第130話 TS化薬を盛られたクズ男
――――【マクシミリアン目線】
(王子妃選が開始される前のこと)
オレさまは拾われた貴族のおっさんに女物の服を着させられていた。
「本当だろうな、オレが妃候補になれば願いが叶うってのは?」
「もちろんですよ。ディバインドラゴンは復活させた者の願いを叶える伝説の聖獣。そこらにいる聖獣もどきとはわけが違います」
金髪にふわっとした天パが掛かり、口ひげを生やしたおっさんがほるほるした目でオレさまを見てやがる。キモいがオレさまはおっさんの死んだ娘にそっくりらしい。
おっさんの名前はシュミッツ・メーディック、なんでもこの辺りにたくさんの土地を持つ公爵らしい。女物の服なんてマジで着たくねえんだが……「着たくなければ、いつでも退去してもらって構わない」なんて言ってきやがる。
オレさまが外に出れないことを分かって言ってくる当たり、卑怯極まりねえよ。
だが、これはチャンスでもある。
願いでオレの無くしたムスコが復活すれば王宮に出入りできるようになったオレは女官どものあそこにも出入りし放題!!!
しかも身分は王子妃ときて、体面もあるからそう易々とオレを放逐できまい!
「乗った! 報酬の配分はオレが八、おまえらが二でいいか?」
「いいえ、こちらが六、あなたが四」
「ふざけんな! それじゃ少な過ぎるだろうが! せめてオレが七はもらわねえと」
「でしたらこちらが四、あなたが六。これ以上は譲れませんね」
「はあ? ふざけんなよ!」
「分かりました。それでご納得いただけないということでしたら、別の者に頼みます」
俺が答えを渋っていると……。
「それではあなたさまに供与させていただいた飲食費、宿泊費、衣装代のすべてを請求させていただきますね。え~っと五千飛んで二十……」
「待て待て! なんでそんなに高くなるんだよ、おかしいだろうがよぉ!」
なんつうかこの国の貴族って奴はこんなにうめえもん食ってやがんのかってくらいシュミッツのおっさんのところの料理は旨かった。オレさまが家で食わされてた料理なんてはっきり言って、ありゃ犬の餌だ。
しかもメイドや執事に頼めばいくらでも出してくる。だがそれもおっさんの罠だったらしい。
「毎日山海の珍味に酒を所望され飲み食い、あまつさえ我々の貴賓室を自室のごとく汚し放題、さらには酔って調度品まで壊されては……」
「し、仕方ねえな……その条件で飲んでやる。感謝しろよ」
くそ、足下見やがって……。
だがまあいい。
上手くいけば借金は踏み倒せる、願いは叶えられる、と良いことずくめじゃねえか!
オレさまのイケメンぶりと強さがあればこんな弱小国の王子妃選なんて余裕ってもんよ。
――――それから一週間後。
「あれ? なんだよ、これ」
目が覚め着替えようとするとオレさまの胸が膨らんでやがった!
ならやることは一つしかねえよな。
「おお、おお! 自分で揉んでも興奮してきがんのか、女になるとオナニーが捗るな。って……なんだこの穴……」
もしかしたらと思って、パンツも脱ぐと……。
無くなったオレさまの息子の傷痕がどう見ても女のアレにしか見えねえ。
「んぐっ!?」
なんだよ、これ……。少し触れただけで敏感に反応しやがるっ!?
オレさまがパンツを脱いで下半身の異常を絶賛確認中にも拘らず、ノックもせずにオレさまを拾ったシュミッツのおっさんが部屋に入って来やがった。
「おまえみたいな浮浪者を拾って、高い金を払い実験を繰り返して良かったよ。私はね、領地経営をしているが趣味で薬師をしている。ちょっと領民で試せそうにないヤバい薬はおまえみたいな奴で試してるんだ。もちろん私はちゃんと被験者が生き残れば報酬を払うつもりだよ」
「オレを……オレさまを実験台に使いやがったのか!」
「黙れらっしゃいっ!!! おまえみたいな金食い虫……しっかり働いてもらって借金返してもらわなきゃウチは赤字なんだよっ!!! ふざけてないでしっかり王子妃選で勝って来い! おまえに投資したTS薬が失敗したら、私もおまえも破滅しかないんだからなぁ!!! 私もおまえも怖い借金取りに締められる。おまえは股を開いて客を取らされ、私は山に埋められてるんだっ!」
オレさまはマジでヤバい奴に拾われちまったじゃねえかよっ!!!
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