第144話 あそこがキノコ化したクズ男

 股間を強打され悶絶するマクシミリアンだったがなにかおかしい。エーデルワイスは確実にマクシミリアンの脳天を捉えていた。


 だけどメイスは股間にヒットして、マクシミリアンはカニみたいにぶくぶくと泡を吹いて白目を剥いている。


 ああなってしまったら完全に断種しているに違いない。


 浮気に不倫、二股三股など朝飯前で歩くスキャンダラスな種馬だった一之瀬が酷いことをしていた三迫にやられることに因果応報という運命を感じた。


 それに俺的にもスパダリが死んでしまうと世界の破滅エンドになってしまうことを考えると助かったのかもしれない。


 流石にあのまま放っておいたら、出血多量で死んでしまうかもしれないので俺は二人の仲に介入することに決めたときだった。


「おやおやまあまあ、嘆かわしいことですなぁ。男子たる者、もっと己の欲望に忠実になるべきなんですよ。マクシミリアン、汝は神の子。こんなところで寝ている場合ではありません。いますぐ真なる力に目覚めるのです!」


 あのクソ神父がやってきたことでマクシミリアンの周囲に不穏な空気が漂い始める。俺はあのクソ神父が王子妃候補を異形の者に変えていると睨んでいたが、奴が瀕死のマクシミリアンに語り掛けてきていた。


「そこをどいてください。その方は私と私の愛する人の仇です。邪魔するのなら排除いたします」

「いやいや、それには及びませんよ、お嬢さん。もうすでに終わりましたので」

「えっ!?」


 エーデルワイスはもう一度マクシミリアンに止めを刺そうとするが割って入ったクソ神父に中断させられていた。メイスの先を見せ神父に警告したエーデルワイス、神父がどかないなら二人まとめて叩き潰すといった雰囲気だ。



――――ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!



 エーデルワイスが神父の言動に戸惑っている間に不思議なことが起こった。マクシミリアンの打ち砕かれ陥没していた股間が隆起してゆくのだ。


 マクシミリアンの破れたスカートと下着の間から黒光りするグロテスクなキノコが成長していた。


「あなたは彼にいったいなにをしたというのですかっ!」

「私……ですか? 私はただ彼の股間へキノコの菌を散布しただけですよ。彼の願望を叶えて差し上げたのです」


 クソ神父はエーデルワイスの問いに、一つも悪びれることなくしれっと答えた。まるで善行をしたかのように……。


 エーデルワイスが問い詰めてもクソ神父はのらりくらりと躱していたそのときだった。瀕死だったマクシミリアンが跳ね起きた。


 起き上がったマクシミリアンはエーデルワイスを舐めまわすように見ると舌なめずりしながら言い放つ。


「美紗子ぉぉぉ、アナルでシようぜ! オレの【黒光金剛ブラックダイヤモンド】が成長しておまえの喉から突き出させてやっから。上下を同時に責められるとか最高だろ?」


 マクシミリアンの顔に異変が見えた。顔には黒カビのような筋が走り、顔面タトゥーを入れているようだった。


「なんて穢らわしい。仮初めの復活でいい気にならないでください」


 ハンカチで口を押さえマクシミリアンをまるで汚物を見るような目で見たエーデルワイス。


「安心しろ、最初だけだ。オレの【黒光金剛】にはまれば自分からケツを振って、求めてくる。『マクシミリアンさまぁぁ、入れてくださ~い♡』ってなもんよ。転生後の筆おろしに美紗子を使ってやるんだから感謝しろよ」


「誰があなたの気色の悪い○根ピーもどきに屈するとでも思うのですか!」


 エーデルワイスは自分に向かって伸びてきた【黒光金剛】に対し、メイスを振りかぶりティーバッティングの如くフルスイングする。


 俺はエーデルワイスに打たれたマクシミリアンが悶絶するものだとばかり思っていた。 


 メイスが当たるとキーンと甲高い音が響く。


「そんなことが……!?」


 折れたメイスの片割れが無惨にも地面に転がっていた。


「はははは! 弱い弱い。オレの新たなる力はダイヤモンド並みに硬いらしいな。じゃあ、おまえのけつあなでオレの硬さを味わうといい」

「ひゃんっ!」


 さらに悪いことにマクシミリアンの黒キノコが槍のように伸びてきて、エーデルワイスの衣服が引き裂かれる。勝ち気な三迫が中の人となっても、肌が人目に晒されれば戦うこともままならない。


「おまえを犯し終わったら、あのグラッドとかいうクソガキハーレムから女どもを奪ってやるからな! みんな竿姉妹って奴だ、はははは」


 腕で破れた服を押さえながら乙女の柔肌を隠しているエーデルワイスはマクシミリアンを睨むのが精一杯の抵抗だった。


 完全に形成が逆転している。


「エーデルワイスちゃん!」


 愛が声を上げたと同時に神速のユーセミリアがマクシミリアンの首元に一閃、マクシミリアンの後ろに回った。反転し、もう一撃見舞おうとしたときに異変に気づいた。


「無光音無が折れるなんて……」

「ははははは! そんなナマクラ刀でオレの金剛棒が切れると思った? ちゃんちゃらおかしいっての」


 マクシミリアンの黒光りするキノコが首筋まで伸びてきて斬撃を防いだ。


「おまえもあのクソガキ仲間だったなぁ?」


 つい先ほどまでマクシミリアンはエーデルワイスにペコペコしていたが、いじめられっ子が急にチートを獲得したいみたいにゆっくりと歩き、ユーセミリアに迫っていた。


「やらせないから!」 


 愛がユーセミリアを支援するようにマクシミリアンへ砂粒のようなモノを放った。


 愛が放ったのは【杉花粉ティアーガス】。


 催涙ガスと同等の威力を持ち、相手の戦意を強力に挫く。


「うおっ!? 目、目、目がぁぁ!!! 鼻、鼻がぁぁ!!!」


 もろに食らったマクシミリアンが目を押さえ出す。さすが愛というか杉の妖精!


 だが……。


「な~んて言うかと思ったか? ご自慢のスキルも防がれて、残念無念だったね。お~かわいそ、オレにあそこもアナルも穿たれて、アヘ顔堕ちするんだよ~、マジ効かないなぁ! おまえ、かわいいからオレのガキを産めよ。イケメンのオレの子種で最高のガキが生まれてくんぜ」


 こんなとき愛なら職種:杉の最強スキル【永遠の眠り】を使うはずだが、四つん這いになって苦しそうにしている。


 まさか!?


 マクシミリアンこと一之瀬のあまりのキモさに吐いてしまっていて、心配したリリーたちが背中をさすってくれていた。


 恐ろしい奴……。


 吐き気を催した愛にマクシミリアンが手を伸ばし触れようとしていた。


 俺は深呼吸する。牢獄内で屈伸したあと、拳を壁に向かって突き出すとそのまま膝を伸ばした。俺の身体はロケットのように加速し、半地下となっていた牢獄の壁を突き破り、マクシミリアンに迫る。


「ほごぉぉぉーーーーーーーーーーーーー!!!」

「俺の妹に触れんな、クソ野郎」

「おにぃ!」


 マクシミリアンこと一之瀬を愛から引き剥がすようにぶっ飛ばす。


「ボクはグラッドです」

「おにぃ……まだその設定いる?」


 杉の子の愛はジト目で俺を見てきたがそれはお互いさまというものだろう。


―――――――――あとがき――――――――――

オバロの映画が公開されてるようで遅ればせながら見に行ってこようと思います!

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