第81話 浮気彼女の受難【ざまぁ】
――――【クリスタ目線】
「ここは?」
拾ってきたイケおじが目を覚ました。
「私の家よ」
と言っても……。
自宅についての想いを馳せようと思っているとイケおじは突然語り始めた。
「余……私は大きな間違いを犯してしまった……」
大丈夫、こんなこともあろうかと私にはルルちゃんマニュアルがすっぽり頭の中にインプット済み。
目の前のイケおじがこの国の王さまだってことも把握してるしね。あくまで知らないフリして、若者からウザがられてるおじの話を聞いてあげれば、即落ちってものよ!
「いきなりなによ?」
「私には二人の息子がいる。だが教育を見誤ってしまったようだ」
キタっ!
王さまの息子って言ったら、ブラッド王子とジークフリート王子よね。いやぁん、王さまったら本当に気が早いわよ~!
私を二人の王子さまに紹介したいだなんて!
二人の王子さまが私を巡って、争うの。
『ククク、ジークフリート! 貴様にクリスタは渡さん』
『なにを言ってるんだ! クリスタはボクがもらう』
『や、止めて! 私を巡って争うのは……』
ああっ、イケメン王子の二人に求められる私って、控え目に言って魅力的過ぎない?
ブラッドはお妃さま候補の姉妹と婚約破棄しちゃった、って聞いてる。私の献身ぶりに感心した王さまは、イケメン王子の妃に私を推薦して……私はとてもしあわせな結婚生活を送るの!
さあ早く、早くイケメン王子に私を紹介して!
「そうか……見つけたぞ」
私が期待に胸を膨らませていると、なぜかイケおじは窓を開け、外に向かって大きな声を出し始めた。
「ソンタック、間違いない。この者が我が国の民草を恐怖に陥れている誘惑の魔女だ」
「畏まりまりー! すぐに捕らえまするー」
えっ!?
魔女ってなによ! 捕らえる? なんで私が?
イケおじが窓の外にいた誰かに話し掛けて、なにも悪いことをしていない私を逮捕しようとしていた。
「私はなにも悪いことなんてしていないわ! 家の周りで倒れてた人のお財布からほんのちょっとお金を借りたりしたけど、返すつもりだったんだから! あとお金に困って、美人局みたいなことはやったけど私はなにも悪くないの! この国の政治がいけないのよっ!」
あっ! しまったと思ったときにはもう遅かった。前世の感覚で政治批判とかしちゃったけど、私の目の前いるのは国王なのだ。
「とにかく私は悪くないからっ!」
ああっ、また今日からホームレスだ……。
誰の家か知らない。人のいなくなった家を勝手に自分の物にしてたけど、もう逃げなきゃなんない。
「待てーっ!」
ドアを開けると、さっき王さまが窓辺で話していた赤髪の男がいる。私は彼を振り切り勝手知ったる森を抜けていた。「向こうに逃げたぞ!」とこちらの姿は見えていないはずなのに的確に私を追い詰めてくる。
デデーデン♪ デンデンデン♪
私の頭の中に流れてくるおどろおどろしいメロディ。走って逃げた先はよくサスペンスドラマに出てくる東尋坊のような崖!
切り立った高い岩場が落ちたら確実にヤバそうな雰囲気をぷんぷんさせている。でも私を捕まえようと国王とその配下の赤髪の男が迫ろうとしていた。じりじりと追い詰められた私は気づくと岩場の先端に踵を乗せている。
足が掛かったときに、ぱらぱらと小石が崖下に落ちっていった。一歩でも踏み外したら、私も小石と同じように崖下に真っ逆さまに落ちてしまうんだろう。
し、死にたくない!
でも、彼らに捕まったら……。
「来ないで! 来たら飛び込んでやるんだから!」
「早まるな。崖から落ちれば助かる見込みは薄い」
「いいえ! どうせ私に口では言えないようなことをして、散々弄んだ挙げ句、殺すつもりなんでしょ! あんたたちのやり口なんて、ぜんぶ分かってるんだから!」
「死刑? なんのことだ? 精々、鞭打ち程度の罪で許される。余を助けてくれた心根にも配慮し、回数は減すよう伝えておく」
「えっ!?」
鞭打ち!? 痛いのは嫌だけど、命が助かるなら……。そう思い、私を追い詰めていた王さまの下に歩み寄ろうとしたときだった。
「危なーいっ!」
片足が掛かっていた足場が崩れ、私はバランスを崩した。赤髪の男が私の手を取ろうと身を乗り出してくる。
でも指先が軽く触れただけで……私の身体は崖下へ舞っていた。
「それを早く言ってよぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
そ、そんなぁぁぁーーーっ!
わ、私のしあわせな結婚生活がぁぁぁーーーっ!
―――――――――あとがき――――――――――
原稿に改稿にと時間を割いてゆくと積みプラ、積み本とテトリスの如く溜まっていかんですが……。でも読者の皆さまに読んでもらって作者はうれしいので気にせず書いて行くよっ! ということで面白かったら、フォロー、ご評価いただけますと筆がススムくんなのでお願いいたします。
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