第169話 なにもしない、なにも足さない

「じゃあ行こうか、リッチル」

「リッチー!」

「えっ!? このままなにもしないで行くの!?」


 魔神王は突然踵を返した俺の行動に驚いていた。彼女(?)のへそ下の淫紋を見ると激しく明滅し、いかにもシて欲しいとアピールしているように思えた。


 もう下半身を覆うエナメル生地からはお汁がだくだくと流れてきて、限界が近いことを思わせた。


 だが、かわいそうなのは抜けないのと同じで、TS化したとはいえ元おっさんは抱けないのだ。


 やっぱり心も身体も女の子がいい。


 それにわざわざ俺がフォーネリアの人々に酷いことをしてきた魔神王をよろこばすようなことはしたくなかった。


「魔神王、そんな貴様に朗報だ。幸い貴様を慰めてくれそうな候補はいる」

「な、なんだと!?」


 俺はその候補にすぐさまヤってみるか打診してみる。


「ジークフリート、貴様に俺からささやかなプレゼントだ。そのサキュバスは貴様にくれてやってもいい。好きにしろ」

「ホントにっ!? ブラッドがボクにプレゼントとか信じらんないなぁ。なにか裏があるんだろ?」


 まだ槍から声が出ることに違和感はあるが、いまはそんなことを言っている場合じゃない。、


「そうか、いらないなら仕方ないな。どこか預けるのに良いところはないものか? そうだ、フォーネリアの繁華街の裏に娼館があったな。名前は……」

「ブラッドが扱いに困ってるというなら、このボクが引き受けよう。感謝しなよ」


 ジークフリートは相変わらずの上から目線だが哀れな姿になってしまったことに免じて、目を瞑ることにした。


「女の子だぁぁぁ!!! ボクがたっぷりかわいがってあげるねぇぇ」

「ひっ!?」


 ジークフリートは魔神王から離れると石突きを突きつける。


 聖槍ジークフリートの石突きは真鍮のような輝きを放つ。半球にリブがついており、それこそナニみたいな形をしていて柄は真っ黒い。


「ふふふ、よくもボクを騙してこき使ってくれたね。今度はボクがキミをがばがばになるまで犯してあげるから覚悟してね」


 まるで笑っているかのようにひくひく揺れる槍。


「あまりかわいがり過ぎて壊すなよ」


 ビュッ!


 俺が諭すように聖槍ジークフリートの柄に触れると石突きから、白い粘液を吹き出した。


 キモっ!!!


 こんなヤバい武器を扱っていたことを今さらながら激しく後悔してしまう。


「槍のくせして精○出してんじゃねえっ!」


 俺が怒ってジークフリートを地面に叩きつけを踏んづけると、踏んづける度にビュッ、ビュッと白い粘液が出ていた。


 踏まれて出してしまうとかドMにも程がある。しかも男の俺に……。


「ち、違うっ!!! これは聖液だ! ボクを守ってくれる防錆液みたいなものだから」

「じゃあ、貴様に塗ってやっても文句言えないよな?」

「……それだけは絶対にやめて」


 やっぱ、それじゃねえかよ!


 塗ってやるとは言ったものの、触りたくもない。槍になってもジークフリートはとにかく残念だった……。


 傍から見ると魔神王が槍を使ってあんあん、にゃんにゃん喘ぎながら自家発してるようにしか見えない。


「二人とも達者でな~」


 俺が声を掛けても二人は行為に夢中で、気にも止めてないようだった。



 元社会人らしく、お万障クリ合わせたところで王宮へ戻ろうとしていたところに一人の女の子が両手を胸前で合わせて立っていた。まるで告白まえで緊張しているかのように……。


「ブラッドさま……」

「何しに来た。ここは貴様の出る幕ではないぞ」


 って……あれ?


 フリージアのお腹、萎んでないか?


「私の身体を気づかっていただいているのですね、ありがとうございます」

「ふん! 別に気づかってなんか、いないわ。自意識過剰もほどほどにしろ」


 気持ちとは裏腹にフリージアを罵ってしまうツンデレブラッドが実にもどかしい。とにかくフリージアの体調の変化が心配でならないが、彼女はさらに俺の心配が加速するようなことを宣う。


「悲しいことが判明しました……」


 もしかして、フリージアは流産してしまったとか!?


 どうしよう、どうしよう……。


 なんて慰めてあげれば……。


 ただ口のすこぶる悪いブラッドだ。傷心のフリージアをモラハラで傷つけてしまうと思うと言葉が出ない。


「ブラッドさま……私……私……ブラッドさまとの赤ちゃんが……赤ちゃんが……ううっ、ううっ」


 フリージアは俺の胸に飛び込んできて号泣していた。


 銀色の髪を撫で、必死にあやそうとしていると急に彼女が顔を上げる。


 いつ見てもフリージアの瞳は綺麗だ……。


「想像妊娠だったんです……」

「は?」


 いやもう臨月ってくらいに大きかったのに?


「おそらくはブラッドさまに愛され足りなかったんだと思います」


 うそ……だろ……。


 リーベンラシアにいたときはフリージアから毎晩十回戦は求められ、フリージアから俺のホットミルクがだだ漏れになっていたというのに……。


「今度こそ、ブラッドさまの赤ちゃんを身ごもりますので、どうか私をお捨てにならないでください……」


 捨てても戻ってくるでしょ、あなたは……。


「もしこちらにご不満ということでしたら、こちらをお使いください。初めてですがブラッドさまのために私、頑張ります」


 俺にかわいい桃みたいなおしりを向けて、ふりふりするふりふりフリージア。


 健気すぎる! って止めなさい、おしりでスるとか……。


「痴れ者が! しりでは妊娠できぬではないか!」

「しり者ですか? はい、ブラッドさまが私を愛してくださるなら、どちらでも構いません。二人で新たなる道を切り開きませんか?」


 新たなるってねえ……アナルなる道しかできないと思うよ、フリージア……。


「それとも私がブラッドさまのおしりの穴をお舐めした方が……」

「止めろ! 貴様はこれ以上なにも喋るな! 俺が変な趣味を持っていると勘違いされてしまうではないか!」


「なるほど! 上の口は閉じ、下の口を開けろということですね。私は常にブラッドさまに発情しておりますので、いつでもお越しくださいまし」


 俺はフリージアに押し倒され、馬乗りになられてしまっていた。


「はあ、はあ、久しぶりにブラッドさまに愛されると思うと涙がこんなに溢れてきております」


 フリージアがスカートを託しあげると本来あるべき物……そう、フリージアはおパンティを履いていなかった……。


 最初から彼女は――――。


「俺の身体が目的だったんだな!」

「はい。ブラッドさまのことをどれほど待ち望んだことか……」


 俺の身体は生理現象を押さえ切れずに、清楚の顔して淫靡なことをしてくるフリージアに漏れなく反応してしまう。


「言い忘れておりましたが、リッチルさんにお願いして、精力剤を仕込んでおりました。たっぷりお楽しみできそうですね♡♡♡」


―――――――――あとがき――――――――――

次回にまとめられたら次回で完結です。難しそうなら延びます。

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