第4話

「はい!みんな!集まって下さいな!今日から一緒に暮らす新しいお友達を紹介しますよ!」


 シスター・エマの掛け声に子ども達が三々五々に集まって来た。中にはなっちゃんより幼い子供の手を引いて来る子もいる。


 そして子供達が集まったのを見計らい、シスター・エマが改めてなっちゃんをみんなに紹介した。



「………みんな集まったわね?はい、じゃあ紹介しますよ。こちらは『ナツキ君』です。みんなも仲良くしてあげてね!」

「「「「「はーーーーい!」」」」」



 子供達の元気な返事が返って来る。


 ここでは子供が増えたり減ったりは良くある事だから、子供達もすでに慣れっこだった。


 5歳の時に行う『能力判定』の結果、早めに仕事先に恵まれ、そのままスキルを伸ばしつつ生活を保証させるケースもあるからだ。


 それに10歳になったら独り立ちをしなければならず、自ずと子供達の入れ替わりの頻度が高くなっている。


 今も下は3歳位から小学校の高学年まで、男女色々な子供達がこの教会では暮らしていた。


 そんな中、新しくやって来たなっちゃんに、みんなも興味津々だ。



「オレ、ケビンって言うんだ!ナツキは……太ってるな!」

「え?ボク……太ってる?」

「そうだね〜太ってるよ。僕はトーマスだよ!ねえ、ナツキはどこの村から来たの?その村ご飯が美味しいの?だから太ってるの?」

「あ………ボクは……いつのまにか、つれて来られて……だから……ぐすっ………もうかえれないって…………ぅぅうわーーーーん!!」



 自分で言って改めて思い知る『もう帰れない』。もうママにもパパにも会えない……。


 そう思ったら、初めて会う人ばかりで緊張していたのも忘れて、再び涙腺が崩壊してしまったなっちゃん。


 集まった子供達は、教会に来る子の通過儀礼の様なものなので、泣く子を見ても落ち着いてる。環境に慣れるまではどうしても泣く子が多いのだ。 


 すると、幼い子供の手を引いていた女の子がなっちゃんをギュッとしてくれた。



「ほら、泣かないの!一緒に暮らせば淋しいのが少しずつ減るからね!こんなに小さいジョンだってナツキと同じだよ。帰れないけど生きてるの。我慢はしなくて良いけど、泣いてばかりはダメだよ?笑った方が楽しい事が見つかるって、シスター・エマが言ってたの。涙で目が良く見えないと、せっかくの素敵な事を見逃しちゃうんだって。」

「………えぐっ……うくっ………す、すてきなことって……なに…?」



 泣いても話を聞いていたなっちゃんは、ギュッとしてくれた女の子にそう聞いた。


 なっちゃんにとっての『素敵なこと』は、またママとパパに会うこと。それ以外の『素敵』をなっちゃんは思い付かなかったから。



「そんなの知らないわよ!ナツキの『素敵なこと』はナツキにしか見付けられないんだから!」

「ボ…ボクが……見つけるの?」

「そうよ!ちなみに私の『素敵なこと』は、ハチミツたっぷりのパンを食べることと、春に街の外の丘に行ってお花を摘むこと!それにお洋服見るのも好き!」

「ボクはマリーおねえちゃんがしゅきー!!!マリーはボクのおねえちゃん!!」



 なっちゃんをギュッとしていた女の子をマリーと呼んで、さらに小さい子がギュッとくっ付いて来た。


 ヤキモチを焼いたのか、マリーをなっちゃんから放そうと引っ張っている。


 一緒に寝てた縫いぐるみの『チョコ』にそっくりな、茶色のクリクリした髪の毛の男の子だった。だが今はマリーを取られまいと、なっちゃんをキッと睨んで威嚇している。



「………あ、ありがとうマリーおねえちゃん。ボク、さがしてみる。………ママとパパに会えないなら………おいしいご飯が好き……ママの作ってくれた……からあげ……ぐすっ………」

「もう!また泣くな食いしん坊!だったら、ママのご飯が作れる様に自分で練習しなさい!」



 マリーのその提案に、お手伝いはした事があっても、自分で作るという発想に到らなかったなっちゃんは驚いた。


 だって、まだ包丁や火を使うお手伝いはした事がなかったから。


 だが、この教会に併設された孤児院では、当たり前に子供達も調理の手伝いをしている。


 なっちゃんは、マリーのその提案に食欲を刺激され『からあげたべたい!』から、『調理をしてみたい』へと導かれて行くのであった。




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