第154話 クズ王子とクズ元カノ

「ソンタックはなぁ、俺を傷つけたと深い悲しみにくれてたんだよ。分かるか、この気持ち……」


 ジークフリートにやるせない気持ちをぶつける。


 パワハラばかりしてる俺なのでソンタックは俺のことを恨んでいるかもしれないと思い、日頃の鬱憤晴らしになるかも、とか思ったのがそもそもの間違いだった。


 むしろソンタックにとって俺を傷つけろ、と命じたことの方がよほどパワハラだったらしい。


 もちろんソンタック以外の手練れを探したが、俺の陣営には彼しかいなかった。何故ならソンタックはリーベンラシア唯一の大剣聖ソードマスターだったから。


 結果的にジークフリートの【魔神殺しの槍ロンギヌス】を完封できて良かったものの、オモネールたちの落ち込みぷりを見ると心が痛かった。


「ジークフリート……俺はな、貴様の【魔神殺しの槍】を食らうよりも、オモネールたちに無茶ぶりしたことの方が痛く辛かった」


「そ、そんなっ!!! あれはボクが心血を注いで会得したスキルだっていうのに……許さない! 許さない!」


 ジークフリート、おまえ……ちゃんと俺の言ったこと聞いてないだろ。


「心血を注いだのはおまえだけじゃない。たくさん注いだんだぞ!」


 オモネールたちが、だけど……。


 俺とジークフリートが不毛過ぎる言い争いをしていると谷底からそりのそりとモンスターが姿を現した。


「ひっ!? 化け物っ!!!」

「失礼ね! 誰が化け物よ! それよりもジークフリートぉぉぉーー!!! よくも私を裏切ってくれたわねぇぇぇ!!!」


 ゲロ塗れのクリスタがジークフリートに恨み節をぶつける。


「散々、私をこき使い利用した挙げ句、用済みになったら捨てるとか、控え目に言わなくてもふざけてるでしょ!」

「クリスタなのかっ!?」


「そうよ! 神父さまに巣穴に突き落とされたと思ったら、あのデカいモンスターに食べられそうになって、この様よっ!」


 ジークフリートは親指の爪を噛み、クリスタには聞こえないくらいの小声で独り言ちていた。


「フランドル神父め、しくじったのか……」


 耳介の筋肉操作により集音性に優れた俺の耳はそんなジークフリートの小声すら正確に拾う。


 クリスタはジークフリートの言葉が聞き取れなかったのか、怒り心頭でいまにも掴みかかりそうな勢いで奴に詰め寄る。


「この責任はジークフリートが取ってよね! とりあえず慰謝料として、百万ゴールドは欲しいわ」

「はあっ!? そんな大金、ボクが持ってるわけないだろ! ふざけるのもそのラクーンたぬき顔だけにしておいて欲しいな」


「誰がラクーン顔なのよ! ちょっと垂れ目なだけでしょ! 前世でも垂れ目だったけどね、前世の彼も浮気相手もこの垂れ目がかわいいって言ってくれたから! ジークこそ、目に隈を作ったストーカー顔じゃない。好きな女の子をストーキングばかりして、キモいったりゃありゃしない。だからあんたには彼女ができないのよ!」


 クリスタはなんか和葉みたいなことを言ってるな。もちろんクリスタは西洋人顔で和葉とは似ても似つかないが……。


 言われてみれば確かに垂れ目に関して共通点があるように思えてきた。一之瀬や三迫が転生しているくらいだ、もしかしたら和葉がいてもおかしくはない。


「うるさいっ! おまえみたいな女にボクが謝るとでも思ってるのか!」

「土下座して謝ったら、ヤラしてあげてもいいんだけどぉ?」


 いくら童貞でもジークフリートにもプライドがある。


「なんだと!? ふざけるなっ! ボクがおまえなんかに屈するわけがないっ」


 言葉は声高にクリスタの提案を突っぱねていたが、ジークフリートの身体はその真逆でクリスタに土下座していた。


「あははは、なにそれ?」

「これは身体が勝手にやっていることだ。ボクの意思じゃない」


「ヤリたいの? 溜まってるんじゃないの? ほらほらクリスタさま、どうかボクの粗チンを筆おろしてください、って言ってみなよ~」

「ぐぬぬ……」


 俺は正直アホくさくなり、ヴァイオレットを伴い現場を離れようとしていた。


 だが……。


「ヴァイオレット、ここに居ても仕方……ない……。ヴァイオレット!?」


 ついさっきまでそばにいたヴァイオレットの姿が忽然と消えていた。


 いったいどこに!?


―――――――――あとがき――――――――――

んほ~! プラモ作りたい禁断症状が出てくるんですが本作の完結と改稿が終わるまで我慢です。しかも積みプラがソフェエラとプニモフという罪な美プラ……。

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