第82話 再評価される脳筋王子

「い、いつの間にっ!?」

「しかも硬い魔封石でできているだと?」

「誰がこんなことを……」


 ジークフリート推しだった貴族たちが俺が修復した王都を見て、顎が外れるんじゃないかってくらい口を大きく開いて唖然としていた。


「これでジークンへの遷都の話はなしですよね?」

「もちろん我が家は王都復興に投資するボフゥ」


 ジークンというのはジークフリート推しの貴族たちが奴の名にちなみ建設していた街の名前だ。遷都が成れば彼らは莫大な利権を手に入れる手はずになっていることは明白。


 驚く貴族たちの肩に手を置いてゆくオモネール、コビウルは鼻息を荒くして、自慢気に胸を張っている。


「ククク……世の中、不思議なことが起こるものだな。まさか王都の建物が直っているとは……さすが五百年の歴史を誇るリーベン、守護妖精の成せる技か」


 流石にみんなの前で俺がやりました、なんてこと恥ずかしくて言えるわけがない。


 べ、別にみんなに誉められたくてやったんじゃないんだからねっ!


 だが俺の想いとは裏腹に貴族たちは口々に俺を批判し始める。


「白々しい……」

「こんな馬鹿げたことはブラッド殿下の仕業……あ、いやブラッド殿下がなされたに違いない!」

「ジークフリート殿下に嫉妬して、張りぼての都市を用意されるなど恥を知りなさい」


「「「「そうだ、そうだ!」」」」


 俺がやったとは一言も言っていない。オモネールやコビウルにもだ。にも関わらず、貴族たちはさも俺がなにか悪いことをしたかのように虚仮にしてくる。


 しかし、そこに横槍が入った。


「口を慎め! 愚か者どもが!」

「うむうむ、ブラッドさまの寛大な処置を忘れるとは畜生にも劣るボフゥ」


 普段は冷静沈着なオモネールは俺というかブラッドの口振りを真似たかのように貴族たちを一括し、コビウルも同様に貴族たちを煽り散らかす。


「ブラッドさまの願いが天に通じ、願いが叶えられたのだ。なぜその程度のことが分からないのか……」


「最早ブラッドさまは神に愛され奇跡を起こせる存在! ブラッドさまに逆らうことは神を冒涜することと同意ボフゥ」


 いや二人ともちょっと持ち上げ過ぎではー?


 はっきり言って神の寵愛なんて感じたことはない。せいぜいフリージアとリリー……それから愛の……いや妹に惚れられてるとか思ってしまうのは勘違いも甚だしくて流石にキモいな。


 オモネールとコビウルを論破できなかった貴族たちは話題をすり替えながら、俺を批判してくる。


「か、仮にブラッド殿下が神の寵愛を受けていたとしてもエルナー伯爵家の令嬢姉妹を手込めにするようないかがわしい行為を繰り返していれば、その恩寵も消え失せるに違いないっ!」

「「「「その通り!!!」」」」


「リーベンラシアはおろか大陸でも並ぶことのない聖女フリージア嬢とその妹リリー嬢を毎晩取っ替え引っ替え抱くなど、なんと羨ま……いかがわしいにもほどがある!」


 いま羨ましいって言いかけませんでした?


 俺の気のせい?


「それに二人も二人だ! ジークフリート殿下ではなく、なぜ二人ともがブラッド殿下の正妃ではなく妾になろうとするのだ。これはブラッド殿下が二人に媚薬でも盛っているのだ!」


 盛ってない、盛ってないから。


 むしろ近寄ってくるのは向こうからだから!


 とにかく俺はちゃんと二人に断ったんだよ、もう俺のところに来なくていいからって。


 それも一度や二度じゃない。


 何度も何度も説得した。


 けど二人が俺を手放そうとしてくれないんだよ……。


 分かる? 俺の気持ち。


 俺と一緒にいたら、ジークフリート派の貴族たちに二人まで批判されるのは分かってたから。


 フリージアとリリーが俺とセフレな関係で良いって同意しててもさ、やっぱり他人が聞いたらギョッとされるし、ふしだらな関係っていけないと思いますみたいにドン引きされちゃうのよ。


 でも二人にジークフリートとか他のスパダリのところに嫁いでくれない? ってそれとなくピロートークで促しても、絶対やだ、ブラッドさまと離れたくないって毎回返されるの。


 どうしたらいいと思う?


「止めてください!」

「さっきから黙って聞いていたら、私たちのブラッド殿下に酷いこと言ってくれるじゃないの!」


 ムサい加齢臭がしてきそうな貴族たちの前にファブリーズの噴霧ノズルを取り去り、ボトルの口から頭にぶっかけるような清々しい声が響いていた。彼女たちは俺を擁護しようと貴族たちに説く。


「私はブラッドさまの子種が欲しくて彼を犯し、童貞を奪った罪深い聖女です」


「私もお姉さまに負けたくない一心で……ブラッド殿下にむ、む、む、無理をお願いして……その抱いてもらったのよ! えっと……もちろん負けたくないっていうのはブラッド殿下をどっちが愛しているかっていうことなんだからっ! もうなに言わせるのよっ!」


 俺の行動が迷惑系You Tuberばりに炎上、貴族たちからの猛批判に晒されていると更なる可燃物質が投入されようとしていた……。


―――――――――あとがき――――――――――

30MSのユフィアのキャラデザが今更ながらBUNBUN先生だと知りました。バンダイ……SAOのイラストレーターを連れて来るとか本気過ぎる(←当たり前)

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