第2話 姉に凸あるマジか
「姉さんそこ俺の下駄箱なんだけど...何してるの?」
「これで全部ね...別に何も。じゃあ聖志、また後で」
姉さんはそう言うと、自分の下駄箱の方に向かう。また後で?『どういうことだ』と考えつつも、俺は靴を履き替えて美鈴と共に歩き出す
「聖ちゃん、あれ...」
「ん?どうした?」
俺は美鈴が指さす方を見る。おいおい、アイツまたしょうもないこと企んでるな...
「おい、何してんだ」
「おお、聖志か。見ての通りラブレターを下駄箱に入れようとしてんだよ」
コイツの名前は【武茶八目郎】。一応俺の一番絡みのある友達、まあ親友と言ったところだ。しかしまあ、なんだ...
「お前なあ...どう見てももう入りそうにないぞ。やめとけって」
八目郎がラブレターを入れようとしている下駄箱には、既に溢れんばかりの手紙が入っていた。というのも納得なのだが、コイツがラブレターを入れようとしているのは学園で知らない人はいない、高嶺の花と言われている【清音時東花】先輩の下駄箱で、いつも下駄箱にはラブレターがたくさん入っているのだ
「ふざけるな!俺がどんな思いでこのラブレターを書いたと思っていやがる!たかがラブレター1つ、下駄箱にねじ込んでやる!」
そう言うと、八目郎は強引にラブレターをねじ込もうとする。まあなんだ、お前の挑戦心は認めるが...正直いつも空回りしてるんだよなあ...。まあ頑張ってくれ、健闘を祈るわ、うん
「コイツは放っといて行こうぜ美鈴」
俺達は教室へと向かう。ちなみに俺は1年A組、美鈴はB組だ。そして果たして喜んでいいのか分らんが、八目郎も俺と同じクラスで、何なら俺の後ろの席だ。教室へと入った俺が席に着き、本を取り出して読み始めようとすると、そこにいかにも落ち込んだ八目郎がやってくる
「どうした、結局入らなかったのか?」
「いや...強引にねじ込もうとしてるところに清音時先輩が登校してきてな。迷惑だからやめてくれって言われたんだよ...。徹夜で書いた俺のラブレターが迷惑...」
うん、まあ案の定失敗したか。そんな気はしてたから別に驚かないけど。そう思っていると八目郎がグワッと顔を上げてスマホの画面を見せてくる
「そんなことより聖志、これ見てくれ!今日からリリースされたアプリゲームで【お姉ちゃん戦記】って名前なんだがキャラがかわいくてよ、ちなみに俺の狙いはこのSSRの...」
実質振られた後に新しいゲームの話するなんて、コイツのメンタル地味になかなか強いよな。まあそこがコイツの良いところでもあるんだが
「くっ、流石に無料分では出ないかっ...だが俺にはバイトでためた金で買ったこのハイチューンズカード1万円分がある!もちろん俺は初日から課金するぜ!」
「やめといたほうがいいんじゃないか?お前ガチャとかそういう系の運悪いし」
俺は八目郎が無茶しないように課金を制止する
「止めてくれるな、俺はやるぞ!よし、課金完了だ。10連目...まあまあ、最初はこんなもんだろ。20連目...まだ来ないかっ、ラスト30連目...いいか聖志、ガチャは運じゃない、引く意思だ!」
何言ってんだこいつは。しかしダメだこいつ、人が善意で止めてやったってのに...まあコイツの無茶は今に始まったことじゃないし、平常運転か
「ぐわぁぁ!爆死したぁ!」
「だからやめとけって言ったのに」
「他人事みてえに言いやがって!お前もやってみろよ、課金はしなくていいからよ」
「えぇ...しょうがねえなぁ」
俺は【お姉ちゃん戦記】をインストールしてチュートリアルをサクッとクリアする。ええっと、初回10連無料?まあ別にほしいキャラないけどとりま引いてみるか。ガチャボタンをタップして俺はガチャを引く。ん?何か画面が凄い光ってる...
「まあ10連はSR以上確定だからな、運が良ければSSR1枚くらい出るかもな。どれどれお前の引きは...なっ、なにぃ!?SSR5枚!?しかも全部同じヤツだと!?てかこれ、限定キャラの【キーノ・クゥキ】じゃねえか!10連で限定、しかも同じキャラ5枚...お前には負けたぜ、ははっ」
そう言いながら膝から崩れ落ちる八目郎。なんだか俺が言うのもなんだが、この世界って理不尽だな...。さて、当てたキャラの詳細でも確認するか。えーっと、『小さいころから弟のことが好きでたまらなかったが、素直になれずつい強く当たってしまうブラコン姉。このままでは弟に嫌われるんじゃないかと心配している。』ふむ、なるほどなぁ。なんだろう、このキャラの【キーノ・クゥキ】って名前...めっちゃ姉さんにそっくりなんだが...姉さんには絶対見せられんな、うん
「てかこれ5枚持ってて意味あるのか?」
「5枚あるならちょうど完凸できるな。最強のお姉ちゃんキャラができるぞ」
姉に凸あるマジか。しかも完凸とか...。姉さん、知らない所で最強キャラになってしまったよ...なんかごめん。俺はキャラを凸させてアプリを閉じた
・・・・・・・・・・・・・・・
「あーもう!全然限定キャラ出ないじゃない!他の知らない姉気取りのキャラに弟は渡さないわ!」
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