第116話 くっころ姫騎士の教育

 女騎士は周囲を見渡し、俺に小声で囁いてくる。


「ここはマズい……私の部屋へ……」


「なにがマズいのでしょうか? 騎士さまはボクに衆人環視のなか、服を脱げと仰いましたが……それでボクは全裸になりました。それに場所を移動するといきなりボクは拘束されて、命すら奪われかねません。そうなるとボクはお父さまから仰せつかったお仕事が永遠にできなくなってしまう恐れがあります」


 彼女に脱いでもらいたいとは思わないが、せめて身体検査をするならしかるべき場所へ移り、同性に見てもらいたい。そんな想いから、俺は彼女に一考を促すため少々煽り気味の言葉を返していた。


「くうっ……。我が国の聖獣ディバインドラゴンに誓って、そのような卑怯な真似はしないわ」


「あのう……ボクはリーベンラシアの人間なのでディバインドラゴンに誓われても困るんですけど。それにここでもたもたしていると面会予約をしていたお役人さまをお待たせすることになっちゃいますので、早くしていただけると助かるのですが……」


「誰と面会の予約を取っているの? 私があとで言っておくわ、私と話していたから遅れた、と」


「それはできません。あちらは先約。騎士さまと言えど、割り込みは商売ビジネス礼節マナーを損なうものです。そもそも騎士さまにそんな権限があるのですか?」


「へ、減らない口ね! 私はこの国の王女なのよ! 私が一言言ってやれば、みんな黙るから!」

「なるほど、そうやってボクの口も黙らそうとされるのですね……。でしたらなおのこと、王女殿下のお部屋に参るわけにはいきません」


 なかなかの横暴っぷりで、もしかしたらと思っていたらそのもしかしたらだった。身にまとった甲冑をコスプレとまでは言わないが、彼女の取る仕草を見てもまだまだ鍛錬がヌルいんじゃないかと思わせる。


「なっ!? この国で私に逆らう気?」


「滅相もありません。ただリーベンラシアでは面前で名誉を傷つけられたときは、たとえ相手が王族であろうが貴族であろうが訴え出ることは可能です。フォーネリアは名誉を軽んずる国なのでしょうか?」


「くっ、子どものくせにああ言えば、こう言う……。一体、どうすれば良いっていうのよ!」

「はい、ではそちらの植え込みで甲冑を脱いで、ボクに下着を見せてください。それでにします」


「……分かったわ」


 これは俺みたいなかわいそうな奴を生まないためのお仕置きだ。もちろん彼女がこのことを悔いて反省してくれれば、いい。


 女騎士改め、姫騎士は人目を遮る植え込みを指差し、俺を導いてゆく。大声を上げて人を呼ぶようなことをしないところをみても、相当プライドが高いらしい。


「リーベンラシアの男にこの私が屈すると思わないで!」

「ボクはただ王女殿下にあらぬ疑いを掛けられ裸にさせられてしまいましたので、謝罪していただきたいと思っただけなんですが……」


「あなたみたいな子どもに謝罪する……それこそ屈するというもの。フォーネリアの騎士に謝るという文字はありませんっ!」


 う~ん、この姫騎士が言うように本当にフォーネリアの騎士たちが謝罪できないようであれば、非常に面倒なことになりそうなんだけど……。


「見ていなさい! これがフォーネリアの王女、ヴァイオレットの肢体なんだからっ!」


 と、啖呵を切った姫騎士だったが自分で甲冑が脱げないのか、さっきとまったく変わっていなかった。


「もしかして一人で脱げないとか?」

「ぬ、脱げるわよ、こんなもの! ひゃんっ」


 俺から指摘され、片膝をついて脛部分のプレートを外そうとしたが尻餅をついて転んでしまった。


 ヤベえ……。


 とんでもないポンコツ姫騎士じゃないか!


 俺の悪い癖がむくむくと成長してゆくような気がしていた。


「なっ、なに!? なにをするのよっ」

「黙って、俺に従え!」

「えっ!?」


 ついに我慢が限界を迎え、ブラッドの本性が姿を現してしてしまっていた……。


「わ、私はリーベンラシアの男になど屈指ないんだからっ!!!」


―――――――――あとがき――――――――――

作者、いまからめぐみんの水着素体を組み立てに掛かります! それではまた明日っ。

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乙女ゲーのざまぁされる馬鹿王子に転生したので、死亡フラグ回避のため脳筋に生きようと思う。婚約破棄令嬢と欲しがり妹がヤンデレるとか聞いてねえ! 東夷 @touikai

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