第9話

「ナツキ!そっちは任せた!」

「はい!」



 ケビン兄とトーマス兄と同じ冒険者になった僕は、ギルドの依頼で採取や討伐に明け暮れていた。


 でもおかしいな……こんなに動いてるのに、どうして僕はぽっちゃりのままなんだろう?



「えーーー?!ナツキは本気でそれ言ってるの?そりゃ晩飯にあれだけ食べれば痩せないよ!」

「そうだなぁ。もし15歳になって酒でも飲む様になったら、増々太りそうだよな?」

「僕、絶対にお酒飲まない!!!」



 今しがた狩り終わった、フォレストディアの解体をしていたら、そんな話題になっていた。



 兄達には負けるけど、僕だって背は順調に伸びてるのにな……ちっとも痩せない。でも、ご飯を我慢するのは絶対嫌だ!



「まあしょうが無い気がするよ。ナツキの料理美味しいもん!」

「ああ!それな!俺達が孤児院を出た後にまた腕を上げたろ?」

「フフフ〜〜!実はね、マリー姉さんに調理を教えて貰ってたんだ!お店の味に近づいてるでしょ!」



 僕は、孤児院を出た後もマリー姉さんと一緒に調理をしていた。マリー姉さんは、お店が安みのたびに店の味や調理の仕方を僕に教えてくれて、そんな事もして大丈夫?ってくらい、色々と教えてくれた。


 流石に心配になって『僕に教えても平気なの?』って聞いたら『平気よ!だってナツキは自分が美味しいご飯を食べる為に調理を覚えたんでしょ?でももし、ナツキが料理店とかやり出したら私が潰すわ!』と、にこやかに返された時、僕はマリー姉さんには絶対逆らわない様にしようと誓うほどの恐怖を感じた。



 フォレストディアの解体を終え、僕は角や皮、肉の全てをバックに仕舞った。


 これは僕が日本で使っていた幼稚園用の紺色の肩掛けバックだ。今は肩掛け紐を外して、ちょっと大きなベルトポーチに偽装して使ってる。


 王宮のおねえちゃんが『絶対に手放すな』と言った意味が今なら分かる。このバックが魔法のバックだったからだ。


 幼稚園児用の小さなバックなんて、王宮の人達にとっては気にも止めない物だったんだろう。でも、王宮のおねえちゃんは僕の着替えとかお金を仕舞う時に、魔法のバックだ!って気付いたらしい。


 だから誰にも言わず、大切にする様にって教えてくれたんだ。


 でもケビン兄とトーマス兄のお世話になると決めた時、2人にも僕の秘密を一部教えた。


 2人共喜んでくれたけど、このバックの危険性も一緒に教えてくれた。いくら僕しか使えないバックだから盗んでも無駄だったとしても、そんなの知らない人には関係無いと。


 泥棒はどこに行ってもいるんだね……。あ!食べられる葉っぱだ!



「じゃあ、今日はそろそろ街へ帰るか!」

「そうだね〜。なら何時も通り、街道に出る直前で荷物を担ごう」

「分かった!」



 これだけ大きな鹿なら、また孤児院にお肉を届けられそうだ!


 みんなといっぱい食べられる様に僕が調理してあげよーーっと!

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