第119話 クズ王子再び

――――王子妃選当日。


「なんと美しい……」

「あんな妃をもらったら、毎晩……」

「俺もあんな嫁さん欲しい……」


 リリーの見繕った童貞殺しのドレスを着たエーデルワイスが王子妃選の候補者を見ようと集まった大衆を魅了していた。


 秘書然としたリリーは鼻高々なご様子だったが、彼女はすぐに冷静になる。


「おかしいですわ。お姉さまの姿が見当たりません」


 きょろきょろと辺りを見回していたリリーが訝しがる。俺は暇があるときはこっそりフォーネリア王宮へ潜入し、様子を窺っていた。


 フォーネリアの姫騎士から絡まれるという想定外のことはあったが、オモネールが手配してくれていたスパイと接触できたことにより主な内情は大体のところは把握できている。


 なんでもアスタル王子付きの侍女を勤めるスパイはなんでも母方がリーベンラシア出身らしい。


 スパイである侍女の話によると……。


「フリージアは特別推薦シード枠だ。フォーネリアが誇る有力貴族がバックについたんだろう」

「そんなバックで突いたなんて……昨夜を思いだしてしまいます……♡」


 なにをどう聞き間違えたらそうなるのか……。


 頬に手を当て、顔を赤らめるリリー。そんなリリーを見たエーデルワイスは不思議そうな顔をしていた。


 昨晩は仕方なく、リリーを説き伏せるために後ろから激しく分からせてやったけど、逆効果だったみたいだ……。


 そんなことよりフリージアだ。


 彼女が俺に愛想を尽かしたのなら、それでいいと思ったが、少なくとも俺の目で確認したところ、そうは見えなかった。


 生気を失い瞳のハイライトは消え失せ、なにか人形にでもなってしまったかのように見えたから……。


 スパイ曰わく、おそらく催眠術の類ではないか、との見解だがアスタルはフリージアに手を出していないらしい。あくまで会話を交わす程度に留めているようだ。


 それにしても驚きだ。


 乙女ゲーゆえにアスタルは純情なのか!?


 逆にスゴいな……。


 エロゲやエロマンガみたいに催眠アプリが使えたりしたら、それこそほとんどの男がヤリたい放題すると思われるのにアスタルはそれをせずにいてるのだから……。


 しかしだ。


 アスタルは知ってるんだろうか?


 フリージアが毎夜俺との性交渉を求めて、逆夜這いに来るドスケベ性女であるということを……。


 知ったら、脳死してもおかしくないかも。


 その事実を知ってもなお、フリージアと婚約したいというのであれば、むしろ彼を応援したい。催眠スキルを使い、フリージア自身の意思を無視したことだけは頂けないけど……。


 フリージアプランを練っているといかにも陽キャパリピな頭ハッピーセットらしい馬鹿声が聞こえてくる。


「ははははっ! 大した娘は参加していないようだな。ボクが推すクリスタがアスタルの妃になることは間違いなさそうだ」

「殿下、まだそうと決まったわけでは……」

「気が早すぎるのよ、あんたはまったく」


 声の主は行方知れずだったジークフリートだった。奴の傍らには同年代の若い女の子、その後ろには神父姿の男がある。


 どう見ても奴らは冷やかしに来たわけじゃなく、王子妃に参加しようとしている。


「な、なんだよ! ボクはありのままのことを述べただけだぞ。クリスタがアスタルの妃となった暁には、キミたちはボクの慧眼さに驚くことになるだろう」


 ジークフリートは腰に手を当て鼻を鳴らしており、自信過剰なことろは相変わらずのようだ。


「ほら、みんな。あれを見てみなよ。あんなおチビちゃんが参加するつもりだ。ははっ、さすが王子妃選だね。勘違いした者もたくさんいるから、もうボクたちが一位の座はもらったようなものだって」


 俺を指差し、ジークフリートが鼻で笑う。人を見た目で判断し、侮るのは本来ブラッドの役割だったんだけど、なぜか今は奴がその役割を果たしている。


 ただジークフリートが俺を見て侮る気持ちも分からなくはない。なにせ王子妃同士の決闘が選考内容に含まれているからだ。


「しかしなんだろう? あのおチビを見てるとなんだか無性に腹が立ってくるんだが気のせいだろうか?」


「あなたね……喧嘩は同レベルの者同士でしか起こらないって言葉、知ってる? つまりあなたとあの子は同士なの。まったく子どもにイラつくなんて、元王子とはとても思えないわ」


 そんなジークフリートを見て、クリスタが両方の手のひらを上を向けて外国人のようにフーとため息を漏らして呆れていた。


「ボクとあのおチビが同レベルだって!? 聞き捨てならないなっ! クリスタ! キミはボクが寄親になってるから王子妃選に出れることを忘れるなよ」


「はいはい。でも私が王子妃になれないと困るのはジークフリートの方でしょ」

「ぐぬぬぅぅぅ……」


 クリスタを言い負かそうとしたジークフリートだったが相変わらずの安定のジークフリートで安心する。


 ちょっと話が逸れてしまったが決闘は本来妃候補がやるものなんだが代理で寄親か、その従者が務めてもよいことになっている。だから妃候補自身の実力もさることながら、有力な寄親をつけるほど有利になるのだ。


―――――――――あとがき――――――――――

まさかFREEDOM版のズゴックの予約ができてしまうなんてね……ちょっと驚きです。恐らくなんですがバンダイも大量に流してくれるとは思うんですが一定の期間は品薄状態になってしまうので。

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