第74話 現地人の現地人よる現地人のためのお仕置タイムき

 俺は瓦礫すら吹き飛んだ王都跡を突き進む。


「早くコビウルたちの断頭台のロープの前につけ!」


 俺の歩みを見たジークフリートが爆風で吹き飛んだ兵士たちに発破を掛けているが、充分な防御スキルを持たない一般兵士たちがそう易々と起き上がれるはずもなかった。


 どれくらい離れているだろうか?


 はっきりとは分からなかったが、スパイ衛星の如く上空からつぶさに状況を把握していた俺は伝統派空手のように拳を脇につけ、空突きしてみた。


 ――――ごわっ!


 ――――あぶっ!


 ――――ぎゃっ!


 ナイフや手斧を持った兵士たちがよろよろと断頭台の刃を支えているロープへ差し掛かろうとしたとき、兵士たちが声を上げて吹っ飛んでゆく。まるで輪ゴムを使った割り箸銃で撃たれた紙の的のように……。


 俺の放った空突きの衝撃波がそうさせていた。


 断頭台に近づく兵士をすべて片付けたあと、断頭台の大きな刃を空突きの衝撃波で打ち抜く。兵士たちは死なないようにスローモーで放ったが、鋼でできた刃には少し気合いを入れた。


 撃たれた刃は粉々に砕け散って、鉄粉となりコビウルたちの頭に降り注いでいる。続いて首を押さえていた木枠を破壊するとコビウルたちが水浴びしたモフモフのように首を激しく振って鉄粉を払っていた。


 コビウルの部下がコビウルの両脇に頭を差し入れ、彼を支えていた。そして彼らは俺を見て、深々と頭を下げる。俺というかブラッドは返礼とばかりに「うむ」と頷いていた。


 こちらによろよろと向かってくるコビウルたち。


 弓矢や魔法でスナイパーのようにコビウルたちを射抜こうと狙う者を見つけては、空突きで排除していると意気消沈のジークフリート陣営だったが一人だけ身体で大の字を描いて、息巻く男がいた。


「ははっ、ははっ……つ、つまらねぇ。ぜんぶトリックなんだろ! そうだ、現地人がんなつええわけがねえんだ!!!」


 はい、出ましたトリック。


 信じたくないことは大概トリックで片付けてそう……。


 随分と若い男だった。


 ああ、俺も転生したから歳は同じくらいなのか……。


「一つ訊きたい。コビウルたちをやったのは貴様か?」

「そうだよ! おれさまがやってやった。マジ雑魚過ぎて相手になんなかったぜ」


 外国人が「フー」と呆れたみたいに両の手ひらを上に向けて、俺を挑発する若い男。


「貴様、一応名前だけは訊いておいてやる」

「はんっ、てめえみたいな詐欺ってる雑魚に名乗る名前なんてねえよ!」


「そうか、せっかく俺が名無しじゃ哀れだと思い、

貴様の墓に刻む墓碑銘を訊ねてやったんだがなぁ……」

「ほざけっ!!!」


 俺と若い男がやり合っていると余計な邪魔が入る。


「そいつは勇者の井川って言うんだ! 井川春樹だ。いくらブラッドでも勇者春樹は倒せまい!!! いまからボクに王位継承権を譲り、臣下の礼を取るなら許してやっても構わないぞ!」


 訊いてもいないのにジークフリートはベラベラと召喚勇者の情報をバラしてしまう。俺が呪術師で真名を知っただけで呪えたりしたら、どうするんだろう?


 まあジークフリートだから仕方ないか……。


 とりあえずジークフリート、おまえの渾名はこれからハルキストだ。


「クソがっ! 余計なこと、喋ってんじゃねえぞ! 馬鹿王子がっ」

「ボクは馬鹿じゃない! 馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ! さっきの言葉訂正しろーっ」


「ジーク、ここは井川に任せよう。私たちは他にやることがあるだろう」

「アレス! ここはリーベンラシアだ。ボクに指揮権があるんだよ。キミは黙っててもらおう」


 ちょっと……ほんのちょっとだが召喚されてきた者たちに同情を覚えた。それと同時にゴミを引き取ってもらって、ありがとうという感謝もだ。


「先ほど貴様は聞き捨てならない言葉を吐いたな」

「なんだってんだよ!」

「現地人は弱いとな。それは間違いだ。貴様たちに人質を取られたためにやられたのだ。それさえなければ俺の臣下たちが負けるわけがない」


「ふざけたこと、言ってんじゃねえよっ!!! 勝ちゃいいんだよ、こんなまともな法律もねえところではよぉぉぉ!!!」

「法律か……では俺がこの世界の法律……いや理になってやろう」


 剣の束に手を掛けた勇者ハルキ。腰を落として、まるで居合いでもやるかのようだった。



 ゴッ!!!



 俺は関係なく打ち下ろし気味に殴りつける。ハルキは高所からトマトを落としたみたいにべしゃっと手足を広げて倒れていた。


「立て。いまのはほんの〇.一パーセントの力に過ぎない」


 よろよろと立ち上がったハルキは俺を非難してくる。


「はあ、はあ、てめえ卑怯だぞ! おれはまだ戦うって言ってねえ!」

「は?」


 まさかゴングや始めの合図がなければ戦えない奴なのか!?


「では貴様の好きなタイミングで戦いの合図をしろ」





 ハルキはじりじりとにじり寄って、剣は届くが俺の手が届かない距離にまで詰めてくる。


「今だっ!!!」


 ハルキは剣身がほぼ全て出た時点で戦闘開始の合図を掛けた。剥き出しの刃が俺の胴体に触れようとしていたが……。



「ごふぅ」



 ハルキの身体はくの字に折れ曲ったあと、腹を抱えて悶絶していた。


「どちらにせよ、結果は変わらなかったな」

「あ、足を使うなら……早く……言っておけよ、この卑怯者がぁっ」


 流石Z世代!


 いやZ世代の中でも、こいつが顕著におかしいだけだと思いたい。


 こいつはユーザー登録をする際に長ったらしい契約内容を読み飛ばすくせして、あとから問題があったときに「そんなの知んねえよ!」と文句を垂れるタイプだ、たぶんだけど……。


 蹴る前には、「蹴りが飛んできます」とファールボールみたいに案内すべきだろうか? いやその必要ない。


 どうせ自分の都合の良い結果にならなければ、納得しないのだろうから……。


「ではお互いに一撃ずつくれてやるというのはどうだ? それならフェアだろ?」

「おれが先行ならOKだ!!!」

「分かった、それで……」


 カーン!


「はっはっはっ! 油断禁物だって! これも戦術って奴だよ、てめえの馬鹿さ加減を恨むなよ、って……」


 俺が言い終わる前にハルキは剣を抜いて、俺の首へ斬りつけてきた。そういう奴だろうと思っていたが、その通りのクソ野郎で逆に安心した。


 ハルキは俺に斬りつけた剣を見て、わなわなと震えていた。俺に斬りつけた首回りだけΩ状になって湾曲していたからだ。


「なかなか剣をそこまで曲げる力はあるらしいな。俺は世界を破滅させる魔獣を狩らなければならない。その貴様をその足掛かりしてやる。今度は俺の番だよな?」


 俺が勇者ハルキを見ると顔が見る見る青ざめていった。


―――――――――あとがき――――――――――

水着ロザンナ、水着サクラ来ちゃ! えちえち水着の射撃姿勢には前のめりになること間違なしw

規制? なんじゃそれ? みたいに攻めるメガニケ運営を見習い、ほどほどに攻めたい作者です。

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