第152話 姫騎士曇らせ

「なにをしている」

「魔王ブラッド! これは勝負です! 私をイカせることができたなら、あなたの勝ち……私をメイドなり牝奴隷にするなり好きにすれば良いのです」


 スゴい絵面だ……。


 上半身と足周りは甲冑という出で立ちの姫騎士ヴァイレットが顔を真っ赤にしてスカートを捲り、赤ちゃんが出てくるところを広げて俺を誘うように見せてきている。


「そもそも、なぜ勝負しないといけないのだ?」

「怖いのですか? 逃げるのですか? それでも魔王と呼ばれた男なのですか? 拍子抜けです」

「貴様……俺に抱かれたいだけだろ」


「なっ!? だ、誰があなたに抱かれたいなどと思うのですか! 私はただ……か弱き乙女があなたに騙されないようこの身をもってして、あなたが大した男ではないと世に晒してやろうと思っただけです」


「俺は自ら魔王と名乗ったことはない。周りが勝手に言っていることだ。勝負は貴様の勝ちでいい」

「そんなに私に負けるのが怖いのですか!」


 怖いね!


 自意識過剰と思われてしまうかもしれないが、ヴァイレットまでフリージアたちみたいに毎晩俺のご子息を求めて搾精に精を出されるようなことになったら困る。


「俺のことを悪く言いたいのならいくらでも言え。

それに俺は嫌がる女を無理やり抱く趣味はないんでな」


 上着を脱ぎ、ヴァイレットのまえを覆い隠すと上着の両袖を使い、縛った。


「巣穴へ帰れ、デカブツ」


 気絶して転がっていたデバインドラゴンをひょいと担ぎ上げ、巣穴へと投げ込んだ。なにか忘れているよえな気がしたけど……。


「殺す気かぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!」


 ああ……。


 叫び声がしたことでようやく思い出した。まだ巣穴のなかにクリスタがいたんだった。とりあえずクリスタが無事って分かったので、ヴァイレットの方を向くと……。


「なんで……なんでそんな優しいのに意地悪するんですかっ! 私の処女を騙し討ちのようにして奪ったくせに……」


 ヴァイレットはまぶたいっぱいに大粒の涙を溜めて、いつ涙腺が決壊してもおかしくない状況だった。


「安心しろ、その責は負う。貴様をフォーネリア王国から逃がし、リーベラシアの王宮を出る俺の代わりに賓客として招くよう父上に進言してやる。フォーネリアと同じ暮らしとはいかないが衣食住に不自由することはないだろう」


「私はそういうことを責めているのではありませんっ! ただ……」

「ただ……?」


 口ごもったヴァイレットに訊ねようとしたときだった。


 ヴァイレットに向かって無数の槍が飛んできており、俺は彼女の盾として矢面に立つ。


 投げ槍の数は二十程度。


 十分に払い落とせると思い、手刀で落としていた。


 しかし……。


 背中から熱さを感じた。その熱さは腹にまで達する。


 あ……。


 しまったと思ったときには遅かった。


 熱さを感じた箇所はどんどん増えてゆく。


「ははははは! かつてこの世界の理を変えようとした魔神すら倒したスキルだよ! いくらブラッドが馬鹿げた力に鋼の肉体を持っていようともボクの魔神殺しの槍ロンギヌスに貫けない物はないっ!」


 熱さの原因は俺の身体を貫通していた無数の槍。しかもジークフリートの仕業に間違いなく、奴が馬鹿じゃないかと思うほど高笑いしていた。


「ブラッド!」

「離れていろ! それに俺は憎い相手だろ。さっさとリリエル、いやリリーの下に走れ!」


 ヴァイレットは幼児のようにいやいやと首を振り、この場を離れようとしない。


「勝手にしろ、一緒に殺されても俺を恨むなよ」


 今度はこくこくと素直に首を縦に振るヴァイレットがいた。


 ああ……確かにポンコツのジークフリートにしては上出来だ。まんまと罠にはまってしまったな……。


 ただ見た目が針千本っぽくツンツンしていて邪魔で仕方ないが身体は問題なく動く。ヴァイレットにまた岩場の陰で見ているよう伝えると彼女は祈り手にして俺を見ている。


「はははは! でるよ、でる! ボクの最強のスキル【七孔噴血】、七本の槍が抜けたとき、ブラッド……おまえは全身の血を抜かれ、死に絶えるんだ。まあフリージアとリリーはボクに任せなよ。きちんとおまえのことなんか忘れるよう上書きしてあげるから」


「それは助かるな……あの二人の性欲には少々参っていたところだ。俺のことが好きすぎて毎晩中出ししてやらないと絶対に俺の下を離れないんだからな」


「くっ! この期に及んで負け惜しみを! いくぞ、いくぞっ! 【七孔噴血】」


 ジークフリートはイクときもこんな感じなんだろうか? 性技云々を置いておいて、普通にキモくてフリージアたちの心が離れないか心配になってくる。


 俺がジークフリートを心配している間にも俺の身体を穿っていた槍が抜けていた。


 だが……。


「なぜだ!? なぜブラッドから血が出ない!?」

「ククク……今ごろ気づいたか。俺の身体と貴様の早漏粗チンと一緒するな。夜な夜な全裸でマスクとマントを被り、メイドどもに興奮した牡を見せつけるもふにゃチン扱いされて逆に笑われる貴様とはなあ!」


「ボクはふにゃチンじゃないっ!」

「それにこんなチンケな槍に殺された魔神など、恥ずかしくて魔神という大仰な名を名乗っていたことを後悔していることだろう。はっきり言って俺から言わせれば筋トレが不足している!」


 俺が負った貫通創から血が出なかった理由……。


 防漏タンクという物をご存じだろうか?


 簡単に言うとガソリンなどの燃料が漏れないようにしたタンクのことである。市販車に使われることは滅多に無いが軍事用途なら別だ。


 俺はこれを筋肉を鍛え体内で出血を押さえる方法として活用していた。


 その過程でオモネールたちには苦労をかけたが……。


「貴様の攻撃はこれくらいか? ないならずっと俺のターンだが相違あるなら今のうちに言っておけよ。かわいそうな女の子を出汁に使ったことは許されないからなぁ!!!」

「ひっ!?」


 ジークフリートの顔は俺に恐怖したときと同じように歪んでいた。


―――――――――あとがき――――――――――

キース、紫豚はゲルググで! ということでクリ豚はドラゴンの下敷きになった方が良かったかなぁ? と思ってますが、それだとざまぁが終わっちゃうんで……。

それはともかく完結したら1、2週間お休み致します。休むんですが「性欲処理メイド」の改稿作業をやってるんですけどね。決して美プラを作ってる訳じゃ……。

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