσηメテンプスューコースィス…!」

 輪廻を唱えると、蒼月あるなの瞳が赤色の輝きデュナミスとなった。

「…これ、何ができるようになったんだろう?」

「言うと思った。」

 或空あるくは黒い端末を蒼月あるなに投げる。

 人間界で使用されているスマートフォン端末を模したものに、

 或空あるくがクェイサーのエネルギー源を組み込んだらしい。

 端末を起動すると『QUASAR.クェイサー』というアプリが初期搭載されていた。

「それ、開いてみ?」


 赤い銀河が自転するロード画面。

 生体認証システムが起動して瞳の虹彩の読み取りを開始する。


【Καλωσήρθατε στον-η-ο Αρουνα.】

 §傷病転移〖ビオス・ユンクティオ〗

  傷や病を癒して、それを他人に移すことができる

 §幻覚灯影〖プセヴデスシシス〗

  幻を見せて、敵を翻弄させる

 §瞬間移動〖パラノイア・モンド〗

  別世界に他人引きずり込む事ができる。

 §・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「これが、使えるってこと?」

「そういうこと。パラノイア・モンドで紅輝こうき達を呼んでくれ。」

蒼月あるなが得た異能で人間たちを別世界に喚ぶことになった。

まだ制御できるかも分からない、この異能力を試してみたいとの提案で、

1人ずつ喚ぶことにした。


「パラノイア・モンド!」

詠唱に依って蒼月あるなの瞳が輝きを増す。

そして、2人の意識は別世界アストラルに引き摺り込まれていった。


=アストラル=

ここは蒼月あるなが創り出した別世界。

蒼月あるなを主とし、すべてを捧げた世界。

「暗いね…、少し月明りを。」

そう呟くだけで、アストラルは主に順応して変容する。

月明りがアストラルを照らし、無色の床に反射した。

「綺麗な世界だな…。」

「ふふ、そうでしょ!」


早速、蒼月あるなはアストラルに紅輝こうきを喚んだ。

「は…?え、ここどこだよ…?!」

紅輝こうき、昨日ぶりだな。」

一言、話しかけると同時にデュナミスの儀を始める。

「デュナミスを…、紅輝こうきの名の下に…。」

μετενσάρκωσηメテンプスューコースィス…!」

 輪廻を唱えると、紅輝こうきの瞳が赤色の輝いた。


桜が、風が、吹き荒れる。

「…なんだこれっ?!俺の身体から桜が舞ってる?!」

暴走した【死垂れ桜】がアストラルに荒々しく舞い散った。

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