第2話 神様、やらかす
あの森から飛び去り、しばらく飛ぶと大きな街のようなものが見えた。
「なんか街っぽいのあるぞ!あれはなんだ?」
『えっと、"タッテンダーシティー"という場所みたいですね。周辺の魔物の強さから見て、普通よりちょっと強い冒険者がいるところでしょう。今お金ってどれくらいもってますか?』
両方のポケットをいじると3枚の金貨が出てきた。縁の装飾が豪華で、真ん中には祈りを捧げる天使の絵が掘られている。懐かしい。よくこの硬貨を一二枚握りしめて駄菓子屋に行ったものだ。
『それ天界での通貨なので、ここの世界では使えないですね。このシティーには降りない方がいいでしょう』
イーデルが鼻で笑う。降りるなと言われると降りたくなる。こいつがどういう反応するか気になるので、ワッテンダーシティーとやらに急降下してやることにした。勢いをつけて空中でカーブすると物凄いスピードが出る。
『あ、ポテチなくなった。お菓子買い足しに行くのでちょっと離席しまーす』
急にイーデルの声がまったく聞こえなくなった。どうやら本当にいなくなったらしい。もう急降下してしまっているので止まることは出来ない。...急降下なんてしたのは何百年ぶりだろう。止まり方を忘れてしまった。やばい。このまま行くと建物に突っ込んでしまう。
「あああああああ!止まってくれええぇぇぇぇ!」
どうにか止まろうと、空中でクルクル回ったり、空気抵抗が大きそうな体制を取るも、健闘虚しくそのまま建物に突っ込んでしまった。木造建築だったみたいで、大きな穴が空いてしまった。
「うっ...」
また頭を打ってしまったみたいだ。気持ち悪くなってきた。
「憲兵さーーーん!早く来てー!犯罪者よ!」
「曲者だ!捕らえろー!」
「俺の店どうしてくれるんだよー!まだローン残ってるんだぞぉぉぉぉぉぉぉぉ」
野次馬が集まっているらしい。ぼーっとしてきた。人が集まる音がする。
どうやらそこで自分は気絶してしまったらしい。
▽
目が覚めるとそこは薄暗い牢獄だった。
「お”?ようやく目が覚めたか。お前、ガキのくせに空から落ちてきても死なねぇとかバケモンか?」
品の無い感じのみすぼらしいじじぃがカスれた声で鉄格子の向こう側から話しかけてきた。
「え、もしかして...やらかしちゃった感じ?」
「ガハハハ。やらかすも何も、お前は他人の店を破壊しちまったワケだからな。晴れてお前は犯罪者で投獄ってこっちゃな」
じじぃがこっちを凝視しながら言う。左目の焦点がイカれていて、黒目が小さい。首を90度に傾けている。あきらかにヤバいヤツの雰囲気が漂う。
「え”ーとりあえず、弁償が先だ。あの建物の値段、被害者の治療費、まわりへの被害、手数料その他もろもろ合わせてこの値段だな」
牢屋に越しに見せられた紙には、
「3000万ペリルの支払いを命じる。1年以内に支払え。払えないようなら、臓器を売りさばく」...そう書いてある。
「3000万...?ふぁあ.....................................................」
言葉が出ない。金額が現実的じゃなさすぎて、頭が真っ白になってしまった。
「まぁまぁ、落ち着けって。この獄中じゃ金なんて一ミリも稼げねぇだろ?だからこの国では犯罪者は国から命じられた支払いのためなら外で働いてもいーんだよ。給料は一般人の2分の1だから全然稼げねぇけどな。ガハハハ!まぁとりあえず、外出て働くなら俺が付き添いしなきゃなんねぇからよ。気が向いたらここにまた来るからそのときにどうするか決めろよな」
そういうと、クソボケカスじじぃはおぼつかない足取りでどこかに行ってしまった。
『お困りのようですね...だからあれほどシティーには降りるなと言ったのに...』
イーデルが脳内に話しかけてくる。いつもと変わらぬテンションだ。
「...」
『天界での貯金っていくら位ありましたか?そのお金を
"☆合法☆超絶女神パワー(違法)☆”で現世のお金に変えてあげましょう。その際は手数料として半分くださいね』
「いや...貯金は全部、天界の発展のために寄付してたから...ない...」
目と口から大量の汁が溢れる。もう終わりだ。折角転生してきたのに、臓器売り捌かれて死ぬんだ...
『...廃人みたいになってますよ!ほらとりあえず、あのジジイが言ってた通り働きましょう。いいですね?』
「うん...ありがとう。今まで、お前のこと、ただのイカれ駄女神かと思っていたが、いざという時は、頼りになるやつだったなんて。見直したぞ...うぅ」
感極まって泣いてしまった。ここからでもまだやり直せそうだ...
『涙拭いてください。ずっと私の事イカレ駄女神だと思っていたことは許しませんけどね』
お食事処 ぜうす。 惣菜テト @kennpou
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