第143話 はめられたクズ男
「ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ! くうぉぉぉーーーーっ、ラストォォォォーーー!!!」
牢獄でまったり筋トレに勤しんでいた俺だったが妙に外が騒がしい。
気になって、フリークライミングよろしくレンガの隙間に指を掛け、換気口のようになっている窓というか隙間にまで登っていた。
差し込む光が見えたかと思うと声が下にいたときよりもクリアに聞こえてくる。
「王宮内での私闘は厳禁です! ただちに退去ねがいます」
「申し訳ございません……。直ぐに片付けますので」
フォーネリア王宮の衛兵だろうか? エーデルワイスに注意しているようだった。エーデルワイスは優等生タイプで、騒いで注意を受けるようなことはない。
明らかになにか起こっている。
しかも衛兵は私闘と言っていた……。
ピーンと脳内に電気が走った。思い当たる節が一つや二つどころじゃなかったからだ。
一番有力なのがリリーと揉めて、平手打ちの応酬とか……。さっき、バシンバシンって連続で鳴っていたし。
ああ……女の子同士で叩き合うなんてことになってしまうなら、エーデルワイスに会って、直接王子妃選を辞退する方針を伝えるべきだった。
揉めている内容が分からなかったが、目の焦点を合わせる毛様体筋を使うとはっきりと事象が見て取れた。
エーデルワイスが血だらけになったメイスを握り、倒れたマクシミリアを見下ろしていたのだ。しかも二人は前世で俺の馴染みのある名前を連呼している。
エーデルワイスは俺たちの前世の上司だった一之瀬
ひでとの名をもじって、ひでえ上司と職場の同僚たちと口々に文句を言い合い耐えていた日々を思い出す。
長時間労働に加え、労働時間外の急な呼び出し、自分のミスを俺たち部下になすりつけるなど理不尽なパワハラ三昧……。
さらに愛から聞いた話では俺の前世の彼女、和葉は俺に別れ話を切り出すまえから一之瀬と関係していたらしい。
和葉は一之瀬のお気に入りで残業を早々に切り上げることも多かった。俺たちに仕事を丸投げして、退社した一之瀬と密会してたんだろう。
転生して愛と三迫と再会できたことはうれしかったが、エーデルワイスとなった三迫の前世での記憶が朧気なら触れずにそっとしておきたかったんだがな……。
そんなことを考えながら外を見ていると女装中のマクシミリアンに止めを刺そうとエーデルワイスがメイスを頭上高く振り上げていた。メイスが振り落とされば確実にマクシミリアンの頭蓋を割るに違いない。
「美紗子、止せ! オ、オレはだな、おまえのことが心配で声を掛けただけなんだ。岡田がおまえの気持ちにまったく気づかないって言うから慰めたかったんだよ!」
「寂しかったとはいえ、あなたの魂胆を見抜けなかった私にも落ち度はあります」
「だろ、だろ。オレは悪くないんだよ」
「ただ女の子を山のなかに裸で放置するなど言語道断……偶然通りかかった岡田くんがいなければ私はどうなっていたか分かりません。私の恩人である岡田くんを殺したのはあなたですよね?」
「ち、違うっ! あれは偶然快速電車の通過に居合わせて、岡田にぶつかってしまったんだよ」
「私は殺したかどうかだけ聞いたんですが……」
「騙しやがったな!」
「なにも騙してませんが? これですべて分かりました、あなたは生きている価値のない人間です。生かしておけば、またあなたの毒牙に掛かる女性が増える……死んでください!」
「ま、待て待ってたら! あぎゃぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
エーデルワイスは躊躇なくメイスを振り下ろし、マクシミリアンな鮮血が辺りに飛び散り、現場は凄惨な状態へと陥っていた。
―――――――――あとがき――――――――――
おお、カクヨムコン10の開催が発表されちゃいました(9/27)。作者は現代ラブコメを一作だけ出せればなぁ、と思っております。てゆうか、大変お待たせしてしまっている性欲処理メイドの2章を早く書かねば……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます