第134話 かわいそうな女の子は救うしかない
あー久しぶりにムカついた。
すぐに訊ねる。
おい、俺の上腕二頭筋!
クズはやるのか、やらないのか、どっちなんだい?
やーる!!!
かわいそうな女の子をさらにいじめるようなことをする奴らは天が野放しにし神が許そうとも、俺の筋肉が黙っちゃいない。
ただ観衆がいる手前、俺は派手に蛇髪にやられることにした。髪蛇たちが俺を締め上げていることにほくそ笑むユーセミリアの寄親。
「や、止めて……グラッドさまをいじめないで……」
ユーセミリアは閉じた瞳から涙を流しながら、俺を攻撃していることに震えていた。
蛇たちは締め上げ終えると俺を放り投げた。辛うじて舞台端に残った振りをする。フラフラになりながら、なんとか立ち上がったような演技をしていると蛇たちがパンチのように伸びてきて、俺を連続で殴りつけてきた。
まったく効いていないのだが、打たれる度にノックバックするとユーセミリアの寄親たちが本性を現し始めていた。
「いいぞ! もっと殺れ! 殺れ!」
「もっと打ち込んで黙らせてやりなさい!」
俺にボコボコと打ち込まれる殴打を目の当たりしたリリーとエーデルワイスが叫ぶ。
「グラッド!!!」
「グラッドさまっ!!!」
リリーは俺がアイコンタクトを送ったことで演技であることを承知し、俺に合わせてくれていたが、エーデルワイスは本気で心配しているようだった。
そろそろかな。
いくら殴打されたり、締め上げられたところで効かない。むしろ蛇たちが疲れてきているように見える。
「こんな髪があるからいけないんですっ!!!」
ユーセミリアは持っていた仕込み白杖の柄を握り、抜刀しようとしていた。
「そうはさせないよ」
だが寄親が呪符をかざすと蛇がユーセミリアの腕に絡んで抜刀できないでいる。
「切っても大丈夫なのか!?」
俺が向かってきた蛇に触れ、ユーセミリアに訊ねると彼女はこくりと頷いた。
「おまえのようなガキが切れるわけがないだろ! そのまえの決闘もインチキに決まっている」
男の寄親がなにも知らずに俺を批判していたが、ユーセミリアと違い、こうまでも相手のことを測れない無能だとは思わなかった。
「神さま、ボクを助けてください」
俺は舞台の床へ跪いて両手を合わせて祈りを捧げる。あくまでそれっぽいポーズだが……。
「ははは! 祈っても無駄だ! おまえはここで死ぬんだからなぁ!!!」
「そうよ、やってしまいなさい。ユーセミリア!」
蛇たちが口を開けて俺の頭に向かってくる。七つの頭が俺の頭を噛み砕こうとしたときだった。
襲ってきた蛇の頭がすべて地に転がる。
俺はシュッと手で空を斬る動作をするとソニックブームが発生し、風の刃が蛇たちをユーセミリアと分離していた。
うねうねと動いていた蛇だったが、やがて動くのを止めていた。
決闘を観にきていた観衆たちは静まり返っていた。それはユーセミリアの寄親たちも同じ。
「なにが起こった?」
「分からない……分からないわ!」
そりゃそうだろうな……。
俺は人に視認できない速度で動いたから、普通の人間にはただ祈りのポーズをしたままにしか見えないのだから。
――――奇跡だ!
――――神童がいるっ!
――――なんと神々しい!
「えっ!?」
観衆たちはみんな一様に祈りを俺に捧げてしまっていた。
魔王の次は神の子かよ……。
俺が呆れていると杉の子が舞台の側まで寄ってきて教えてくれる。
「額の眼を抜いてあげて!」
「大丈夫なのか?」
「それで彼女は解放されるから」
「だけど眼だぞ?」
「あれは義眼なの」
俺は杉の子にサムアップする。
正直攻め倦ねていた。無力化しようにもあんなかわいそうな女の子を痛めつけるわけにもいかず、困っていたが、杉の子のアドバイスにより希望の光が見えてきたのだ。
―――――――――あとがき――――――――――
山が動いたらしいですね。任天堂がパルワールドの会社を特許侵害で訴えたらしいです。作者も動くときが来たか!?
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