第28話:地固め

 リョクリュウがマスゴミの残党やアンチを引き受けてくれていた頃、マスゴミが自滅の道を突き進んでいる頃、俺は鳥獣害対策に協力して九州各地を走り回っていた。


 各県の保健所や動物愛護センターを訪れて、飼い主が引き取りに来ない犬や、野犬の子供を引き取って周った。


 引き取った犬を表向き猟犬、実際には俺の護衛犬に育てて、加害獣を狩ると大々的に発表していた。


 我が党員と九州各県の生産者の間には、強い協力関係が生まれた。

 政権与党第一党の国会議員を押しのけて、新しい衆議院議員を当選させるのは難しくても、新しい県会議員や市町村議員の当選は可能に思われた。


 僅かに残っている野党の衆議院議員なら、追い落とせる可能性が出てきた。

 ただ、確実に当然させるには宗教政党が行っていた票割を見倣わないといけない。

 兄貴とおじさんがそう言って、地方組織の強化創設に動いた。


 野党の党員だった者を切り崩していった。

 落選する可能性が高い野党議員を、最後まで支援する人間は少ない。


 利権誘導とまでは言えない、地域の困りごとを市町村や都道府県に伝え、下水道の設置や街灯の設置などの順番をはやめるには、地域の代表が必要不可欠なのだ。


 表向きは政権与党第一党の党員を続けるが、投票だけはしてくれる人も調べ上げて地区割りして、投票者を増やした上で正確な投票数を把握しようとした。


 兄貴とおじさんが、直接票につながる活動をしてくれるので、俺は人材を探した。

 これまでのような私利私欲の候補者ではなく、有能な候補者を探す活動をした。


 時間を作って九州各地の大学や大学院にも訪問した。

 苦手な話は同行してくれる国会議員や県会議員に任せて、俺は誠実に握手をして回るだけだった。


 久留米大学大学院の比較文化研究科、心理学研究科、ビジネス研究科、医学研究科を周って、大学院生に兼業の政治家にならないか話した。


 久留米工業大学大学院のエネルギーシステム工学専攻科、電子情報システム工学専攻科、自動車システム工学専攻科を周った。


 福岡工業大学大学院の工学研究科、社会環境学研究科を周った。


 九州産業大学大学院の国際文化研究科、経済・ビジネス研究科、情報科学研究科、工学研究科、芸術研究科を周った。


 熊本学園大学大学院の商学研究科、経済学研究科、国際文化研究科、社会福祉学研究科を周った。


 福岡女子大学大学院の人文社会科学研究科、人間環境科学研究科、文学研究科、人間環境学研究科を周った。


 沖縄県を除いた、九州地方に有る全ての大学院を巡ったが、まだ若い者や親の支援がある者は、政治家と学生の兼業に興味を示さなかった。


 いずれは都道府県の知事や市町村の首長となって、研究した事を実践してみたいと言う者もいたが、今はまだ研究を優先したいという人ばかりだった。


 だが、年齢を重ねているのに正規の助手にも成れず、塾講師のアルバイトなどで生活費を稼ぎ、単発の非常勤講師をしているポスドクは違っていた。


 非常勤の研究者なら兼業が可能な市町村議会の議員となり、生活費を確保して研究が続けられるうえに、学科によったら研究内容を市町村規模で実践できるのだ。

 

 市町村規模で実践した研究内容が優秀なら、常勤の講師や准教授のなれるかもしれないのだ。


 研究時間をやりくりして、党のボランティア活動に参加すると申し出るポスドクが数多くいて、公平に仕事を割り振るのが難しいほどだった。


 大学院生やポスドクだけでなく、大学生や高校生にも政治活動をすすめた。

 以前議論していた、学生インターンシップ研修生や社会人のボランティア政策スタッフを、党や議員個人が募集すると言って回った。


 公立私立に関係なく、多くの高校が参加を表明してくれた。

 偏向した考えを持つ教師の組合は反対したが、そういう連中を嫌う若手教師が増えていたので、学校規模で生徒に政治経済教育を行うべきだという流れになっていた。


 多くの高校で、校外学習に国会や都道府県議会、市町村議会の見学が取り入れられ、政治家体験インターンシップが取り入れられる事になった。


 大学でも法学部や社会学部、農学部や教育学部が、都道府県や市町村規模の実践研究ができるかもしれないと、教授や准教授が率先して社会人のボランティア政策スタッフになり、政策立案に参加すると言ってきた。


 当然だが、教授や准教授のゼミに参加している大学生も、学生インターンシップ研修生として政策立案に参加すると言ってきた。


 国規模の大掛かりな政策は長い年月で成果を研究する事になるし、立案した政策が国会で可決されて導入できるかどうかも分からない。


 だが、市町村規模の政策ならば、首長と議会の過半数を同一の党が握っていれば、直ぐに導入する事ができる。


 政策を導入した結果も、国規模に比べたら格段に速く知ることができる。

 複数の市町村で別の政策を導入すれば、比較検討も可能だ。


 教育の研究なら、市町村内の学校ごとに違う方法を取り入れ、比較研究する事でより好い教育方法を見つけられるかもしれない。


 そういう研究者としての欲もあって、多くの教授や准教授が大学に強い要望を繰り返して、学生インターンシップ研修生の派遣と、自らが社会人のボランティア政策スタッフとして参加ができるようにした。


 普通なら偏向報道で激しい反対をするマスゴミは、自分達を守るのに必死で、何の報道も行えない状態となっていた。


 全ての罪を認めて留置所や刑務所に逃げ込んだはずの社長以下役員達は、マスゴミ嫌いの留置者や受刑者に殺されていた。

 

 まだ逮捕されていなかった社長や役員以外の管理職も、脱税や業務上の横領が明るみに出て、次々と逮捕されていた。


 逮捕されずに残っているのは、ほとんど何も知らない新人か、無能で何の権限もなかった窓際局員だけだった。


 テレビ局全体で言えば、テレビの放映権が取り上げられる事に決まっただけでなく、反社会的勢力に認定されそうな勢いだった。


 ほぼ全てのスポンサーの撤退が決まり、悪質な脱税が追徴課税される事となっただけでなく、銀行団も支援を拒否する状況だった。


 こんな状況で番組の制作ができるはずもなく、延々と再放送を垂れ流すだけとなり、会社更生法が適用されなければ倒産するしかない状況だった。


 まあ、芸能事務所を使って反社に資金提供していたテレビ局が、会社更生法を適用されるはずがないし、適用されそうになったら全力で叩き潰す!


 それは新聞社や雑誌社も同じで、莫大な赤字が決まっただけでなく、水増しした部数でもらっていた広告掲載料を返済しなければいけなかった。


 新聞社は購読契約の9割9分が解約された。

 そもそも、逮捕者が多過ぎて人的資源が枯渇し、国税局査察部の強制捜査が終わっても、日刊できない状態だった。


 雑誌社を含む出版社に至っては、書店が書籍や雑誌を置いてくれない。

 これまで電子版を取り扱ってくれていたサイトが契約を解除してきた。

 反社組織と認定されるかもしれない組織の商品を置く所など、何所にもない。


 新しい本や雑誌を出版する事で、返本されるまでに、一時的に見せかけの売り上げを計上する、出版社独特の自転車操業すらできない状態だった。


 これまでに逮捕されていなかった役員や管理職も詐欺罪で逮捕され、銀行団も新規の貸し付けをしないと宣言しているので、新聞社も雑誌社も倒産を逃れられない。


 マスゴミが何もできなくなった事で自由に動き回れた。

 我が党を中心とした、九州地方の政官財の連携が成った。

 有識者が考えた政策が次々と市町村規模で実施される事になった。

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