第10話
「あのね、ナツキ……ちょっと言いにくいんだけど、1つお願いがあるの」
孤児院に肉を持って来たついでにご飯を作っていた僕は、シスター・エマの申し訳なさそうな様子に驚いた。
何だろう?!困った事でもあったのかな?
僕にできる事なら力になるよ!
「実はね、孤児院の子ども達が……最近ちょっと太り気味なの。何時もお肉を持って来てくれて助かってるのよ?でもね、ちょーーっと量が多いみたいでね。」
そうシスター・エマに言われて、僕は呆然となってしまった……。え?みんな、そんなにぽっちゃりして……来てるよ!!
良く見ると、ジャックなんてここに来た時の僕みたいだ!
「ど…どうしよう!シスター・エマ!僕、全然気付かなかったよ!」
「いいのよナツキ。ただ、ケビン達の様にお肉を持って来てくれるのは、月に1回程度でも大丈夫なの。普段のご飯は私達もみんなの成長を考えて作っているし、ナツキのお陰で困る事もないからね」
シスター・エマは笑顔で僕にそう言って『いつもありがとう!』とギュッと抱き締めてくれた。
ごめんなさい、シスター・エマ!!僕は孤児院に居た時『お腹へったよ…もう少し食べたいな…』って、いつも思ってたから……。
僕の感覚でご飯を食べると、みんなもぽっちゃり体型になるなんて知らなかった!
そう言えばママが『腹八分目』って言ってたのは、この事だったの?!いつも満腹よりは、八分目の方が健康には良いのよって……。
だからケビン兄達もお肉がいっぱいあるのに、孤児院へ持って来なかったの?!どうして教えてくれないのさ?!
僕はずーーっと『美味しいご飯はお腹いっぱい食べる』が正義だと思ってたのに……。
あ!もう一つ思い出した!ママが『なっちゃん、ご飯は調理方法がいっぱいあるの。だから、揚げ物の次は煮物、その次は蒸し物って方法でお野菜たちと一緒に色々食べようね!』って教えてくれてたよ!僕、忘れてた!
そうだ!調理方法も1つじゃないんだ!
きっとママも僕が困らない様に工夫してご飯の用意をしてたんだ。シスター・エマだって同じだ。子ども達の事を考えて、必要なご飯をちゃんと用意してくれてる。それを僕が邪魔しちゃったんだ……。
「………シスター・エマごめんなさい。僕、僕はいつもご飯をいっぱい食べたいなって自分が思ってたから、みんなもそうかな?って……」
「ナツキ、人はみんな身体も心も1人づつ違うわよね?どのくらいご飯を食べたいか、必要なのか、それも人それぞれなの。」
「うん。」
「実はね、ご飯って沢山食べるといっぱいお腹に入る様に膨れてしまうのよ。………ほら、マリーの勤めてる、料理店の店主さんみたいなお腹よ。」
「ええーーーーー!!!」
シスター・エマに言われ、マリー姉さんの店主さんのお腹を思い出した。誰よりも大きなあの丸いお腹を!
「ま……まさか、あの中にはご飯がいっぱい入ってるの?!」
「違うわ。でも、沢山ご飯を食べ過ぎてしまうと、身体に必要な分以上はお腹に脂肪としてくっ付いてしまうの。そうすると、あんな丸いお腹になるのよ。脂肪って言うのは……ナツキが大好きなお肉の白い部分よ。実はね、あの白い部分はお肉じゃないの。」
嘘でしょ?!僕、お肉の白い所が一番好きなんだよ?!もしかして、僕のお腹も店主さんみたいに………良かった!まだなってない!
あ……でもケビン兄やトーマス兄のお腹と僕のお腹は全然違う。
水浴びの時に見た2人のお腹は、硬そうで何か筋が入ってた。僕は…………柔らかいし、ぷよぷよしてる……触り心地は僕のお腹の方が断然良いと思うけど。
「分かったよ、シスター・エマ。僕、孤児院にお肉持って来るの少し控えるね!あ!でも、もし欲しかったら冒険者ギルドに伝言して!いつでも、直ぐに持って行くから!」
「ありがとうナツキ。それより冒険者活動の方はどう?何か困ってる事はない?」
「大丈夫だよ!ケビン兄とトーマス兄が教えてくれるから!たまに、強く殴り過ぎて討伐部位をダメにしちゃうんだけど、最近は上手に加減出来るんだ!」
「そう……あなた力が強かったものね。ケビン達が調整してくれて助かったわ。これからも2人と一緒に頑張ってね!」
ナツキは孤児院を出て、3人で泊まってる宿屋へ向かった。今日は、ケビン兄達は『大人のお店』って所へ行くって言ってたから、まだ宿屋には戻ってないだろうな。
やっぱり15歳は大人なんだ。いいな〜どこに行ってるんだろう。
今度、僕も連れて行ってくれないか頼んでみようかな〜。
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