第145話 クズ男の始末

 マクシミリアンこと一之瀬がパラパラと埃が舞い散る瓦礫のなかから這い出てくる。


「くそったれが! 『俺の妹』だと? おまえ……まさか岡田が転生しやがった姿なのか!? じゃあ、オレの為すことやることぜんぶ上手くいかねえのはおまえのせいだったんだな!!! 許せねえ! 絶対にぶっ殺してやっぞ」


 怒りから口が滑ってしまったがマクシミリアンは

きっちりと俺の失言を拾っていた。


 本当は一撃でマクシミリアンを屠りたかった。


 だがミーシャの呪いもあり、そのこと気にするあまり無意識に力をセーブしてしまっていたらしい。


 エーデルワイス、ユーセミリア、リリー……俺を慕ってくれてる彼女たちに酷い仕打ちをしてヘイトがカンストしていた上に愛にまで手を出したことで、完全にキレていたと思う。


 ぶっ飛ばしたはしたものの、俺はマクシミリアンの本体を捉えたはずだったが防がれた、黒いキノコに……。


 殴った感覚は肉じゃなく、硬い石みたいな感じ。


 だがやっぱり嫌だ。


「なに手を拭いてやがる?」

「生理的に触れたくないものでな」


 俺は特殊なハンカチで入念にマクシミリアンを殴った右手の拳を拭いていた。それこそ、ついた汚れが落ちずに病的に何度となく拭うみたいな感じだったから、マクシミリアンが気になってもおかしくない。


「このクソガキが……だが残念だったなぁ! オレは転生してから大人になってんだ。ガキのおまえが勝てるわけねえんだよ、ボケがぁぁぁ!!!」

「安心した」

「あ? なにがだよ」


「姿形が変わろうとも口調が前世とまったく変わらない。もし別人を殴ってしまったのなら俺は激しく後悔していたところだ。だがもう俺に躊躇はない!」


「ほざけ! おまえは前世でも今世でも負け犬なんだよ! 負け犬は負け犬らしく下を向いて歩け!」


 マクシミリアンは腰に手を置くと、いきなり股間から黒い物体が俺に迫ってきた。キノコはスピアのように尖り、普通の人間ならそれこそ身体を穿たれても不思議じゃない。


 ただ……俺にはまったく効かなさそうではある。


「ちっ! 避けやがったか!」


 腹筋に当てて弾くこともできたが俺は避けた。理由はキモさからだ。蜂などは産卵管が毒針に変化などと言われる。


 もしあの黒いキノコが生殖機能を有していると考えただけでおぞましい。卵ならぬ奴の精○が身体に入っただけで「う、産まれりゅ~♡」とか言わされそう……。


「おらおらおら! 手も足もでないだろ! オレはおまえ如きに手も足も使ってないがなぁ、ははは」


 マクシミリアンはどうだ~? と言わんばかりにオレを見下すような目で見てくる。


 自慢にもならない自慢を語るところは相変わらずだな……。そしてすぐに調子に乗る。手も足も出ないんじゃなくて触れたくないだけなのに。


 生前、オモネールたちのように俺にも手揉みの才能があれば違った人生が歩めたかもしれない。だがあのクズ男に媚びを売るのは無理だった。


 だが俺は転生してからは手揉みの才能スキルがあることに気づいた。


 そろそろ俺の手が温まってきたところだぜ!


 俺の手は真っ赤になり、眩しいほどの明るい光を放つ。


「なにをやってやがる! 今更オレに媚びを売ってももう遅いんだよ、ノロマが!!!」


 ノロマはどっちなんだろうな……。


 顔や腹、太股に腰と当たれば一撃で屠るかのような攻撃を連続で放ってきたマクシミリアン。

 

 素早く伸縮する黒いキノコ、それはそれで腰を使わなくて便利なのかもしれない。いやこっちの話だ……。


 そのすべてを触れずに避けていたが、ようやく反撃するときが来た。


 キノコが俺の頬の横を掠め、後ろへ抜けてゆくのに合わせ、手刀を打ち下ろす。するとキノコと俺の手の間からバチバチと音を立て凄まじい火花が飛び散った。ずんずんと火花は超硬いキノコに切れ目を入れてゆく。


「なんだと!? だがオレのブラックダイヤモンドは砕けな……砕け……」

「『る!!!』」


 砕けるというか、切断されたというのが正しい。


 俺が使ったのはセルフプラズマカッターだった。超高熱で発生したプラズマがマクシミリアンの黒いキノコブラックダイヤモンドに流れる。


 ダイヤモンドは通常、電気を通さないが不純物があると通すことがある。見るからに不純物だらけの黒いキノコは黒鉛のように電気を通した。


 切れた先は地面にただの棒切れみたいに転がっている。


「オ、オレのキノコが!!! 絶対におまえだけは許さねえぞ!!! おまえの妹を目のまえで犯して……えっ?」


 俺はマクシミリアンが言い終わる間もなく口を手刀プラズマカッターで刻んでいた。


「二度と俺のまえで愛を犯すなんて言葉吐くな。二度と口の聞けない……いやもう無理か」

「ほ、ほごぉぉ、ほごぉぉ」


 下顎が切断され、マクシミリアンはまともに喋れない。


「おにぃ、それ以上やったら……」

「ああ……」


 グロいマクシミリアンを見た愛が俺の制裁を制止するように声をかけた。愛はマクシミリアンを心配しているんじゃない。俺を、この世界を心配しているのだ。


 そのときある男が現れた。


「愛さま……やはりこちらにいらっしゃいましたか……ボフゥ……」

「コビタンっ!?」


 愛が突然現れたコビウルに気を取られているうちにマクシミリアンの首に胴、手足を分離させておいた。


「おにぃ!!!」

「安心しろ、コビウル! 例の物を」

「はは! こちらにございますボフゥ」


 コビウルは小脇に大きな壺を抱えていた。


―――――――――あとがき――――――――――

月曜はお安く映画が見れるのでオバロを見に行ってきました。凄いですね、1100円で見れて特典小説付き……。1400円のノベルス用販促書き下ろしより豪華www でもね、作者は初週にやってたことを知らなくて、上巻がありません……。

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