これ、どうしたらいいんですか。助けてください
執事の反応からして、お父様にも報告はされていない可能性が浮上してきました。
確かに、もし報告されていたのでしたら、この場にいる私にそれに関した情報が教えられているでしょうし、前もって殿下やその関係者との目通しがたっているはずです。
そうなると、この状況は完全に突発的な事態。
しかし、ここでふと疑問が浮かびます。
最初からこうすることが決まっていたのなら、多少の体調不良であれば殿下の顔がある以上、出席しているはずなのですが、そうしていません。
「いや、何を言っているんだ。ローズ。君が双子なんてことは一度も聞いていないぞ。照れているのかもしてないが、この場でそんな冗談を言うのはよしてくれ」
「え?」
おっかしいですね。私たちが双子であることは結構有名なんですよ。貴族の双子なんて本当に珍しいので、伯爵家の娘であっても結構名は知られていたりするのですが。
それにこの場で婚約すると宣言するくらいなのですから、殿下が知らないわけもないはずですよね? ですが殿下の反応を見る限り、本当に知らない様子。どういうことなのでしょう。
考えれば考えるほどに疑問が浮かんできます。
しかし、悠長にいろいろと考えている余裕もないのです。できる限りこの場で事態の把握をし、対処をしなければ、今後我が家がどうなるのかはわかりません。
「あの、殿下。本当に私はローズではないのですよ」
「そんなわけないだろう」
これは本当に気づいていないのでしょうか? 私とローズお姉さまを間違えたことをなかったことにしたいから、気づいていないふりをしているだけではないですよね?
いえ、明らかに殿下の表情はごまかそうとしているものではありませんね。ガチで気づいていないやつです。
あの、これ。本当にどうすればいいのでしょうか。
相手が殿下である以上、強引にこの場から逃げ出すことはできません。いくら勘違いだったといっても、王族である殿下に手を引かれてきてしまった以上、このような場で拒絶するわけにはいかないのです。
とはいえ、このまま殿下の言うとおりにローズとして私が婚約を受け入れるわけにはいきません。
姉であるローズの意思がわからない以上、下手に受け入れるのは悪手でしかないのです。いえ、お姉さまが受け入れる姿勢だったとしても、この場で殿下の手を取るわけにもいかないのです。
ですが、立場というのは厄介なもので、この状況を切り抜ける手段を私は持っていません。下手に動くことができない以上、何方かがこの状況を打開してくださらなければ八方塞がりなのですよね。
そう思い、助けを求めるよう周囲に目を向けてみれば、夜会に参加されていた皆様の視線が冷めたものになっていました。どうやら私がローズお姉さまではないことに気づいている方が大半のようで、呆れた表情をしている王族の関係者の顔も見えます。
そして、目の前、殿下と私がいる周囲よりも少し高い場所から一番近くにいる女性。
先ほど殿下から婚約破棄を言い渡されたデリン様。デリエント・オリシュ公爵令嬢様がこちらを、見ています。
いえ、こちらを睨んでいますね。そうなるもの無理のない話ですが、もともと目力の強いお方なのでなかなか圧を感じます。
さすがにデリン様は聡明な方なので、私がローズお姉さまではないこと、私が殿下の婚約云々の話を一切知らなかったことは理解しているかと思います。
それに私は分不相応ではありますが、学友として親しくしていた期間もあるのです。だから、勘違いされているということはないと思いますが。
そんなことを考えながらデリン様を見ていると、ふと目が合ったことがわかりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます