第114話 王子選の始まり

 翌朝。


「びっくりしました。今朝起きたら、リリネルさまがいなくなっていたので。こちらにいらしていたんですね」


 エーデルワイスが俺の部屋訪れてきており、俺の隣で眠るリリーを見て、胸を撫で下ろしていた。


 俺はいかにもシスコンっぽい演技する。


 リリーのおっぱいに顔をうずめて、姉恋しそうな雰囲気を部屋に充満させておいたのだ。これでエーデルワイスに姉弟でおせっせしていたとは悟られまい……。


 俺とエーデルワイスとの間で朝の挨拶を済ますと、リリーがようやく目を覚ました。俺の様子を見たリリーは俺の頭を撫で、フリージアにも似た天使のような微笑みを浮かべる。


 リリーの奴、本当にショタが好きなんだ……。


 ただ美しき姉弟愛を見破るような一言をエーデルワイスが言ってのける。


「でもなぜかリリネルさまの喘ぎ声なような音が響いてきたような……?」

「幻聴よ。そもそもこの甘えん坊が私を抱くことができるなんてお思い?」


「そ、そうですよね。いくらグラッドさまでも……」


 すまん……エーデルワイス……。


 その無理を通そうとしてきたのはリリーなんだ。小一のショタの精力を搾り取ろうとするとか、ドスケベなところは異母姉のフリージアと大差ない。

 

 おっと、のんびりしている暇はない。


 あと僅かで王子妃選が開始されるのだ。



――――フォーネリアの中心街。


 洋服屋というよりブティックというのが相応しいお店に入った俺たち三人。俺は戦闘はなんとかなっても女性向けの衣装には明るくない。


 そこで活躍してくれるのがリリーだ。


 いまでこそ、彼女は俺にしか媚びを売らないが『フォーチュン・エンゲージ』ではブラッドに愛想を尽かした彼女は様々な男たちに色目を使っていたのだから……。


 そんな男に媚びを売ることにかけては天才的なリリーがエーデルワイス用のドレスをチョイスする。


「本当にこれを着させるのか?」

「当然ですわ! 私に任せなさい」


 リリーを悪役令嬢と言ってよいのか迷うところではある。いかんせん、フリージアのような聡明さには欠けるのだ。


 その分、ピンク髪のツインテなルックスも伴い、アホかわいさがあるのだが……。


 そんなリリーがツインテを下ろして髪をストレートにし、眼鏡を掛けたのだ。どこかの秘書然とした佇まいにちょっと驚く。


 リリーはエーデルワイスにドレスを押し付けるようにして、ドレスを渡し、試着室へ放り込む。


 しばらく待っていると、エーデルワイスは恥ずかしそうにカーテンの隙間から顔を覗かせる。リリーがカーテンのなかに入り、チェックを済ますとエーデルワイスの背中を押して試着室から出てきた。


「ど、どうですか? 似合っていますか?」


 俺はエーデルワイスの変化に驚いた!


 ボロボロのお仕着せからドレスに着替えた彼女はまるで羽根を広げたモルフォ蝶のように蒼く輝いていた。


 胸元が大きく抉れ、エーデルワイスの谷間が協調され、さらに童貞を殺さんとばかりに背中はおろかおしりの割れ目に至るYの字がチラ見えするほどの物だ。


 馬子にも衣装とは良く言ったもので、リリーのチョイスしたドレスは多少のケバケバしさを感じたが、目鼻立ちの良いエーデルワイスが着るとケバさが中和され神々しいまであった。


「ふふっ、これならアスタルの方から婚約してくれって来るはずよっ!」



――――フォーネリア王国王宮庭園。


 俺たちはついに王子妃選の当日を迎えた。予選会場とも言うべき庭園へ集められ、妃になりたい女性とそれを推す寄親たちががやがやと騒がしい。


 身分を問わないとあり、妃になりたい候補だけでもざっと見ただけでも千人は下らないだろう。


 リリーはエーデルワイスを王子妃選で一位にさせようと息巻いていたが、俺は愛から教えられていた。


【おにぃ、絶対に王子妃候補を一位にしたらダメだからね。してしまったら、その子は不幸になるから……】


―――――――――あとがき――――――――――

ついに作者の家に御神体が届きました。箱から「我が名はめぐみん!」と声が聞こえてきそうです。ああっ、KADOKAWA教スニーカー派に喜捨したので、書籍化という御利益が得られないかなぁ? 得られないかなぁ?

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