第171話 浮気女の末路【ざまぁ】
――――【ブラッド目線】
「ブラッドさま……寂しいですか?」
「知れたことを……。俺はあんな女など知らん。なのでどうなろうが興味がないな」
「はい……それなら良かったです」
心の読めるユーセミリアが俺の心のなかを見透かしたように訊ねてくるが、もう前世での
ただ……。
「おにぃ!」
「おか……ブラッドさま!」
愛は俺の手を引き、エーデルワイスは何度か俺の手に触れたあと握ってきていた。三迫とは前世で同僚兼友だちみたいな関係で、付き合ってはいなかったのでなんだか気恥ずかしい。
それはエーデルワイスも同じで顔を赤くして照れているようだった。
愛はそんな俺たちの気持ちを察したのだろうか、俺に分からせられたいと興奮気味のヴァイオレットをどうどうと馬を宥めるように落ち着かせていた。
「ヴィオヴィオはこっそりおにぃがグラッドのときにヤってるから、あとあと」
「えっ? 愛さま、それは後生というものですわ」
「その変わりー、おにぃをグラッドにして、スる?」
「待ちます! ブラッドさまと決着をつけるまえにグラッドさまと愛し合うなんて、なんだかワクワクして参ります」
決着……結着の間違いではないだろうか? 俺の竿とヴァイオレットの穴が結着してしまうという……。
俺の意思を無視して、女の子同士の密約が結ばれ、俺はまな板の上の鯉となってしまった。
もうなにも出ないどころか血尿みたいに赤い物が出てくるんじゃないかと思うほど俺はみんなに求められてしまう。
「おにぃー、もっと濃いのちょうだい♡」
あ、はい……頑張ります……。
俺はこんなにも愛から愛されてたなんて、前世ではまったく気づかなかった……。
――――【クリスタ目線】
教会みたいなところに連れてこられ、私はなんか裁判に掛けられてた……。
「ちょっとどいうことなのよ! 私はただ馬鹿ジークフリートとクソ親父についていっただけなのよ! それなのに牢屋に三百年間も入れられるっておかしいでしょ! そもそも三百年なんて生きらんないわよ!」
ヴァイオレットとか言う王女だか女王だか知んないけど、私を無理やり智くんから引き剥がして裁判に掛けてきた。
「言いたいことはそれだけか? おまえが我が国の王子妃選を台無しにしてくれたおかげで、ヴァイオレットさまが方々を駆け巡り騒動を収めてくれたのが分からんとは……」
「知らないわよ! 私はただアスタルの妃になって楽な暮らしがしたかっただけなの! この国を揺るがそうなんてこれっぽっちも考えてなかったんだから! だからねえ、もうこんな茶番劇は止めちゃって、私を解放してくんない? 私は智くん……ううん、ブラッドといっしょに暮らすの」
「馬鹿なことを……。ブラッドさまはリーベンラシアの王太子にも拘らず、自らの身を投げ出しヴァイオレット陛下をお救いになった我が国の大恩人。おまえのような阿婆擦れが近寄っていい相手ではない!」
――――そうだそうだ!
――――ブラッドさまは英雄!
――――毒婦が近づくんじゃねえ!
「はあっ!? あたしが阿婆擦れ!? なに言っちゃてんの! あんただって禿じゃない! 知ってる? そういうのをモラハラって言うのよ、まったく口の聞き方に気をつけなさい」
「モラハラ? なんだそれは? おまえの醜いボテバラのことか? まったく信じられんな。そんな娼婦同然に行きずりの男の子どもを妊娠したおまえが王子妃選に参加するだけでなく、ブラッドさまにも色目を使うなど……呆れて物が言えんわ。クリスタ! おまえに判決を告げる。三百年の禁錮刑!!!」
――――こんな奴、処刑しろ!
――――災厄の魔女め!
――――フォーネリア王国を破壊しやがって!
「違うっ! 私はなにもしてないっ!」
「まだ言うか! アスタルが廃太子となったのもおまえが原因だ! おまえさえいなければ、おまえさえこの国に来なければ……おまえを生かせて欲しいとさる方の願いがあり、死罪から厳刑したことも分からない恩知らずなどもう見たくない。さっさとそいつを連れてゆけ!」
――――フォーネリア王国地底牢獄。
「ふう……ここに来るのは何十年ぶりだろうな」
「先輩は来たことがあるんですか!?」
「まあな、おれがおめえみたいに若いときに一度きりな。世間に出しちゃいけねえ、人の皮を被ったモンスターみたいな奴だったよ」
「そいつは生きてるんですか?」
「分からん」
「分からんって……」
暴れるからと眠らされて、目を覚ますと二人の男が木でできた手押し車で私を運んでいた。
「ねえ、お願い! ここで私を逃がしてくれたらなんでもするから、助けて!」
「聞くな。こいつは魔女だ、なんでも恋人を裏切った挙げ句、間男と共謀して恋人を殺そうとした奴なんだからな」
「違う、私は――――うーっ! うーっ!」
「先輩、猿ぐつわをはめておきました」
「気が利くな。そう、それでいい。こんな奴の話なんて耳を傾けるだけ無駄だ」
私の金言がいらないとか何様!?
二人に憤慨していると手押し車が止まる。牢獄と聞いていたけど、想像しているのとなにか違う。
年季の入った牢番のおじが食事についての説明をしていたが……こんなところに連れてきて、ちゃんとご飯は出るんでしょうね、みたいなことを考えながら、牢番を睨みつけると答えが帰ってくる。
「食事は自然と用意される。贅沢言わねえでそいつを食って生きろ」
思ってたことが通じたことに驚いたけど、言ってることが意味不明だ。
「これが……蟲の巣……」
若い男が足を踏み外さないように凹状になった牢獄を覗いて、顔を青くしている。
中には一体なにが……。
二人に抱き起こされ、猿ぐつわと手足を縛っていたロープが切られたときだった。
「い、いやぁぁぁぁぁーーーーっ!!!」
叫んだのも束の間、私は牢獄に落とされてしまう。
「行かないでーーーーーっ!!!」
牢獄のなかは床が見えないくらいおっきなウジ虫だらけ。身体を打つことはなかったけど、私はウジ虫に取り囲まれ……。おっきなウジ虫が私の穴という穴に入り込んでくる。
「ひぐっ!? ど、どこに入ってんのよ!!! ひっ!? イッ、イグーーーーッ!!!」
ま、まさか三百年間、イカされっぱなしになるっていうのぉぉぉーーーっ!?
―――――――――あとがき――――――――――
多分、明日でこの作品は……。いや以前のように作者ごとBANされるなんてことは……ないと思います。(有り得ない話ではないですけど……)
笑えない冗談はさておき、また明日も読んでいただけるとうれしいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます