第3話 残念、その姉よ

姉【喜納紅姫視点】


授業中私は一人考え事をしていた。やっぱり今日もラブレターが入っていたわね。確認しておいてよかったわ。はぁ、何故こう弟はモテるんだろう。いや、私が一番よくわかってる。弟は顔も良いうえに成績優秀、運動神経抜群のハイスペック男子。正直嫌いになる方が難しいわ。それにしても『放課後屋上で待ってます』ねぇ。とんだ命知らずもいたものね、まあいつもの事だけど。今日も適当にあしらってあげるわ


・・・・・・・・・・・・・・・・


4時間目が終わり、私は弟の教室へ向かう


「聖志はいる?」


「姉さん?どうしたの?」


「これから昼食でしょ?一緒に学食行くわよ」


「ごめん姉さん、俺は今から美鈴とコイツと飯を食うんだ」


この男はともかく朝の女も一緒なのね。まあそんな気はしてたけど


「八目郎くんだっけ?私も一緒でもいいわよね?」


「は、はいもちろんです!」


ちょろいわね。ま、私にかかればこんなもんだわ


「聖ちゃんお待たせー、え?お姉さん?」


この女、私の聖志に色目を使うなんて、後で立場をわからせる必要があるわね。私たちは食堂に向かった


・・・・・・・・・・・・・・・


「聖志お前何にする?俺はやっぱりBランチだな」


「美鈴は弁当だし、とりあえず姉さんの分も買っておくよ、何がいい?」


「任せるわ」


「先に待ってるね」


席はここでいいかしら。さてと、この勘違い幼馴染にわからせてやりますか


「ねえ月母さん、一度はっきりさせておきたいのだけど」


「な、なんですか?」


「あなた、聖志に気があるの?」


ここでもし恥ずかしがって、好きでないとでもいうのならばそれは好都合。好きと言うのであれば、お前をこ(ry


「ええっと、その、聖ちゃんは特別な存在というか...とにかく私の大切な人なんです!好きかと聞かれればちょっと困ってしまいますけど...」


こいつお茶を濁すような発言でこの場を乗り切るつもりね。でもそうはさせないわ、ここで畳みかける


「じゃあ、好きじゃないのね。なら聖志を利用するのはやめて、それと必要以上に近づかないでくれる?」


「り、利用!?そんなつもりは....それに聖ちゃんが言うならともかく、お姉さんにそんなこと言われる筋合いはないはずです!」


意外としぶといわね。まあこの手の子は大体手遅れになって泣きを見るのが定石。放っておいても大丈夫そうね。それにしても聖志遅いわね、なにしてるのかしら


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


弟【喜納聖志視点】


「うーん、何にするかな」


俺は八目郎と同じで無難にBランチで良いが、姉さんには何を選ぶか...。俺が決めかねていると、後ろから声をかけられる


「喜納くん?」


「げっ!聖志、俺はBランチで決まりだから先行くな!」


八目郎がそう言って逃げるのも無理はない。何故なら声の主は....


「清音時先輩、お疲れ様です」


「喜納君、もしかして迷ってるの?そうね...私のおすすめは...日替わりランチかしら。今日は生姜焼きみたいね」


「じゃあそれにしようかな、ありがとうございます」


「気にしなくていいわ。それにしてもお互い朝から大変ね、こう毎日となるとさすがに疲れるわ」


朝から大変?先輩はともかく俺が?いったい何のことだ?


「ええっと、まあ先輩は学園の人気者なので仕方ないですよ」


「そうなのかしら...喜納君は私の事どう思う?」


「え?そうですね...頼れる先輩、とかですかね?」


嘘は言っていない。実際ちょくちょくお世話になってるしな


「なるほどそういう感じね....」


「じゃあ、俺は姉さんが待っているのでお先に失礼します」


やはり選ぶのが遅かったからか、姉さんは不機嫌そうに待っていた


・・・・・・・・・・・・・・・


姉【喜納紅姫視点】


さて、確か屋上だったわね。私は扉を開けて手紙の主の方へ向かう


「喜納君!?」


「残念、その姉よ」


見たことない顔ね、聖志とは違うクラスの子かしら


「お姉さん?どうしてここに?」


「まず言っておくけど、弟は来ないわ」


「え?でも朝下駄箱に確かに入れたはず....」


「これの事かしら?」


私は朝、弟の下駄箱に入っていた手紙を取り出す


「なんでそれを!?」


「別に、弟があなたみたいな変な女に引っかからないようにしてるだけよ。金輪際弟にこういうことをするのは控えなさい。そうすれば日常会話程度は許してあげる」


「そ、そんな...」


「いいわね?それじゃあ」


私は屋上を後にする。こんなことをするのも何度目かしら。そろそろこういうことはやめようと思っていたけれど、弟と恋愛できるようになったのなら話は別よね。悪く思わないでね。私は靴を履き替えて校舎を後にする。あれ?聖志?


「姉さん、何してたの?待ってたんだよ」


弟が私を待ってるなんて珍しい...え?もしかしてついに私のターン来たれり?


「今日夕飯のおかず買う約束してたでしょ。姉さんがついてくるって言ったのに、まさか忘れてないよね?」


そういえばそうだったわ。今日色々ありすぎて忘れてしまっていたわ...弟との【デート】の約束を忘れるなんて、私としたことがまだまだね。でも、ふふっ


「お昼に比べて機嫌がいいね。何かいいことでもあった?」


「別に、それにお昼も機嫌悪くなんてなかったわ」


「ふーん」


私はこの幸せな時間を守って見せる。たとえこの身を犠牲にしてでも









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