大文字伝子が行く278

クライングフリーマン

おんな脱獄王

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。


 斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 本郷隼人二尉・・・海自からのEITO出向だったが、EITOに就職。システム課長をしている。

 大蔵太蔵(おおくらたいぞう)・・・EITOシステム部長。


 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。EITOボーイズに参加。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 高坂(飯星)満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。


 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。

 青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。

 井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。


 橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課警部補。

 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。

 中津(西園寺)公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。


 中山ひかる・・・アナグラムが得意な大学生。高遠達の卒業した大学に入学した。愛宕の元お隣さん。EITO協力者。

 青木新一・・・Linen初めSNSを使いこなす大学生。EITO協力者。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。モールで喫茶店アテロゴを経営している。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 == EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズの後方支援部隊である。==


 午後5時。中津興信所。

 テレビのニュースで、拘置所の蔵前が、何者かの手引きによって、脱走したことが報道された。蔵前めぐみは、大文字綾子及び藤井康子誘拐の主犯であり、ピースクラッカーの『枝』だった。

 ニュースを中津達が見た後、マルチディスプレイのPCが起動し、中津警部が現れた。

「健二。皆と、秘密基地の方に来てくれ。」

 公子とあきは、表を締め、中津はEITO秘密基地の扉を開き、所員達と入って行った。

 そこは、正しく、別世界だった。

 午後5時過ぎ。EITO秘密基地。

「前より広く感じるでしょう?改造して、山の『あんこ』を広げたんです。」と、出迎えた本郷が冗談を言った。

 コンピュータ室。

 大蔵システム部長、そして、中津警部がいた。

「実は、大文字君の依頼で、蔵前の身辺調査を再調査していた。中津興信所を信頼していない訳じゃない。『枝』の蔵前が信用出来ない、という、大文字君のカンだ。大蔵さん、再生願います。」

 中津警部に促された、大蔵が2つの防犯ビデオの再生をした。

「片方は、商店街の防犯カメラ、もう一方が、蔵前のヤサの近くの防犯カメラ。1ヶ月分の映像のマッチングを試みた結果、想定していた映像を拾った。」と、大蔵が説明をした。「このマッチした人物に心辺りは?」

 大蔵の問いに、あきと公子は応えた。

「商店街で、商工会議所に出入りする蔵前の証言をした、オバサンだわ。」「そうよ、間違い無い。」

 今度は泊と高崎が答えた。「蔵前のヤサの近くで、蔵前の昔を知っている、と言った婦人です。」「うむ。右顎にホクロ、喉に火傷の痕があるのが特徴的だった。」

「健二。蔵前の前住所からも現住所からも白骨死体が発見されたんだ。年齢的に見て、現住所の方の死体は、蔵前の叔母と推測される。そして、前住所の方の死体からは、歯科医師会を通じて調査したら、蔵前のものと判断された。」

「じゃ、警部。脱走した蔵前は・・・というか、植物園で逮捕された蔵前は偽物の蔵前ってことですか?」

「そうなるね。脱走の手引きをした、拘置所の職員にビデオから抽出した写真を見せたところ、脱走の協力を依頼した人物は、その『オバサン』だと判明した。念の為に、久保田管理官がオクトパスこと山下に確認したところ、顔は知らないが、『おんな脱走王』とあだ名される女の話を聞いたことがある、と言ったそうだ。特徴は・・・。」

「右顎にホクロ、喉に火傷の痕か?兄貴。」「その通りだ。」

「偽蔵前と、ホクロのオバサンは、逃走中。通信装置を仕込んでいないから、行方は追えない。でも、何らかのアクションはある筈です。」

「明日、EITOと情報交換しよう。」

 そして、翌日。

 エマージェンシーガールズは、ピースクラッカーの投稿と導きで、『防刃服』事件を解決した。

 午後4時半。なぎさが運転するジープの中。

 コスプレ店ヒロインズから、ベビー用品ショップに寄り、帰る途中だった伝子は驚いた。

 いきなり、ジープの助手席側にタブレットがせり上がって来たからだ。

「本部からだわ。おねえさま。電源ボタンを押して下さい。」と、運転しながら、なぎさが言った。

 ディスプレイに映った、理事官は苦虫を潰した顔だった。

「昨日、合同会議の打診が、大蔵君があったんだが、防護服事件で、すっかり失念してしまった。」

 理事官は、昨日、大蔵から新事実を聞いていた内容を、かいつまんで説明した。

「分かりました。皆を招集しておいて下さい。ピースクラッカーから、まだ『連絡』がないことだし、。明日一番で会議をしましょう。愛宕の話では、トレーラーの助手席で『失禁してベソをかいていた』とういうことでしたが、大した演技力ですね。」

 午後6時半。池上病院。内科診察室。

 到着するとすぐ、池上家に行き、授乳した後、伝子は定期健診を受けた。

「やっぱり、お乳の張りが治まるまでは、なるべく戦闘は避けてね。ちゃんと皆サポートしてくれているのよね。今日は、時間もないし、お薬だけ貰って帰って。」

「はい。ありがとうございます。」

 午後7時半。伝子のマンション。

 簡単な夕食を済ませた伝子と高遠。

「今日は、家の『バトル』はいいわ。」「うん。」

 午後8時。

 珍しく、伝子が片づけ物をしていたら、高遠のスマホが鳴動した。高遠はスピーカーをオンにした。

「高遠さん、2つ。」「何、2つって。」「ピースクラッカーの投稿。宿題。あ。出題。同じかな。」

 高遠が、自分のPCを開けて、Base bookを起動すると、それはあった。

「明日。8つ半でどうかな?」と言った、ピースクラッカーはフリップを持っていたが、2行書いてあった。

 1行目:[南 医師 痴呆]

 2行目:[百舌鳥 悔やみ 来い]

 そして、何故か、2行目から1行目まで、弧を描いた矢印が書いてあった。

「ありがとう。今夜は眠れそうにないな。」

「眠れるよ。」「何で?」

「1行目の解は『耳なし芳一』、2行目の解は『小泉八雲』。」

「何で、すぐ分かったの?」「僕、小泉八雲、詰まり、ラフカディオ・ハーンのファンなんだ。それで、小泉八雲でアナグラム作ったことがあるんです。8つ半っていうのは、この前出てきた、昔の時間の表現で午後3時。記念碑のある場所は、そんなに大きくないから、富久さくら公園に来いとか立て札があるのかも。」

「予言者、だ。」期せずして、夫婦揃って言った。

 翌日。午前9時。EITO東京本部。会議室。

「順番が逆になるが、中山ひかる君は、時間と場所まで読めるようになったんだね。卒業後は、EITOに入って貰おう。」と、理事官は相好を崩した。

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 小泉八雲は本名をラフカディオ・ハーンといい、1850年にギリシャのレフカダ島で生まれたアイルランド人です。明治23年に来日して松江(島根県)で教員として務め、小泉節子と結婚。同29年に日本に帰化しました。

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 同年、東京帝国大学(東京大学)で英語・英文学を講ずることなって上京。この地に、約5年間住みました。 樹木の多い自証院一帯の風景を好んだ八雲は、あたりの開発が進んで住宅が多くなると、西大久保に転居しました。新宿区指定史跡に指定されており、記念碑は、東京八雲同人会により八雲の生誕100年を記念して建てられました。 碑面に刻まれた英文の筆跡は、イギリスの詩人エドモンド・ブランデン、日本文は市川三喜博士のものです。

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「さて、今回のアナグラムは、小泉八雲に関することだと分かったが、何故2つなんだろう。2つ目のアナグラムが解ければ、そこに誘っていることが明らかだが?」

 理事官の言葉に、大空が発言した。「理事官。私は、その矢印が気になります。」

「私の考えも同じだ、大空。私は、脱走した蔵前がリベンジ、いや、復讐戦を企んでいると思っている。中津興信所で聞き込みしていた時に出没した女は、オクトパスが指摘した『おんな脱走王』に違い無い。その女が前回の闘いに参加していたとなれば、蔵前に協力して、『闘い方の学習』の為に闘ったのかも知れない。だから、こちらは『裏をかく』必要がある。」

「おねえさま。じゃ、お母様の誘拐は陽動?」と、あつこは言った。

「おねえさま。ピースクラッカーが書いた矢印は?まさかまた・・・。」と、なぎさが言いかけた。

「そうだ。また私達を利用しようとしている。『負け戦』を容認してでも『裏切り者』を始末したいのだろう。」

「何か、策がありそうだな、大文字。聞かせて貰おうか、『奇策』を。」と、筒井は言った。

 午後3時。新宿区富久町7-30 成女学園。小泉八雲旧居跡。

 ひかるの推理通り、『富久さくら公園』に来いと書いてある『立て札』があった。

 午後3時半。富久さくら公園。

 なぎさが、防災施設案内板の前に立つと、どこから来たのか、1人の女がなぎさの首に後ろからナイフを立てようとした。

 だが、簡単に滑った。

「このユニフォームはナア、お前達が掠めようとした防刃服より丈夫に出来ているんだ。パトリシア・オング、いや、『おんな脱獄王』。」

「何?」なぎさは素早く後ろに回り、女にスープレックスホールドをかけた。

 地上、すれすれのところで、女の頭部の下にクッションが飛んで来た。

 形勢を立て直した飯星は、クッションを投げた、なぎさに礼を言った。

「お見事、副隊長。」実は、パトリシアが、なぎさと思い込んだエマージェンシーガールズが飯星、サポートしたのがなぎさだった。

 同じ頃、公衆トイレ近くに駐車した数台のトラックから降りた男達が、雨合羽を着て機関銃を持ち、佇んでいた。

 男達の侵入した出入り口の反対側に、護送車のトラックが1台来て、駐車した。

 そして、中津達は素早く、ドローンを前に置き、護送車の中に入った。

 中津達は、護送車の中からドローンを操り、トイレ前の男達にドローンが襲いかかった。男達は、雨合羽を脱ぎ、ドローンを機関銃で撃ち落とした。すると、破壊されたドローンから胡椒弾が破裂し、男達の鼻孔を刺激した。

 胡椒弾とは、藤井と高遠のアイディアを元に作られた、胡椒や調味料を捏ねて作った、EITOオリジナルの武器である。

 男達は、たまらず鼻に手をやり、機関銃を持つ手がお留守になった。

 そこへ、どこからともなく、ブーメランやシューター、弓矢が男達を襲った。

 シューターとは、うろこ形の手裏剣で、先端にしびれ薬が塗ってある。

 男達に、大きな隙が出来、現れたエマージェンシーガールズは、苦も無くバトルスティックで男達を倒して行った。

 ホバーバイク隊、即ちEITOガーディアンズは、『さすまた』で、男達を追い詰めた。

 出入り口近くの乗用車に乗った自称蔵前は、橋爪警部補に再び逮捕された。

「雨合羽、嫌がった男はいなかった?男はびしょ濡れでも、気にしないと思うけどな。今日は、私が連行してあげるよ。その代わりと言っちゃなんだが、優しい男性警察官でなく、厳しい女性警察官が尋問するけどね。ジョーディー・オングさん。」

 様子を見ていた、愛宕警部は、長波ホイッスルを吹いた。

 長波ホイッスルとは、犬笛に似た笛で、EITOでは、簡単な合図の通信機器として使っている。人間の、通常の耳では聞こえない。

「このホイッスル、ひょっとしたら、ピースクラッカーにも届いているのかもな。」と、愛宕は車の中の女ジョーディー・オングに言った。

 護送車の中の中津健二は、中津警部に報告した。

「兄貴、ボーナスくれよ。」「ああ、考えておくよ。」

 午後6時。伝子のマンション。

 高遠は、Linenで物部に報告した。

「そうか。良かった。福本にも言っとけよ。『よく出来た護送車』だった、って。」

「はい。副部長。愛宕さんも、失敗を取り返した、って喜んでいました。」

「僕にも、お礼を言って欲しいですね、エーアイ。青木君にも。まさか凶悪姉妹の会話がSNSに残っているなんて、ねえ。」と、草薙が言うと、「青木君、聞こえた?」と高遠は、同じ画面上の青木に言った。

「僕は、煎餅でいいですよ。」と、青木は照れながら言った。

 Linen会議を終らせて、高遠が振り返ると、伝子がいた。

「あなた、夕飯にする?それとも・・。」伝子は、『エプロンだけ』の格好で言った。高遠は大きなくしゃみをした。

 ―完―


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大文字伝子が行く278 クライングフリーマン @dansan01

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