第151話 姫騎士分からせ

「そんな……グラッドさまが魔王ブラッドだったなんて……」


 仮の姿の俺の正体が、ヴァイレットの最も忌み嫌う魔王ブラッドだったことに、わなわなと身体を震わしていた。


 フォーネリア王国のギルドや商店の軒先には【この顔の男には気をつけよう】といったフレーズと共に、俺の人相を描いた物が出回り、さながら指名手配犯のような気分に陥っていた。


 顔合わせしたことはなかったが王族であるヴァイレットが俺の顔を知っていてもおかしくはない。


「もしかして、お兄さまと手を組み、私を騙していたというの? 答えて!」

 

 へなへなとへたり込んで地面にペタン座りしていたが、次の瞬間には俺をキツく睨んで問い詰めてきた。


「なぜ俺がアスタルと組まねばならん。俺は貴様の兄に友人を誘拐されているんだぞ」


 友人……正しくは実質セフレ……。


 俺は咳払いしながらヴァイレットの質問に答える。


「じゃあ、目的はなんだったんですか! 私を罠にはめたこと……理由によってはあなたを一生恨みますから」


「俺は貴様を罠にはめたつもりはない。グラッドの姿で貴様の処女を奪ってしまったことには詫びる。だがそれは貴様からはめたことを忘れるな」


 そう……俺の制止を聞くことなく、ヴァイレットから俺の上に跨がってきたのだから。


「それは……あなたが魔王ブラッドだったなんて知らなかったから……」

「どうだかな」


「私は本当にグラッドさまのことは好きだったんです! 彼の優しさ、強さ、気高さは私の憧れであり、心の支えでした……それが数々の女の子を拐かし、次々と手込めにしていく鬼畜、いいえ魔王だなんて……」


「誤解するな、俺は拐かしはしていない。手込めにしたというのは……否定はしないが、どちらかと言うと貴様が俺にしたように手込めにされたことがほとんどだ……」

「嘘です!!!」


 ヴァイレットは目に涙を浮かべながら、強く言い放っていた。俺たちが大事な話をしていると途中だったのに邪魔が入る。


 デバインドラゴンが翼をはためかせ、突風を起こしてくる。俺はさっとヴァイレットのまえに立ち、背で突風を受けていた。


「私を守ってくれて……いるの?」

「そう思いたければ勝手にそう思っていればいい。俺はグラッドであったとき、貴様と交わした約束を果たすだけだ。王宮を出れば貴様は自由の身、好きに生きろ」


「えっ? なぜなんですか……? 私の身体が目的だったんじゃ……」

「痴れ者が! 俺から貴様を求めたことはない!」

「ひんっ!」


 ヴァイレットは俺が彼女を叱責したと勘違いして雷が落ちたように恐れ頭を抱えてしまうが、痴れ者なのはデバインドラゴンだ。


 俺が背中を受けていると上空から急降下して襲いかかってきたのでそのまま振り返り、裏拳を放つ。


 ドラゴンは背を向けていた俺の不意をついたと思っていたんだろう。


 もろに俺の裏拳を食らい、女の子が男にイカされたようにピクピクと身体を小刻みに震わせ、気絶していた。


「尻を突き出しても貴様には一ミリも魅力を感じないな」

「一ミリ?」

「なんでもない。こっちの話だ」


 デバインドラゴンを倒したことでヴァイレットは困惑していた。


「なぜ魔王ブラッドが私を守ったのですか?」

「俺の前世の話だ」

「前世……?」

「ああ、俺の前世には妹がいた。それこそ目に入れても痛くないと思えるほど俺の妹はかわいかった」


「魔王も人の子なんですね」

「貴様は俺をなんだと思ってるんだ。俺に悪魔の角も尻尾も生えていない。そもそも魔族などではなく歴とした人間だ」


「そうなんですか!? あなたがグラッドさまであったときに私の胎内に注がれた子種汁は私の心を魅了してしまったのに?」


 自ら俺を逆レ○プしておいて、魅了されたと宣うヴァイレットに俺は「知るかいな!」と突っ込みたくなる。


 まともに相手するのがツラくなってきたので、スルーして俺の話を続ける。


「俺はアスタルを見て、同じ妹を持つ者として唾棄すべき男だと思った。俺がアスタルなら変な男の下に嫁には絶対に行かせない」


「そんなプロポーズのようなことを突然言われても困ります……私が好きなのはグラッドさまであなたではないのです」

「なにを言っている? 俺は妹の話をだな……」


「分かりました。そんなに私を手に入れたいのなら……私にはあなたを試す権利があります!」

「試す? 決闘か? 悪いことは言わない、止めておけ」


 俺がヴァイレットの手を取り彼女を引き起こしたときだった。


 起き上がると同時にヴァイレットからキスされる。彼女はねっとりと舌で俺の唇を舐めてきて、離れると感想を述べていた。


「はあはあ……グラッドさまと同じ味……」

「貴様、なにを!?」

「私は魔王になど屈するワケがないのです」


 くぱぁ!


 ヴァイレットはスカートを捲り、おパンツを下ろすと乙女の花園を見せつけきていた。


「なっ!?」


 いやただヤりたいだけの子になってるじゃないか! そんなの見せられたら逆に俺がヴァイレットに屈しそうだよ!!!

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