お姉ちゃんが恋愛対象(ヒロイン)だっていいじゃない

@poyupin

第1話 何気ない朝?

俺、喜納聖志には一つ上の姉がいる。名前は喜納紅姫、容姿端麗で頭脳明晰、学園で人気な生徒の一人だ。正直平凡な俺にはもったいないくらい出来た姉だと思っている。そんな姉さんだが、今はソファーの上でスマホの画面を凝視しながら何かを呟いている。俺は姉さんを横目に朝食の支度でを始める。というのも、父さんはデジタルソリューション事業の社長で、母さんはその秘書。現在二人は海外に長期出張へ行っている。海外に出張する話が出た時、母さんは俺達を残して行くのを心配し、家に残ると言っていたが、俺と姉さんが説得し、結局父さんについていくこととなった。そして現在この家には俺と姉さんだけが暮らしているというわけだ。たまには姉さんにも食事を作るのを手伝ってほしいところだが、正直姉さんは....いや、これ以上何も言うまい。俺はご飯を装い、テーブルにおかずを並べていく。今日のおかずは焼き魚に、卵焼き、ほうれんそうのお浸し、そして葱の味噌汁だ


「姉さん、朝ごはんにしよう」


俺がそう声をかけると、姉さんはソファーから立ち上がり、食事の並んだダイニングテーブルの椅子に腰掛けた


「「いただきます」」


俺はいつも通りテレビをつけ、ニュース番組を見ながら時事ネタ探りを始める


『速報です。近年きょうだい間での結婚の需要が高まっていたことを鑑み、政府が本日より新たに結婚促進法案の一環として、それを認める法律【きょうだいラブラブチュッチュ法】という法律を制定しました。これに対し世間からは....』


【きょうだいラブラブチュッチュ法】?マジで言ってるのか?ネーミングセンスどうなってるんだよ...。しかしまあ、俺達姉弟間には何の関係もない話だな。さてと、チャンネル変えて....ん?


「姉さん?どうしたの、手が止まってるよ?」


姉さんの箸は空中で停止していた


「まさか...嘘じゃなくて本当だったのね....」


「姉さん?」


「何でもないわ。ところであんたは私と結婚したいとか考えたことあるの?」


「んー、幼稚園に通ってた頃は思ったこともあったよ。でも今は全くだね」


「そう」


俺がそう答えると、姉さんの箸は再び動き始めた



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


時は遡ること6時間程前


姉【喜納紅姫視点】


「はぁ」


私は聖志が、弟が好き。一人の男の子として。しかしそれが許されない恋だということはわかっていた。最近では自分の気持ちを整理するためとはいえ、私は弟に強く当たるようになった。そうでもしなければ、この想いは抑えられない。はぁ、結婚はともかく、一生そばにいる方法はないかしら...。無駄なことだとわかっているけれど、私は神社にほぼ毎日通っては、『いつまでも弟のそばにいたい』とお願いしていた。あぁ、なんで私は聖志のお姉ちゃんなんだろう。無難に幼馴染とかクラスメイト、せめて義理の姉とかだったらチャンスはあったのに、実の姉とかノーチャンスじゃない。いっそ聖志を連れ去って海外にでも逃げる?ううん、無理無理。愛する聖志に酷いことはできないし、万が一嫌われたりなんてしたら...


『あなたの願い、確かに聞き入れました。』


誰!?


『落ち着いてください。今私はあなたの脳内に直接話しかけています。私はあなたが今までずっと訪れていた神社に祀られている神。あなたは気づいていないかもしれませんが、今日であなたが訪れたのが1000日目となります。今までいろいろな人間の願いを聞き届けてきましたが、ここまで純粋で強い想いは久しぶりです。もしあなたが本当に望むのであれば、あなたの願いを叶えることが私にはできます。あなたはどうしたいですか?』


こんなご都合主義みたいなことあるはずないわ。どうせこれは夢。起きたらいつもの日常が待ってるのよ。あ~あ、どうせ夢を見るなら、弟と結ばれることのできる世界とかが良かったわ。ふふっ私が聖志と...へへっ


『その願い、叶えましょう。朝起きたらあなたの望む世界になっているでしょう。』


その言葉と共に私の意識はだんだん遠くなっていった


で、今に至るわけなんだけど...

まさか夢じゃなかったなんて!何度も頬っぺたつねったから絶対現実よ。それに弟が別人なんじゃないかって思ったけど、弟が作ってくれたこの料理の味、間違いなく私の弟本人ね。正直、法律の名前がちょっとダサいけど別に気にしないわ。この世界なら弟と何の問題もなく恋愛ができるもの!問題はこれからどうアプローチしていくかよね。さっき聞いた感じ今のところ私にはそういう感情無いみたいだし...それに急に甘々になって性格変わったりしたら弟もびっくりするだろうし。とにかく今は様子見ね。ただ聖志は学校の人気者だし...のんびりはしてられないわね


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さてと、鍵も閉めたしあとはあいつを待つだけだな。あいついつも家出てくるの遅いんだよなぁ。『女の子は準備に時間がかかるの!』とか言ってるけど、現に姉さんは時間かからんし....


「ねぇ」


「ん?何?」


「行かないの?」


「幼馴染を待ってるんだよ。いつもみたいに姉さんは先に行ってていいのに」


「今日から一緒に通学するわ。問題ないわよね?」


「別にないけど...」


「ちなみに幼馴染って男の子よね?」


「女の子だけど...何で?」


「へぇ~、なるほどね。別に気になっただけよ」


俺は姉さんと会話しながらスマホで時計を確認する。うーんあと15分くらいと言ったところか。なんて考えてると、聞きなじみのある声がしてきた


「ごめーん!お待たせ聖ちゃん。うげっ、やっぱり!」


「おう、おはよう美鈴。今日はいつもより早いな。それになんだよやっぱりって」


「ううん、何でもないよ!行こう聖ちゃん」


そう言いながら歩きだすと、美鈴はいつも通り俺の隣を行こうとするのだが...


「あんた邪魔よ」


「ちょっ、お姉さん何するんですか!?」


「あなたにお義姉さん呼ばわりされたくないわ。何って、弟の隣を歩いているだけよ。別に姉弟ならおかしくないわ、そうよね聖志?」


「ま、まあ...」


「そんなぁ!聖ちゃん!」


済まない美鈴、こういう時弟は姉に口出しできないものなんだ...しばらく歩いていると、一人の女子生徒が声をかけてくる


「紅姫おはよ~」


どうやら俺ではなく姉さんに向けられたものらしい。姉さんは人気がある上に友達も多いのか


「おはよう咲、先に行ってていいって言ったじゃない」


「『今日は一人で行って』なんて急に言われても困るよ。ん?そのイケメンは?」


イケメン?誰だそいつ?世辞にも俺の事では...


「前にも言った私の弟よ」


うん、俺の事か。しかしこの世辞、この人かなり人当りいいな


「喜納聖志です。姉さんの友達ですか?」


「うん、いつもは一緒に通学してるんだけどねえ。しかしなるほど、朝のあのニュースと言い、つまり紅姫そういうこと?」


うん?どういうことだ?俺は姉さんに視線を向ける


「違うわ」


「ふぅーん、じゃあ私がもらおうかな」


「冗談でも許さないわよ」


怖っ、なんだあの鉄板を貫通しそうな眼は...

ツンツン


「ん?どうした美鈴?」


「聖ちゃんは私を見捨てないよね?」


お前はお前でなんだその子猫みたいな眼は。何、最近眼会話するの流行ってんの?


「見捨てるも何も幼馴染だろ、俺達」


「へへっ、そうだね。」


ギラン!っと姉さんの眼が俺達の方を向く。おい美鈴、俺の後ろに隠れるな、ずるいぞ。咲さんも同情の眼を向けてくる。一見チャラいが咲さんがこの中で一番マシかもしれない。ていうか眼で会話するの良いけど車には気を付けような!こんなやり取りをしながら、何とか無事学校に着くことができた。


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