第三章

第18話 剛田が死んだらしい

 放課後と夜活は一人でダンジョンエントリー。

 運河うんが

 レベルが当面の目標だった五に上がったので俺とのダンジョンエントリーはノーサンキューとの事。

 クラスの女子と楽しげにダンジョンエントリーしてた。

 そんな訳で俺は一人ぼっちで一階層フロアボスを周回する。

 レベル八に上がるまでは続けるつもりだ。


 そして時はあっという間に進み夜十時過ぎ。

 風呂上がりの火照った体を窓から入る風で冷ましつつ、本日の放課後以降の成果を確認する。


「やりきったぜ!」


 今日はこの一言に尽きるな。

 何せレベル十のブルーミディアムスライム五匹討伐!

 万能薬五本ゲット!

 うへへ、明日の朝、雲類鷲うるわし先輩に預けて換金してもらうんだ〜。

 一階層にしか潜れないはずの一年F組の俺がコレを提出したら大事になるからな。

 その点三年A組出席番号一番の雲類鷲先輩なら問題なし。

 これは先輩が気付いた。

 綺麗なだけじゃなく、強いだけじゃなく、出来る女だった。

 最高です!

 惚れてまうやろ~。


 レベルは八にまで上がった。

 この結果、ブルーミディアムスライムはレベルアップ状態含めて撃ち方止めとなる。

 何故ならば、レベル十に強化したのを倒してレベルアップした場合、通常のステータス上昇幅となるからだ。

 残念無念。

 次の標的を探さなきゃだ。


 さて、ここでレベル八現在のステータスを確認しておく。


氏 名:一番 一いちばん はじめ

種 族:人族

レベル:8

職 業:ノービス3

体 力:344/344(+127)

魔 力:312/312(+116)

強靭性: 39(+11)

耐久性: 43(+12) 

敏捷性: 41(+12)

巧緻性: 39(+11)

知 性: 39(+11)

精神性: 39(+11)

経験値:304(+150)

討伐数: 63

称 号:  -

DDR:  D

スキル:攻略データベース、自然治癒LV1


 おっとぉ?

 何気にDDRダンジョンダイバーランクが上がってるな。

 Dランク。

 ダンジョンダイバーとしては半人前の位置づけらしい。

 これがCランクともなると一人前扱いされるのだとか。

 とは言え、モブ・オブ・モブsの俺がDランクに至ったか。

 これはいよいよ新入生合同合宿での生存確率も爆上がりしたのではないか?


 ジョブレベルの方はというとレベル三に上がった。

 結果、ジョブスキル<自然治癒LV1>を得た。

 安静にしていると体力および傷病が回復するとの事。

 凄いね!


 そう言えばノービスのジョブレベルが上がると取得できるスキルってレベル五の<ジョブチェンジ>以外何があるんだろ?

 <攻略データベース>さん<ジョブチェンジ>の次に習得するジョブスキルと取得レベル教えて〜


--------------------

ノービスLV5の次にジョブスキルを得られるレベルとスキルは何?

 レベル10:アイテムボックスLV1

--------------------


「んな!?」


 思わず声が出ちゃったよ!

 てか、え、マジで!?

 これは<ジョブチェンジ>せずにノービスのレベルを上げ続けるべきか否か迷うな。

 最もそれは新入生合同合宿を生き残れればの話だ。

 しかし<アイテムボックス>かぁ。

 ジャパンファンタジーの醍醐味だよな。

 鉄骨や撃った弾丸を収納して相手に放つ。

 誰もが憧れたと思います。

 そういや雲類鷲先輩、俺の学ランをさっと取って何処かにしまったっぽいけど、そんな場所なかったよな?

 もしかして?

 な訳ないか。

 学園トップ層がノービスを育ててる、ないしは育ててたなんてな。


――ピピッピピッピピッ


 あ、もうこんな時間か。

 魔力操作の鍛錬しなきゃ。

 電気を消し、自然と眠り落ちるまで俺は魔力操作をイメージし続けた。

 おや? これが魔力?

 なんてな。

 いや待てよ?

 これってマジで・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・すやぁ



 四月十一日。

 転生して四日目の朝だ。

 昨晩コツを掴めた気がする魔力操作をしながら只管ひたすらブルースライムハンティング。

 ブルーミディアムスライム?

 今は要らない子です。


「ステータス上昇幅拡大特典のみを狙ったレベルアップですか。流石です一さん」


「それほどでもないですよ、黒羽くろはさん」


「いえ、ステータス上昇幅拡大特典自体は知られた情報です。ですが、実際に行い、しかも成功する者はそうそうおりません。この黒羽、その一点だけでも一さんを尊敬致します」


「黒羽さん・・・」


「一さん・・・」


 目と目が見つめ合う。

 そして互いに近付くのは万有引力の所為だと思いたい。

 刹那、


「ん! ん!」


 俺達と少し距離を置いた位置から喉を鳴らす人がいた。


「どうしました、京香さん?」


 斉藤先輩だ。

 雲類鷲先輩の身に何か有っては問題だ、と言う事で雲類鷲先輩のパーティメンバーの中から誰かひとり必ず俺達に同伴する事とした。

 その役目を本日は斉藤先輩が引き受けたのである。

 チームの斥候役だからなのか、足音を消すのが上手い。

 が、ここぞと言う時にははっきりと喉を鳴らし存在をアピールする、器用な人であった。


「一番君、ちょっと離れとこうか?」


 斉藤先輩おかんむりである。


「あ、はい」


 俺は素直に従った。


「それと、一戦闘終わる度に喉を鳴らさなきゃいけない私の身に少しはなって欲しいかな?」


「御説ごもっともです」


「それにこのままだと討伐数がちょっと少なくなりやしないかい?」


 確かに今日は昨日に比べて討伐数は少ない。

 それもこれも、ついつい雲類鷲先輩とおしゃべりしてしまうからだ。

 但し、それにも隠された理由があったりする訳だが。


「京香さん、一さんはただ私とおしゃべりしている訳ではありませんよ?」


「ん? どういう事、黒羽?」


「一さんは体内の魔力を操ろうとしています。それも実戦を意識して他の事を行いながらです」


「!?」


 俺は驚きの余り目を丸くする。

 それは斉藤先輩も同じであった。


「本当なの、一番君!?」


「ええ、驚きましたが本当です」俺は斉藤先輩に答えた後、雲類鷲先輩に顔を向けた。「どうして分かったのですか?」


「うふふ、内緒です、と申したい所ですがいずれ分かる事ですからお伝えします」


 雲類鷲先輩のしてやったり顔、眼福です。

 本当に有難うございます。


「魔力操作を続けますと、ある段階から周囲の魔力流が手に取る様に分かる様になるのです」


「凄くないですか、それ?」


 と俺が言うと、斉藤先輩が後に続いた。


「凄い何て物じゃないわ! それじゃ、相手が何をするのか分かるって事じゃない!」


「その通りです。それだけでなく、隠れた魔物モンスターや罠の有無も分かります」


「それって、私要らないじゃない・・・」


 斉藤先輩、泣きそうになる。

 なんせ斉藤先輩、パーティの斥候だからな。


「そんな事はありません。斥侯のスキル程完璧に感知出来ませんから」


 心底ホッとした表情を見せた斉藤パイセン。

 俺迄何故か安堵した。


「決めた! 私も魔力操作を覚えるわ!」


「それは良い考えだと思います」


「黒羽もそう思う?」


「ええ、パーティの斥候が魔力操作を習熟すると様々な利点がありかすから」


 へー、そうなんだ。


「例えば、どんな事があるのでしょうか?」


 と俺が問うた。


「一つ上げるとしたら、魔力を操作する事によって行える魔力通信が上げられます」


「魔力通信?」


「はい、指向性のある魔力で通話するイメージです。これによってわざわざスマホを出すことなく斥侯と本隊が逐次互いの安否を確認出来るのです」


 指向性の魔力で通話、凄いです。

 てか、テレパシーだよね?

 てことは電波じゃないから盗聴出来なくなったりするのかな?

 何にしても、


「それは凄いですね」


「はい、とっても」


 雲類鷲先輩が満面の笑みを浮かべた。

 その後、更に数匹のブルースライムを討伐した後、俺達はダンジョンアウトした。

 そのまま雲類鷲先輩のパーティハウスで朝食を摂った後、いつもの回収を経て部屋に戻る。

 ちなみに本日の回収は初の成果ゼロ。

 誰かが先に拾ったのかな?

 全然見つからないので、思わず念入りに探してしまった。

 そして、ホームルームの時間ギリギリで教室に入った。

 そんな俺を待ち受けていたのは、


「昨日の夜、剛田が死んだらしい」


 衝撃の事実だった。

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