第5話
なっちゃんの孤児院での生活が始まってから
半年が経った。
人は慣れるもので、なっちゃんも今ではすっかり孤児院にも仲間にも馴染み、仲良く生活を送っていた。
それに日中は子供達にもそれぞれ仕事が割り当てられているので、両親を思い出す暇が少なかった。これは孤児院に来た子供にとっては、寂しさを紛らわせる一番の薬でもあるのだ。
そんな今のなっちゃんの仕事と言えば、昼間はみんなで教会にある畑の草むしりと収穫。それと夕ご飯の時の調理の手伝いだ。
調理の手伝いをする男の子は少なかったが『からあげがたべたい!』の一念でなっちゃんは頑張っていた。
だが、ある程度の調理の知識と経験を得た所で、ハッと気付いてしまった。
からあげって、鳥肉を油で揚げる以外の手順を知らなかったと。また、ここの食事では煮戻した何のお肉か分らない干し肉以外のお肉が一度も食卓に登らなかったと。
「ねえマリーおねえちゃん……とりにくって食べたことある?」
「あるわよ!とーーーーーっても美味しかったわ!でも鳥肉なんて高級品は年に一回食べられればマシよ?前に食べた時は、元孤児院にいたお兄さん達が獲って来た物をおすそ分けにって、持って来てくれたんだから!」
「そ、そうなんだ………コウキュウヒンなんだね………」
「ナツキもいつか食べられるよ!元気出しなさい!」
その話を聞いて、なっちゃんは愕然とした。ママはボクが『食べたい!』って言ったから、コウキュウヒンのお肉を使った唐揚げを良くおかずに用意してくれていた。
マリーの話でなっちゃんは途轍もない贅沢をさせて貰っていたんだ!と思い至り、久しぶりに泣いてしまった。
だって、1年に一回、お誕生日と同じ回数しか食べられないコウキュウヒンを毎週食べていたんだもの!
ボクはワガママな子どもだったんだ……。ママにごめんなさいってしたい。でもそれはもう出来ない。
そんな気持ちのなっちゃんの涙を『鳥肉食べたいからって泣くな!』とマリーは誤った解釈で叱った。
違う……違うんだよマリーおねえちゃん。
そうは思っても久しぶりの涙が止まらず、なっちゃんは泣き続け、疲れてそのままお昼寝となってしまった。
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