第106話 夜の娼館でショタとサキュバス……勝負でしょう

 俺がベビードールのような破廉恥な衣装を身にまとった娼婦に訊ねる。


「ふ~ん、その子は坊やの想い人なの?」


 娼婦は褐色の肌に口元を隠すフェイスヴェールをしており、一言で言えば踊り子のような妖艶な女性である。


「いや赤の他人だな」

「赤の他人なのに探してるのね。じゃあ名前は?」

「エーデルワイスだ。知っているならもったいぶらずに早く教えろ」

「知ってるって言ったら、どうする? 坊や」


 余裕の笑みを浮かべ、褐色の肌の娼婦はもったいぶる。


「ところで坊やのお名前は~? 一人でこんなところにいたら危ないお姉さんに食べられちゃうよ」


 俺を見て、舌なめずりする娼婦のお姉さん。危ないお姉さんというのは彼女自身なんだろうか?


 しかし、ブラッドはマイペースに言葉を返す。


「はあ……貴様は人に訊ねる前に自ら名乗るということを知らんのか……」

「あはっ! それくらい生意気な子は好きよ……私はカルラ。この娼館街のナンバーワンよ」


 彼女がそう言うだけあって、フェイスヴェールで隠されたために強調されたエメラルドグリーンの瞳は多くの男を惑わしてきたに違いないと思わせるものがある。


「ククク……ナンバーワンが店の外で立ちん坊で客引きとは笑わせる」

「ふふ、偶には馴染みのお客ばかりじゃなく、坊やみたいな珍しいお客を漁りたくなるの」


 手馴れた手つきで俺にボディタッチしてくる。男の扱いには習熟しているようで、局部には触れないながらも、彼女にお腹などを触れられると気持ちよくなる。


 俺はカルラの手を掴んで、言い放った。


「俺は坊やなどという名ではない。グラッド・ライオネル。商家の小倅だ」

「グラッドね、覚えたわ。キミはお金持ちそうだけどー、私とぉ、一晩遊んでくれたら、教えてあげでもいいかなぁ、なんて」


 カルラは俺をもふもふのように扱う。顎下を優しく撫で、潤んだ瞳で見つめながら俺を挑発してくる。


「よかろう。俺もこう見えてもれっきとした男! 受けて立とうじゃないか」

「うふふっ、かわいい顔して威勢だけは大人顔負けね」



――――娼館「ピンクピーチ」


 カルラに招かれた部屋は本人がナンバーワンと言うだけあり、娼館というより高級ホテルと言っても良いほどだった。アンティークな調度品はシックな佇まいで、カルラ自身の趣味であるらしい。


 ただやはりというか、えっちなことをするよう誘うため、甘ったるい妖しげなお香が焚かれていた。


―――――――――自主規制―――――――――


 見せられないよ!


―――――――――自主規制―――――――――


 俺から精力を絞り取ろうとしたカルラは俺のズボンを脱がした途端驚愕していた。そりゃ小学一年生くらいの男の子に大人顔負けのご子息がついていたらねぇ、驚くよねぇ。


 俺も大木に訊ねたんだけど、そればかりはリッチーの魔法だけに分からなかったらしい。肝心のリッチーに訊ねてみても「リッチー?」と音を発して首というか軟体を傾げるだけ。


 それならと騎乗位で挑んできたカルラだったが、俺が返り撃ち、じゃなかった返り討ちにしたのだ。


「ククク……どうしたカルラよ。イキすぎて本性が現れてしまっているぞ」

「い、いやっ! そんなっ!? 人間に、しかもこんな子どもに見破られちゃうなんてっ!」


 カルラは慌てて頭と尻尾を隠そうとしたが、もう時すでに遅し。彼女の頭からは山羊のような巻き角、お尻からは尻尾が生え、そしてへそとアンダーヘアの間には淫紋が浮かび上がっていた。


「有り余る性欲を人間から得るには娼婦がいいか、よく考えたものだな」

「ら、らめっ! そこは舐めちゃっ!」

「ならエーデルワイスの居場所を教えろ!」


 しっかりとカルラを分からせたあと、俺は彼女の敏感なところを口を割らせるために愛撫していた。


「か、かのひょにゃら、わらひがほぎょしれるからぁぁ……、も、もうゆるちて……」

「サキュバスと言っても他愛もないな」



 アヘ顔ピースでイッてしまったカルラだったが、しばらくすると素に戻り女の子の手を引いて、俺の下へとやってきた。


「エーデルワイスです……」

「グラッド・ライオネルだ」


 十五、六歳くらいの若い娘が手をまえで重ねぺこりと頭を下げた。ガキの俺にも拘らずだ。


 エーデルワイスはカルラに比べ、ずいぶんと地味な装いで、それこそフリージアが実家で着せられていたお仕着せよりも数段質の下がる服を着ていた。薄汚れたブラウスに破れに解れのあるエプロンドレス。色は剥げて黒から灰色になってしまっていた。


 それに顔は煤にまみれており、とても美少女とは言い難い。いやわざと男が忌避するようにさせているようだった。


「グラッドがこの娘を買おう、って言っても無理な注文だから」

「無理な注文とはなんだ?」

「この娘はなにをやらせてもダメダメな子だから客なんてとても取らせらんない」


「じゃあ、この女がどうなったら客を取らせるんだ? 貴様が一生面倒をみるとでも?」

「そ、そんなのただの一見の客のグラッドに関係ないってば!」


「もしかして、ナンバーワン嬢で頑張っているのもこの女のためか? ああん?」

「違うったら! 私はただ私の性欲を満たしたいから勝手にやっているだけ。エーデルワイスとは関係ないってば!」


 カルラはショタの俺にすら手を出してくるドスケベだが、客を取らされそうになっていたエーデルワイスを保護していたらしい。


「このままでは埒が開かんな……。俺がここに来た目的はそこにいるエーデルワイスを推して、この国の王子アスタルの妃とするためだ!」

「えっ!?」

「私がアスタル王子のお妃さま!?」


 カルラとエーデルワイスは顔を見合わせ、驚いているが、カルラは俺を訝しんでエーデルワイスの耳元でなにか吹き込んでいた。


「あんなかわいく見えるけど、凶暴よ」

「凶暴?」

「ええ、この私をガチイキさせた初めてのオ・ト・コ……♡」

「サキュバスのカルラ姉さんを……」


 エーデルワイスはカルラから吹き込まれた言葉で顔を真っ赤にしている。娼館には似つかわしくないくらいウブな娘らしい。


 どうも愛からの話だと『フォーチュン・エンゲージ3』はお妃候補に寄親よりおやという後ろ盾がついて、お妃選を戦い抜いてゆくというシステムらしい。本来はその寄親をジークフリートがやることになっているようだが、あいつは相変わらずの行方知れず……。


 エーデルワイスは没落した貴族の娘で、借金を理由に娼館に売りつけられてしまったようだ。なので親の借金さえどうにかなれば身分としては申し分ない。


「ちょっと本気なの!?」

「わざわざ冗談でこんな話を持ってくるとでも思ったか?」


 ドスンと音を立て、俺は袋を二人のまえに置いて見せた。商業ギルドから手形と交換で下ろしてきた金貨が詰まっている。


「1万フォーネルある。これでもエーデルワイスの身受けには少ないか?」


 二人はぶるぶると首を振っていた。


 カルラは娼館主に話を通してくると部屋をあとにする。


 いい感じでエーデルワイスと二人きりになってしまったので俺が彼女に質問しようとすると……。


「どうして私なんかを……」

「それはあとで答えてやる。だがいまは俺の質問に答えろ。貴様には前世の記憶があるか?」


 俺は転生してから様々な経験を得て、編み出したことがある。それはこちらが転生者か、そうでないか、を悟られずに相手が転生者かどうか探る方法だった。


 ただ明確にこいつは転生者だって奴には出会ったことがない。愛たちを始めとする転移してきた者たちだけだ。


―――――――――あとがき――――――――――

某家電販売店に走り行ったんですが、その影すら拝めず。HGUCのZⅡが欲しかったんですが……通販も全滅、ならば模型屋と言いたいところなのですが、その模型屋すら近所にないという悲しい状況。

主役級とライバル機は買えても、マニア向けは転売ヤーの餌食になっちゃいますね(・_・、)

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