第4話 興味
「和田にとっておきの情報教えてあげるよ」
机に教科書をあらかた詰め終えた前田がこちらを振り向いて続ける。僕は何も答えずにただ前田の次の言葉に耳を傾ける。どうでもいいこと70%、いいこと30%くらいの期待。
「茜はね、彼氏いたことないよ」
その言葉を耳で飲み込んで、脳に取り入れて考える。前田に言葉を返すことなく考える。じゃあもし三浦さんと付き合うことが出来たら、僕が初彼氏!?いやでも待てよ。あれだけ可愛い女性が誰からもアプローチされたことがないんてあり得ない。単純に恋愛に興味がないだけなんじゃ...?いやそれなら僕が!この僕が!何とか茜さんを恋愛に興味を、いや僕に興味を持ってくれるようにすれば!いやでも...
「いや長ーい、単純に茜の周りに茜にとってのいい男がいなかっただけでしょ?」
耳から飛び込んできた前田の言葉に反応して考えるのが延期された。前田のほうを振り向き質問を投げかける。
「僕は茜さんにとってのいい男になれるのか?」
「なるしかないっしょ!あと男から告白されたことないって茜言ってたな~」
「マジで!?あんなに可愛いのに?」
「だからじゃない?下手に手を出せないんだよ。高嶺の花だからさ」
「じゃあ僕は茜さんにとっての初告白、プラス初彼氏っていう究極の存在に成ることが、出来る可能性があるの?」
「そうそう!告白されたことないから案外チョロくときめいてくれるかもよ?」
少し冗談交じりにそう言う前田。
「そんな生まれたてのヒヨコをダマすみたいな感じに?」
「もう告白しちゃえよー、そして茜に恋愛を手取り足取り教えてあげなよ」
「いや僕も恋愛知らん。教えてもらいたい側だよ」
「なら一緒に学んでいけばいいよ~告白するしかないんだよ~好きって伝えるしかないんだよ~」
周りから見たらおちゃらけているような発言が、僕の心の深いところまで突き刺さった。やっぱり告白するしかない!
「何の話してんの~?」
トイレから戻ってきた諒がいた。それに気づいた前田がさっきより高い声で、完璧なスマイルで挨拶をする。
「りょ、諒君おはよう」
「おー、前田さんおはよ」
クールに挨拶を返す諒と、挨拶を返してもらえて満足気な表情を浮かべている前田。そしてニヤついた表情を前田に送る僕。そしてさらに、諒と一緒にトイレに行ったはずの回がいないことに気づいた僕。
「あれ、回は?置いてきた?」
「大便」
「連れションで着いて行った方が大便で帰ってこないことあるんだ」
「いや朝からもう腹痛そうな顔してたし、長くなるぞ~格闘時間が」
「え、そんな顔してたか?良く分かったな」
「そりゃそうでしょ!逆に分からなかったのかよ~?俺たち幼稚園からの付き合いなのに~何なら赤ちゃんの頃から出会ってるのに~」
諒の悲しいアピールを断ち切るようにチャイムがなる。
「ホームルームやるぞー席付け」
チャイムと同時に教室に入ってきた先生が声をかける。
「めぐアウト!!」
それだけを言い残して諒は自分の席に戻って行った。諒が席に着くのを確認して前田に話しかける。
「あんたの友達、相変わらずカッコいいね」
「クラスメイトだろ?何でそんな全然知らない人みたいな呼びかた?」
僕の質問への返答はない。
「あっそうだ。前田ーお前こそ告白しちゃえよ。...諒とお前、外見だけならお似合いだぞ」
「私のはそう言うのじゃないから」
前田は顔を赤くして教卓に視線を向ける。
「諒はモテるからな~早くしないと誰かに取られちゃうぞ?」
と言ったものの諒に彼女がいた記憶はない。僕に内緒にしてるだけかもしれないが。つまりこの発言に本意はない。しかしそれを知らない人物を不安にさせることはできる。教卓に向けた視線をすぐさまこちらに戻す前田。
「やっぱり~?そりゃそうだよね。かっこいいし、背も高いし、頭も良いし、運動もできるしね」
前田が言っていることは事実だ。前田フィルター抜きでも同じだ。しかし、こうして考えてみると恵まれすぎてるだろ!アイツどうなってんだよ。
「この世に平等なんて存在しないな...くぅー羨ましー、それに比べて俺は背が低い」
まあ女神はこのクラスにいるけど。
「ねっ」
「あれそんなことないよ的な言葉は?」
「茜に言ってもらいな。あと身長以外の自己評価を言及しないのウザイ」
ホームルームが始まる。
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