第164話 分からせ予約
ヴァイオレットたちと今後のことについて話しているとまるで日食が起こったかのように周囲が暗くなる。
「いったいなにが……」
大臣がヴァイオレットに一礼するとすぐにバルコニーへ向かう。他の者も彼に追従した。一斉に外の様子を窺いに出た俺たちだったが、頭上に広がる光景に目を疑った。
すべて漆黒の鱗に覆われてしまっていたから……。
――――うわぁぁぁっ!!!
一人の衛兵が叫び声を上げたかと思うと、阿鼻叫喚の声はバルコニーに出た者たちに次々と広がる。
――――ガーゴイルだっ!!!
――――か、顔にぃぃぃっ!?
――――ぐ、ぐるじぃ……。
コウモリのように舞い降りてきた無数のガーゴイルたちが衛兵たちを襲っていた。ガーゴイルたちの大きさはそれこそコウモリより僅かに大きいくらい。
普段なら気にも留めない雑魚……だったが小型のガーゴイルが衛兵の顔に張り付き、口と鼻を塞ぐ。まさに息の根を止めにきていた。
バルコニーに出ていた衛兵たちの顔にはびっしり無数のガーゴイルが張り付き、ひとりまたひとりと締め技で落とされたように彼らは膝をついて倒れてゆく。
俺はというと顔の前に手をやり、車を運転中ゲリラ豪雨に遭遇してしまったかのように前腕をワイパーに見立て、素早く動かした。
俺の周りは光に照らされ寄ってきた虫が潰れるようにしてガーゴイルの死骸が積もってゆくが、なにせ数が多く一向に減る気配がない。
さらに悪いことに窓から侵入してきたガーゴイルは王座の間でもバルコニーと同じように臣下たちの顔に張り付いて、次々と息の根を止めに掛かっていた。
――――ガーゴイルが姫さまのところにっ!
――――全力で止めっ、うぐっ!?
毛様体筋を緩めながら周囲を窺う。この微細な筋肉を緩めることによりレンズの役目を担う水晶体が広がり遠くが見渡せていた。
またクソ神父の仕業か……。
遠く見えるあの丘にクソ神父が立ち、奴は俺たちの混乱をほくそ笑んで見ていた。
いまさらながら俺は自らの欠点に気づく。
俺が屠って……いやあんまり死んでないか……。倒してきた相手は単体がほとんど。野戦ならいざ知らず、相手は空中かつ対多……これほど分の悪い相手もいない。
俺だけなら対処可能だがこの場にいる全員を守りながら、ガーゴイルどもを排除するなんて不可能……。
だと思えたときだった。
「【
透明な羽根をつけ妖精のようなコスプレをした愛が
「
ヴァイオレットの下に寄っていたエーデルワイスの手のひらから眩い光が放たれたかと思うとヴァイオレットの周囲にガラスのように透明な壁ができていた。
襲い掛かっていたガーゴイルたちは勢いよく障壁にぶつかり、また地面へ落ちる。落ちたガーゴイルは小刻みに身体を震わせており、どうやら気絶してしまったらしい。
ユーセミリアが目に見えぬ速さの斬撃で衛兵たち顔に張り付いていたガーゴイルを払うと壁のなかにいたフリージアが魔法を唱えた。
「【
息ができず気絶していた衛兵たちはフリージアにより回復、「皆さん、早く壁のなかへ!」とヴァイオレットの命令を聞き、危機を脱していた。
魔王と呼ばれた俺だけど聖なる加護を受けた障壁内にいても大丈夫だから、大丈夫なんだよね?
ちょっと不安に駆られて思わず濃墨構文がでた。
ヴァイオレットは俺の手を取り、願い出る。
「ブラッド……ここは私たちに任せて、本体を」
「だがそれでは……」
「ここではむしろブラッドの本領を発揮できないばかりか、あなたは足手まといになってしまいます」
「ククク……ずいぶんな物言いではないか。だが嫌いではないぞ。俺が帰ってきたら全員死んでたなんて笑えぬ喜劇を見せることのないよう精々頑張ることだな」
「もちろんです。あなたとの夜の決着はまだついてないのですから」
「貴様の子宮の奥にまで俺の子種が結着するまで突いてやるから覚悟しておけ!」
「あなたが先にイク顔を楽しみにしております」
「雑魚のくせに口だけは気丈な。まあいい、あとでたっぷり分からせてやる」
ブラッドのせいで無事戻ってきたら、ヴァイオレットとまたベッドを共にしないといけなくなったじゃないか!
ヴァイオレットに貴様は弱いから鍛えろ、とか言ってしまったため、体力のついた彼女とは一戦一戦激しいものが予想されてしまう……。あんなこと言わなきゃ良かったかも。
そうだ!
俺にいい考えがある!
人型に変型するトレーラーの司令官が言うようなセリフが俺の脳裏に去来していた。
―――――――――あとがき――――――――――
作者、ムラサメ改だけ確保したんですが、やっぱり復讐のレクイエムを見たら、あのクセツヨなガンダムとザクが欲しくなるんでしょうね。ネトフリだけというのがなんとももどかしい……。
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