第115話 くっころ姫騎士

――――王子妃選の始まる前のこと。


 俺はフォーネリア王宮へと潜入していた。

 

 王宮へと通じる門を潜ると前世におけるコンビニの店舗くらいある巨大なドラゴンのオブジェが見えてくる。


 フォーネリア建国の起源となったディバインドラゴン……。


 いまは止めているようだが、聞くところによると口からブレスよろしく水が吹き出す仕組みになっているらしい。


 ミーシャと並ぶ聖獣なので碌でもない奴であることは言うまでもない。


「怪しい奴、何者だっ!」


 ディバインドラゴン像を横目に宮殿へ続く庭園をてくてく歩いていると俺の肩を掴んで呼び止める声がした。


 振り向くとごてごてと装飾された甲冑を着た騎士だった。


「はい、リーベンラシア王国のライオネル商会のグラッド・ライオネルです」


 騎士に名乗りを上げ、通行証を見せた。城門で通行証を見せるとすぐに通してくれたので、フォーネリアの警備はざるに思えたのだが、少し目測を見誤った。


「ふん、子どもを王宮に寄越すなんてなにを考えてるのかしら?」


 騎士はかぶっていたヘルムを取ると鼻筋の通った美しい乙女が長い金髪を棚引かせ、甘いフローラルが漂わせてくる。甲冑で解らなかったが女騎士だったようだ。


 なんとかブラッドを抑えているが、女騎士の失礼な態度にいつ抑えきれなくなるか分からない……。危険が危ないよ、女騎士さん。


 それにしても流石コビウルとしか言いようがない。


 ブリューナク王国との戦争で後手を取ってしまったことの反省から彼は対策を講じていた。


 商業ギルドに顔が利くコビウルは俺が他国へ潜入することもあろうかとペーパーカンパニー……どころか各国にライオネル商会の支所を作り、正規の外交チャンネルと違って、潜入や情報収集、破壊工作など非合法活動を秘密裏に行えるようにしている。


 ブリューナク王宮に潜入したときのようにわざわざ馬車の車体の裏に隠れなくても良いのだ。


 女騎士は俺を訝しんでいるのか、見下ろすように見たり、しゃがんで下から見上げたり、まじまじと俺を見ていた。


「リーベンラシアの商会ねえ? どうせ、弱小商会が我々フォーネリア王国の財貨を掠めとろうとしているだけでしょ?」


「そんな、滅相もないですよ。商売はお互いに良かったと思える取引をしないと長く続けることができないとお父さまが申しておりました」

「ふん、口ではなんとでも言えるわ」


 女騎士は腕組みして不満そうしている。だがずっと女騎士に付き合っているわけにもいかないので立ち去ろうとすると……。


「ボクは王宮にご用がありますので、疑いが晴れたのであれば失礼いたします」


 ここでつまらない騒ぎを起さないためにも下手に出ていると女騎士は無理難題を言ってきた。


「脱ぎなさい」

「ここでですか?」

「ここ以外でどこがあると言うの? 脱がないとこの先へは進ませない」

「絶対に?」


「そう、絶対よ! このヴァイオレット・フォーネリアの目を欺けると思って?」


「分かりました、脱ぐのは構いませんがなにもなければどうしてくれます? なにもなければボクはリーベンラシア王国に不当な扱いを受けたと抗議しますが……」

「くっ、子どものくせして、小賢しい知恵を……」


 ぐぬぬと歯ぎしりして女騎士は美しい顔の眉間に皺を寄せ、渋い顔を見せた。


「なにもなければ好きにしなさい。でも強がりを言っても無駄よ。あなたはなにか隠している。そう私の勘が告げているのよ」


 よほど自信があるらしい。


 確かにこの女騎士の勘は当たっている。まさかリーベンラシアの王子が子どもに成りすまして潜入してくるなんて、並みの者には見抜けないのだから。


 並みの者じゃないとすると……。


 そう言えば、この女騎士……さっきフォーネリアって言ってなかったけ?


「分かりました。脱ぎます、ここで」


 女騎士は俺の言葉にふふんと鼻を鳴らして、得意気な顔をした。


「ごめんなさい、脱いだ服は女騎士さまが持ってていただけますか?」

「ええ、もちろんよ。証拠がないか隅から隅まで見てあげる」


 覚悟を決めた俺はベストを脱ぎ、ブラウスを女騎士の腕に掛けた。女騎士は服になにか隠れてないか触っていたが、怪しいところなんてあるはずもなかった。俺はさらにズボンを脱いで、パンツに手をかける。


「い、いやそこまで脱ぐ必要は……」


 女騎士は片手で目を覆って俺を止めようとしてくるが、もう遅い。


「なにか隠すなら、むしろ下着に隠していることが多いと思うんですが」


 俺は女騎士のまえで全裸になった。


「ふぁっ!?」


 女騎士は片手で視界を隠しながらも、指の間を開いて、子どもちんに視線が寄っていた。みるみるうちに女騎士の顔が赤くなる。


「なにか見つかりましたか?」

「ないっ、ないっ! そんな!?」


 俺の言葉で我に返ったのか、女騎士は大慌てで服や俺の身体を確かめる。


「うそ……。一度たりも私の勘が外れたことなんてないのに……」


 女騎士の顔面は蒼白になっていた。


 貴族ではないものの、子どもとはいえ客人に疑いをかけ、全裸にまでしたのだ。女騎士にはそれ相応の罰を受けてもらわないとな。


―――――――――あとがき――――――――――

カドプラのめぐみんを作っています。えっと……これってもしやバンダイ? パーツの嵌め合いの良さや太股から下の関節のつくりがとても良く似ています。第1段でかなりクオリティの高い美プラを出してきたなぁ、って印象でした。

なお、お値段は……KADOKAWA教のお布施が入っておりますので、そこは目を瞑らないといけないかなと。とりあえず、作者はヒンヌー三人娘は買いますwww

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