第166話 肉体言語

 今ごろ、あのデカブツは俺のドロップキックにより第三宇宙速度を越え地球圏を脱して、カースは考えるのをやめた、となってるかもしれない。


 あれはカーだったか……。


 カースドラゴンを宇宙漂流刑に処した俺。五点着地を使わずとも衝撃を吸収できるようになった俺は片膝と右拳を着いて、大地へと舞い降りる。


「うほっ!? いい身体ですねぇ」


 ぞわぞわした悪寒が全身に走る。クソ神父が俺の身体を見て、祭服キャソックのボタンを外し頬に手を当てうっとりしていたからだ。ちなみに俺の服はカースドラゴンを宙に上げる人間マスドライバーの途中で燃え尽きた。


 やる気まんまん、下半身ぱんぱんな姿を見て、俺の力が抜けてしまう。


 決して人に見せびらかすために鍛えたわけではない俺にとって、クソ神父から熱い視線で視姦されるのは吐き気がするほど、きしょい……。


 カースドラゴンと戦闘に入るまえに、ちょうど良い草むらと窪みを見つけたので俺の秘密兵器隠しておいた場所に素早く身体を移す。


 窪みで吐き気を解消させるが上の口から出しても、お花を摘むという表現で正しいんだろうか? などと頭を過る。


「ははは! やはりあなたは面白い。あんなやり方で私の使い魔の一つカースドラゴンを倒してしまうとは……。ますますあなたを私の恋人にしたくなりましたよ」


 俺を見る目がハートマークだよ……。


「生憎と俺は男と寝る趣味はない。俺の趣味は女をよろこばせることなんでな。掘るのも掘られるのもごめんだ」


「残念です、実に残念。あなたでしょう? グラッドという、あの少年は」

「そうだったらなんだと言うんだ?」


「あのように幼いにも拘らず生意気で……それだけに止まることなく気品にも満ちた容姿。控え目に言って最高です。私の手で分からせ、調教してゆきたくなりました。どうやって変身したのかは分かりませんが……」


 蛇のようにペロペロと舌舐めずりして、俺を見てくる。クソ神父には俺がグラッドだってことがバレてしまっていた。


 だからといって、どうということもないが……。


「決めました! 私はあなたを屈服させ、この手中に収めると」

「勝手に決めるな。俺もグラッドも貴様の恋人になるわけないだろ」


「では仕方ありませんね。これだけ私が優しく諭しても無理なようでしたら、本気を出すしかありません」


「貴様は裏で暗躍し、作戦がしくじればこそこそとネズミのように逃げ回るだけしか能がないクソだろ? 今さら本気出してどうなる」


「あなたはご存じでないかもしれませんが、私、いまはこんな恰好をしておりますが、かつては世界を手中に収めかけた魔神王と呼ばれておりました」


 クソ神父はボタンを腰の辺りまで外すと上半身裸になろうと袖を抜き始めていた。


「いちいち脱ぐんじゃねえよ!」


 俺は脱ぎ脱ぎしている途中のクソ神父改め魔神王に向かって、ドロップキックをぶちかました。だが俺のドロップキックは弾かれる。魔神王の肘の辺りに魔法陣が現れ、俺の物理攻撃を防いだみたいだ。


 防がれはしたが、魔法陣はガラスが砕けるように破片となって地面に落ち、しばらくすると霧散する。


「驚いた! 私の【絶対障壁イージス】を破る者がいたなんて!」


 いまいち信用のならない魔神王だったので、俺は構わず二撃目を入れようと踏み込もうとすると……。


「あなたの力に免じて私は魔力を使いません。あなたと肉体を通して語り合いたいのです!」

「俺は語り合いたくない。帰れ」

「帰りません! あなたが私と戦わないというなら、私はこの世界を滅ぼします」


 舐めプもいいところだ。


 だけど、いや、こいつ……なんかヤンデレみたいになってね?


 BLのヤンデレ……。


 また俺はお花を摘みたくなってきた……。


―――――――――あとがき――――――――――

作者もお花摘みたいのを我慢して書いております!

(早くトイレ行けよ)

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