Report02_あなたの名前は
ロイドが家を片付ける端から、彼は別の研究資料を広げ、散らかしていった。
彼の研究自体はひと段落ついているが、任された仕事の書類を適当に放置していたため、必要なものがどこにあるのか分からない。
「そもそも、今回の仕事は断ったはずだ。この忙しい時期に無理矢理押し付けてきやがって......」
ぶつぶつと文句を口にしているとロイドから小言が飛んできた。
「マスターは自分の研究をしていたんですし仕事は舞い込んでくるものを受けないと、お仕事してないじゃないですか。忙しいことはそんなに無いと思うんですけど」
もっともな言葉に対しぐうの音も出ないが、ロイドの起動に関する最終調整を行っていた期間に舞い込んできた仕事だ。忙しくないわけではない。もちろんロイドもそれは理解している。
「ロイド、何度も言っているが僕のことをマスターと呼ぶのはやめてくれ。僕は君を作ったが使役しているわけではないんだ」
彼は話題を無理矢理逸らし、手はそのまま動かした。
「だってマスターは名前を教えてくれないじゃないですか」
「僕の名前なんてどうでもいいんだよ、それに出身はこの国じゃない。話しても変な名前と足蹴にされるのが目に見えてる。それが嫌なんだ」
ロイドがため息を漏らすと、何かいいことを思いついたという顔でこちらを向き言い放った。
「じゃあお父さん!」
「却下だ」
「パパ!」
「駄目だ」
ロイドは口を尖らせる。
「いいじゃないですか別に〜現にこうして生み出して動けるようにしてくれたんだから〜。あ、じゃあ博士っていうのはどうですか!?」
「なんか年寄りくさいな、僕はまだギリギリ20代だ......却下」
少しの期間でよくここまで言うようになったなと感心しながらも、呆れてしまう。
「僕は父親でもご主人様でもなんでもないし、君も娘でも従者でもなんでもない」
「もうっ!話題を振ってきたのはマスターの方なのに!私、知りません!買い物に行ってきます!」
そう言うとロイドは立ち上がり、長い髪を翻して家を飛び出していった。ロイドの言った通り話題を振っておいて足蹴にし過ぎた気もする。彼女に嫌われるのは生活に支障が出る。なんと言って謝ろう......ボーっとした頭でそんなことを考えている内に、彼は必要な書類を見つけていた。
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