第86話 脳筋潜入
――――【愛目線】
マンガみたいにロープで身体をぐるぐる巻きにされて愛は……ええっと誰だっけ? 多分クラスメートだった女の子の前に呼び出されていた。
「ほらぁ……アレス。あたしの足だよ。変態のあんたのために足だけは一週間も洗わないでおいたんだから。ずっとストッキング履いてたから蒸れ蒸れ。早く脱がしてよ」
「失礼いたします、樹李亜さま」
アレスが玉座に座る女の子の足を手で取り、洗濯しておらず臭そうなストッキングを脱がした。すると玉座の間に酸っぱい臭いがしてきて、愛は鼻がムズムズしてきていますぐにでも鼻を摘まんで臭いを遮断したい気分。
麻で編まれたロープに命を吹き込み解きたくなったけど、まだだめ。おにぃであるブラッドがねーぽんを救出するまで待たなくちゃ。
れろ、れろ、ちゅぱちゅぱ、じゅるるる……。
女の子のくっさい足を躊躇なく舐め始めたアレス。そんなアレスの目を見ると蕩けていて、決して嫌々やっているわけではなさそう。
「あっ! いいっ! そこ、もっと舐めて」
「はひ、樹李亜ひゃま……」
「あは! ほんと敵に負けておめおめ逃げ帰ってくるあんたはあたしの足を舐める負け犬がお似合い」
舐めてもらっていない左足でアレスの頭をぐりぐりと押さえるように撫でいた。女の子は「はあ、はあ」と息を荒くして、達したみたいで満足した玉座に座る女の子は恍惚とした表情で愛たちを見下す。
おーきんが、足を組んでふんぞり返っている女の子に恐々話し掛ける。
「も、もういい? 横田……」
「ああ? 誰だ、てめえ?」
「大木だよ……」
「マジか!?」
女の子はおーきんを見て、目を丸くした。ブラッドの中の人であるおにぃが鍛えに鍛えたためにおーきんは別人かと思うほど痩せているんだから。
「あ、うん……捕まってたから……他の人から聞いてるでしょ?」
牢獄にずっと入れらていたという嘘も、今のおーきんの姿を見れば真実っぽく見える。
「あー、うん、なんかそんなこと言ってたような……つか、大木! てめえ横田じゃなくて〝さま〟をつけろ、樹李亜さまってなぁ!」
「あ、うん……」
クラス転移する前の教室の嫌~な雰囲気が王宮の玉座の間に広がってた。ツツミンは女の子の脇に跪いて、無言でずっと待機したままだし。コントローラーをいじれば、なんか動き出しそう。
ああ……この女の子は愛にこんな詰まらないモノ見せつけたかったんだ。
バカなプレイヤーって一定数いることは分かってたけど、ここまでおバカな子は初めてみた。愛の読みが甘かったことで、おにぃにねーぽん、フリージアちゃんとリリー、それにNPCの人たちをいっぱい巻き込んじゃった。
愛がしてしまったことの不始末はきちんと掃除しておかないとダメだよね。おにぃに叱られちゃうから。
いなくなる子の名前くらいは覚えておかないと思い、傍にいて女の子に恭しくするおーきんに囁く。
「ねえねえ、あれ……誰だっけ?」
「えっ!? 愛さま?」
私は隣にいたおーきんに訊ねると彼はびっくりしていたけど、答える前に目の前の女の子が目くじらを立てながら語気を荒げてる。
「横田だよ! 横田樹李亜! 岡田、てめえ、ワザとやってんだろ! ざけんな」
「ワザとじゃないよー。愛の頭はね、どうも不必要な情報は入らないようにできてるみたい。愛に覚えてもらえなくて傷ついてしまったなら、ごめんね」
「そのいかにも悪気がない、って態度がムカつくんだよ!」
「う~んと横山さんだっけ?」
「横田だよっ!」
「なんでもいいけど、悪気があろうがなかろうが人のモノを取っちゃダメって習わなかったの?」
「ああっ!?」
「分かんない? アレスはねーぽんの婚約者だったんだから。スキル使って寝取るなんて反則だよね。ううん、寝取ろうとしたけど魅力なんてゼロだからスキル使ったんだよね」
「てめえ……」
「よこよこはそうやってすぐに眉間に皺を寄せちゃう。肩凝っちゃわない? よこよこって名字なのに」
そうなのだ、アンメ○ツヨコヨコって覚えてあげると忘れないでおけると思う。愛の態度が気に食わなかったんだろうか、ア○メルツは眉間に皺どころかこめかみに無数の青筋を浮かべて言い放った。
「おい、おまえら! そこの三人の女を好きに犯せ! 泣こうが喚こうが穴という穴がぶっ潰れるまでヤっていいからな」
あーあ、アンメル○は知らないのかな?
人を呪わばアナル二つ、って言葉……。
「私に手を触れて良い男性はブラッドさまだけ。いやらしいあなた方に触れられるくらいなら私はここで自害いたします」
「とうせ自害するならブラッド殿下の傍が良かったんだけどなぁ……。お姉さまの傍なら……まあまだましかしら」
ああっ、あんなに仲の悪かったフリージアとリリーが仲良く心中する決意をするなんて!
ちょっと愛の想定を越えすぎてるくらい仲がいい。やっぱ、おにぃは愛のおにぃだけあってスゴい!!!
愛だけでこの場くらいなら切り抜けられそうなんだけど、ねーぽんが囚われてるから動きにくいなぁ。
予定ではもう少しでおにぃことブラッドが戻ってきてるんだけど!
ズゴーーーーーーン! ズゴーーーーーーン!
そのとき玉座の間の床に穴が開いたかと思ったら、穴から飛び出した物体は天井までも抜いて空で舞い上がってしまった。
そんなことできるのは唯一人!
天に昇ったおにぃが玉座の間に戻ってくると小脇にねーぽんを抱えていた。
「ひいいいーーーん! あ、愛ちゃん!!!」
「やっほー、ねーぽん。ただいまー」
―――――――――あとがき――――――――――
はい、お待ちかね♡ 明日はお仕置き分からせタイムの予定ですwww
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