第12話

 今日は師匠の師匠、レジンさんとアルマさんが一緒に森の探索に付き合ってくれる事になった!


 ケビン兄とトーマス兄も2人に会うのは久しぶりだったみたいで、宿屋で話を聞いて大喜びだよ。


 僕は孤児院にいた時、レジンさん達が大きなイノシシを持って来てくれた時に初めて会ったんだ。


 本当に大きなイノシシで、血抜きだけしたイノシシをその場で解体して、孤児院のみんなにたくさん振る舞ってくれた。あの時は流石の僕も、もう食べられない位にお腹いっぱいだったよ〜。本当に美味しかったなぁ………。


 そんな事を思い出しながら、みんなの後に続く。それにしても2人共背が高い……いいな〜。



「どうかした?ナツキちゃん?」

「あ、あの、なんでアルマさんとレジンさんはそんなに背が高いの?僕ももっと大きくなれるかな?」



 僕も上に伸びれば『ぽっちゃり』じゃなくなると思うんです。カチカチお腹の秘密は、ケビン兄に教えて貰ったから、背が伸びる秘訣を僕に教えて!



「フフフ!ナツキちゃんはもっと大きくなりたいのね?」

「はい!」

「でもそうねぇ〜。あたしもレジンもいつの間にかこんな背の高さになってたから、その方法は分らないわ。」

「そうなんだ………。」



 何か背が伸びる方法があるのかと思ってたんだけどな。でも、みんな背の高さは違うし…。


 そうだ!もしかして大人になったら背がギュンと伸びるのかも!僕は今10歳だから……ケビン兄達にみたいに、あと5年したら大きくなっているのかもしれない。さらに師匠の師匠に追い付くには、きっと僕はまだ年が足りないんだ!



「ねえ、なんでナツキちゃんは背が高くなりたいの?今でも同じ年の子よりは大きい方よ?」

「あ……その……背が高くなったら…ぽっちゃりじゃなくなるかなって思って。それにカッコいいし。」



 これでも僕は『ぽっちゃり』を気にしてるんだ。でも、やっぱりご飯は我慢出来ないから、食べない以外の方法であれば、背が高くなるじゃなくても…………いやダメだ!やっぱり背が高くなりたい!


 ケビン兄みたいに、木に登らずにアプルの実が採りたいもん!それでアプルの実を採ったら『ほらよ!』って、誰かに渡したい!



「でもさ、今のナツキのファンがある一定層に確実にいるんだよな〜。もし痩せたらきっと残念がると思うよ?」



 トーマス兄が変な事を言い出した!僕のファンなのになんでトーマス兄が知っているの?!それに『一定層』ってどこの層のこと?!意味が分らないよ!



「何それ?!僕にファンが居るなんて知らないんだけど!!それよりアルマさん!何で僕の手を握って捏ねてるの?!」

「だって〜〜〜。スベスベでモチモチしてて触り心地が良いんだもの〜。」



 レジンさん、アルマさんを止めてよ!何で笑ってるの?!ケビン兄も『分かるわ〜』じゃないの!僕は全然分らないよ!



「ほらほら、その話はまた今度にしよう。あれがお目当てのハードマカダミアの木だよ。」

「え!?……………うわぁ〜〜〜!!すごい!あんなに沢山生ってるんだ!」

「下に落ちてる実は拾えば済むけど、まだ木についてる実は落とさないと採れないね。」



 結構大きな木だなぁ…。衝撃を加えたら木の実が落ちて来ないかな?試しにやっても良いか聞いてみよう。



「トーマス兄、あの木を揺さぶってみてもいい?」

「ええ?!そんな事で落ちてくるかなぁ…。まあ、試してみなよ。」



 よし、頑張るぞ!


 先ずは、両手を添えて押してみよう。

 ………う〜ん、揺れるけどいまいちだな。それなら、相撲取りの人がやってた手で突く動作ならどうだろう?



 ドーーーン!ドーーーン!ドーーーン!!



「あっ!嘘だろ落ちてきた!おい、ナツキ!当たったらお前が怪我するぞ!止めてこっちへ来い!」

「え?………うわっ!!」



 ケビン兄にそう言われて止めたけど、上から実が落ちて来てしまった。


 咄嗟に頭を庇った。


 だけど、手や背中にゴツゴツと鈍い音を立てて木の実は当たり、そして次々と地面に落ちて行った。



「「「「ナツキ!!」」」」



 みんなが僕の方へ駆け寄ってくれた。


 …………あ〜〜ビックリしたぁ。あの木の実って落ちやすかったんだな。



「ナツキ!怪我は?!大丈夫なのか??」

「もう!ナツキの馬鹿力!本当にハードマカダミアが落ちて来るなんて思わなかったよ!」



 ケビン兄とトーマス兄に目茶苦茶心配された。でもトーマス兄は酷くない?落ちて来ないと思ってたなら教えてよ!



「うん、大丈夫。木の実は当たったけど……怪我はしてないよ。じゃあ、木の実拾う?」

「いや、何で?ちょっと僕に良く見せなさい!」



 トーマス兄かそう言って、僕の頭や手をグリグリしながら確認して、服をめくって背中も見られた。


 大丈夫だって言ったのに、トーマス兄は心配性だな〜。



「あのなナツキ。普通はあのハードマカダミアがぶつかったら『大丈夫』では済まされないんだよ。本当にどこも痛くないのか?」

「え……うん。痛くないよ。」



 レジンさんにも心配されちゃった。そうか…でも本当に大丈夫なんだよ?でも何でだろう。



「あ!」

「え?!なに?!やっぱり痛い所があったの?」



 僕はママにもらった御守の事を思い出した。

 ……もしかして、僕を守ってくれたの?


 これはおねえちゃんに言われたナイショのお話。秘密は知っている人が多いと、何処からか漏れてしまう物だって。だから信頼出来る人以外には話さない様にって。


 でも………ここに居るのは僕の大切な家族。パパやママとは違うけど、ケビン兄もトーマス兄も僕の大事なお兄さんだ。


 レジンさんとアルマさんは、まだそれほど良く知らないけど、ケビン兄達は2人を信頼してる。


 けど、シスター・エマがこう言ってた。何かを決める時は、誰かのせいにしてはいけませんって。


 決めるのも選ぶのも、全部自分の決断、自分の責任なんだよって。


 そして僕は、ケビン兄とトーマス兄にもう1つ僕の秘密を打ち明ける事を決めた。



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