第27話:隠忍自重
横暴の限りを尽くしてきたマスゴミに対する国民の怒り、正義感に溢れた市民による報道革命の嵐が吹き荒れている間、俺は大人しくしていた。
ここでマスゴミを叩くような事をしたら、必ず我が身に跳ね返ってくる。
何も言わずに、地道に地域に協力する事が正解だ。
そう判断したので、リョクリュウに文面を考えてもらって、国会議員や地方議会議員だけでなく、一般党員にも自重するように命じた。
僅かでも勝手な動きをしたら、除名しただけでなく、敵として叩くと通告した。
マスゴミを叩く嵐に便乗するよりも、地道に地域の手伝いをした方が、自分を支える岩盤票になるとも伝えた。
現役の議員にとって1番大切なのは、次の選挙でも勝つ事だ。
だからこそ、俺に指示に逆らって党から除名されるのが1番怖い。
指示に従って岩盤となる票田を手に入れられるなら、それが1番だ。
党員は、保健所に保護された犬猫が殺処分されないように動いた。
議会で犬猫を殺処分しないように審議させて可決に導いた。
だがそれだけでは市の税負担が増えるだけだった。
そこで、ふるさと納税に保健所で保護する動物に使う費用をもうけた。
返礼品はないが、集まったお金で動物を保護するとした。
同時に、保護した動物の映像を動画投稿して、寄付や再生をお願いする事で、少しでも税負担を減らそうとした。
こういう動物愛護活動を行っていると、党のサイトや動画に流して、支援者を増やして次の選挙で票につながるようにした。
ただ、それが単なる人気取りではないと、多くの人が知ってくれている。
単に保護するだけでなく、人と共に生きるパートナーにしている事は、加害獣被害対策の猟犬として働いてくれている事で明らかになっていた。
犬達を安全快適にどこにでも運べるように、中型自動車免許で運転できて、4基の車椅子を同時に乗せられる、17人乗りのマイクロバスを233万円で買った。
中型自動車免許を持つ党員に運転してもらい、各地に移動する。
リョクリュウの躾で大人しく椅子に座れるようになった犬達は、自分達の体格に合わせた座席で大人しくしてくれる。
厳しく命じたら、猟友会員の車にも乗ってくれるが、出来る事なら俺の目の届く所に置いておきたかった。
「佐藤先生、大分県だけでなく福岡県にも猟犬をお貸しください。
大分県が順調に被害を減らしているのに比べて、苦戦しているのです。
15億円から7億円にまで減らせてはいますが、まだまだ多いのです。
国会が召集される前にお手伝いしていただきたいのです」
福岡県選出の国会議員や県会議員に頼まれて、福岡県でも狩りを行った。
元々歓迎会で行く事になっていたから、そのついでにやるだけだ。
リョクリュウに毎夜躾けられ、毎日狩りで実践している元保護犬達はとても優秀で、鉄砲猟師の前にイノシシやシカを追い込むだけではなかった。
急激に果樹や野菜の被害を増やしているアライグマと、昔から果樹や野菜に被害を与えているタヌキを、猟師の手を借りることなく駆除していった。
リョクリュウに躾けられた犬達は、ひと咬みで加害獣を絶命させられるのだ。
猟師でも狩るのが難しい農業被害額の多い鳥、カラスやカモ、ムクドリやヒヨドリの巣を見つけては、雛や卵の段階で駆除するのだ。
福岡県で狩りをしていると、熊本県からも急いで来て欲しいと言われた。
熊本県も福岡県同様に多くの農業被害を受けていた。
ただ、他の都府県とは桁違いの被害を受けている所があった。
それは全国の鳥獣被害の36%、56億円もの被害を受けている北海道だ。
北海道には多くの猟師がいたが、高齢化により猟師の数が激減していた。
その北海道の猟友会員から助っ人を頼むメールが来たのだが、行かなかった。
事前に頼まれている九州の狩りで日程が埋まっていたからだ。
だが、俺の事を嫌っている人達は、我が党の北海道選出国会議員が比例で当選した者しかおらず、地方議員も少ないからだと騒いで叩き出した。
マスゴミやアンチが俺を叩く理由は完全な間違いではないが、偏向報道だった。
俺は大阪の選挙区から当選した国会議員で、選挙区の代表だ。
選挙区のために働くのが正しい姿なのだ。
これが大臣や副大臣、政務次官の役に就いているなら、その役目に相応しい責任もあるが、俺は無役で、党の当主を務めているだけだ。
優先順は選挙区が1番で、党務が2番で、北海道に対する責任など少しもない。
大阪の選挙区の人に、九州の事ばかりしていると叩かれるのなら分かるが、選挙区の人でもない連中に、北海道の手伝いをしないと叩かれるのはおかしい。
誰よりも先に北海道の知事や県庁が正式な依頼をしてきているのなら、狩りの手伝いを検討したかもしれないが、今回の依頼は違う。
知事でも県庁でもなく、地町村の首長でも議会でもない。
民間の猟友会の代表ですらなく、一個人がメールにコメントしただけの、依頼とも言えない物を理由にした偏向報道とアンチ運動だ。
俺が怒りに任せて動画投稿する前に、リョクリュウが成り代わって訴えてくれた。
テレビ局や新聞社や雑誌社は、名誉棄損で訴えた。
アンチ活動の個人も名誉棄損で訴えて、それぞれ億単位の賠償訴訟を起こした。
国民の付託を受けた者、選挙で当選した国民の代表を嘘偽りで侮辱したのだ。
それは地域の選挙民全員を侮辱した事になり、民主主義の根本を揺るがす大罪だと、リョクリュウが俺に成り代わって訴えた。
リョクリュウは、アンチが所属している企業が、性接待を強要した件で表にでた反社とかかわりがあり、社員を使ってアンチ活動をしている疑いがあるとも訴えた。
俺の事を信じて支援してくれている人たちが、また助けてくれた。
俺の事を叩いたマスゴミとアンチの事を徹底的に調べてくれた。
マスゴミは、社長や役員全員が逮捕されている状態で、残党が悪足掻きしていたのだが、その氏名と住所、家族の顔写真もネットにさらしてくれた。
国税局査察部の厳しい取り調べで、テレビ局は番組制作ができずに再放送を繰り返し流している状態なのに、俺を叩く報道だけは公共の電波に流した。
新聞社や雑誌社も、国税局査察部の厳しい取り調べによって日刊が隔日や週三回の発行になり、枚数も半減していたのに、俺を叩く号外だけは無理に発行した。
その恥知らずな行為が、大半の視聴者や購買者が愛想を尽かす原因となった。
それどころか、わずかに残っていた番組スポンサーと広告掲載企業を逃がす事になり、マスゴミは後に大幅な赤字を計上する事になる。
俺が訴えた連中は裁判で争おうとしたが、優秀な弁護士は誰もつかなかった。
いや、個人では誰1人弁護士を雇えなかった。
彼らの弁護についたら、税務署からの査察があるという噂が流れていたからだ。
多くの弁護士が脛に傷を持っていて、調べられると困る事があった。
脛の傷程度なら、裁判が本職の弁護士なら無罪を勝ち取る事はできるだろうが、信用が地の底にまで落ちてしまう。
弁護士の資格を失わないために、莫大な示談金や追徴税を支払うだけでなく、国選以外の仕事がなくなるのが分かっていて、依頼を受ける弁護士はいなかった。
国税局査察部は、俺の名前を使ったリョクリュウの指示通りに調べてくれた。
無視したら、賄賂を受け取って脱税を隠蔽したと、自分達が取り調べられる立場になるのが分かっているのだ。
新聞社を徹底的に取り調べた結果、販売店を脅かして拡張を押し付け、販売部数を水増しして、広告掲載企業を騙して不当な料金を取っていたと公表した。
俺に目をつけられたくない企業は、率先して新聞社を詐欺罪で訴えた。
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