第161話 なぜか婚約話が進んでしまう
「ヴァイオレットさまっ! いままでの非礼の数々、重ね重ねお詫び申し上げます」
ヴァイオレットの下に集結し、フォーネリア王国の臣下たちが跪いて頭を下げていた。ずらりと王宮庭園に居並ぶ臣下たちの多さに舌を巻く。さながら戴冠式を想わせる壮観ぶりぶりだ。
「皆さま、どうされたのですか!?」
臣下たちの突然の行動にヴァイオレットは目を見開き動揺の色を見せる。
俺は、アスタルからヴァイオレットに鞍替えする臣下もいるだろうなぁ、とある程度予想をしていたものの、フォーネリア王宮に残った臣下のほぼ全員が彼女の下に集結したため、ちょっと驚いていた。
ヴァイオレットが臣下たちに面を上げるように伝えると臣下筆頭みたいな男性が代表して彼女に想いを伝える。
「ヴァイオレットさまがご聖断を下され、アスタルさまを誑かすフランドル大司教を討つとの詔を出されたときには、ついにこの日が来たかと胸が躍りました」
臣下筆頭の言葉に深く頷いたヴァイオレット。
「ヴァイオレットちゃん、よく我慢したね」
「ありがとうございます、愛さま」
ぽむぽむと愛がヴァイオレットの肩を優しく触れていた。時と場合によっては一国の王女に馴れ馴れしい態度で不敬と取られかねないが、フォーネリア王国の臣下たちは微笑ましい光景と捉え、誰からも異論を唱える者はいなかった。
愛の持つ人徳が為せる技なのだろうか?
明らかに敵意を持つ人間以外なら誰とでも仲良くなれる愛のコミュ力お化けぶりが羨ましくなる。
愛に比べれば俺がやったことなど、些細なことだ。
「以前からお兄さまには黒い噂がつきまとっておりました。フランドル大司教とただならぬ仲にあると……」
ヴァイオレットから伝え聞き、愛から確証が取れたことで、ヴァイオレットの侍従の助力を得て、作戦を決行したのだ。
俺はアスタルから妃候補筆頭のフリージアを奪還したが、流布した噂にはアスタルがフリージアを放逐したとつけ加えておいた。
愛の話だと……、
「あすたんは男の子が好きなわけじゃないんだけどー、フランおじの力が欲しくて仕方なく寝ちゃったって感じ」
ということらしい。
寝ちゃった……って、おい。
クソ神父は見た目はまあイケオジに入る部類だが、二人が抱き合っている光景とか想像するだけで吐き気と頭痛、そして無性におしりを手で押さえたくなる衝動に駆られてしまった。
乙女ゲーなのだから、せめてプラトニックなモノで勘弁してもらいたかった。
「おにぃ、大丈夫?」
「済まん、愛。身体を鍛えようとも、かなりの精神的ダメージだ……。貴様がいなければ俺のSAN値は尽きていたことだろう」
無類の女好きであるブラッドだけに男と寝るなど考えられないのだろう、俺はブラッドという器からも影響を受けていた。
ゲーム内ではクソ神父に脅され、泣く泣く関係を持った悲劇の王子として扱われるのだけど……。
「ククク……アスタルが子を成すことが絶望的だと悟り、ヴァイオレットに鞍替えしたか」
「「「「ぐぬぬ……」」」」
なんつうことを言うんだよ!
歯に衣着せぬ物言いをするブラッドに慌てるが……。
「安心しろ! 俺がヴァイオレットの面倒を見てやる。フォーネリア王国の繁栄は決定的となったのだ!!!」
面倒を見るって、そういうことじゃないよね、違うよね……。俺の心配をよそに臣下たちの視線がフリージアに注がれる。
「ヴァイオレットさまが魔王ブラッドさまの子を宿す……」
大臣と思しき身形の一際良い男性がぼそりと呟くと他の臣下たちがごくりと息を飲んだことが分かった。
世界の破滅だとか、王女が俺に孕ませられたとか、碌でもないことを言われるんじゃないかと思うとこの場からすぐにでも逃げ出したくなる。
「ヴァイオレットさまの聡明さとブラッドさまの筋力を持つお子が産まれれば、フォーネリア王国の隆興間違いなし!」
――――素晴らしい!
――――すぐに婚約を!
――――元気な子が産まれますように!
おまえら、どんだけ気が早いんだよっ!!!
俺はヴァイオレットを保護もしくは援助しようと思っていただけなのに……。
とても面倒なことになった……。
「ヴァイオレットっ!」
俺を嫌うヴァイオレットならこんな馬鹿げたことを反対してくれるはずだ。俺は彼女を見たが……。
―――――――――あとがき――――――――――
マジか……ファントム来たよ! うれしい、とてもうれしい。ひらがなたくさん、こなみかんあふれるかんそうでごめんねw
ファントム、頭はあれなんだけど声はイケボ過ぎて惚れそう。
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