第73話 熱々我慢大会

――――以前のことだ。


 俺は自身の耐久力がいかほどの物かテストしていた。オモネールたちに協力してもらおうと思ったのだが……。


「ブラッドさま……ほ、本当によろしいのですか?」

「殿下をー全力でー、ぶっ叩くなんてー不敬でできませんぞー!」

「ボフゥ、私も皆に同意ボフゥ」


「うるさいっ! 俺がやれと言ってるんだ! 貴様たち程度の攻撃で死ぬとでも思っているのか、仮に死んだとしても貴様たちを恨むわけがなかろう」


 俺を攻撃するのに二の足を踏むオモネールたちに無茶苦茶な命令を出していた。


 そりゃそうだ。自分の主君に向かって攻撃していいと言われても、平気で攻撃できる者の方が少ないだろう。ましてや三人は俺のことを曲がりなりにも慕ってくれているようだったし。


 それに酒の席で上司の一之瀬に無礼講と言われ、日頃の恨みからか本当に頭を叩くという無礼を働いてしまった同僚は翌日左遷されていた。


 無礼講という言葉ほど信じられない物はないのである。


「貴様たち……ここで俺の臣下を辞めるか、攻撃して主君の命令を守った忠臣として歴史に名を残すか、選択しろ!」


 俺ならこんな上司に仕えるのはゴメンだ! と思いつつも一之瀬も大概だったな、と前世の記憶が蘇ってくる。


 三人は「どうする?」と困ったような顔で話し合い、数分ののち結論を出したようだった。


「分かりました。ブラッドさまがそこまで仰るなら……ですが万が一のことがあれば我らブラッドさまの後を追う覚悟です」


 オモネールが返答するとソンタックとコビウルが深く頷く。


「後は追わんでいい。とにかく今、俺を殺す気でやれ!」


 三人は落涙しながら……俺も三人の心意気に胸を打たれて、半泣き状態で耐久力試験が始まった。


 まあフリージアたちと違って、あっちが湿っぽくならない方がマシかな?


 いやマシじゃないか……。


 馬鹿なことを考えている間にもソンタックが大剣を抜き、軽く跳躍しながら俺に斬りかかる。


「ソンタック! 貴様の本気の斬撃というのはそんなものなのか! 今日から本気だせ!」

「出しておりますー! 殿下の外皮の耐久力が化物なのですー! 


 タイミング的に明らかに首を跳ねられたのに、ソンタックは遠慮して俺の肩口から剣を薙いでいた。当たった剣は俺の肩に弾かれ、強振して空振りしたバッターの如くソンタックごとクルクル回ってたけど……。


「リーベンラシアの鍛冶棟梁マイスターたちが鍛え上げたマイスターソードがいとも簡単に弾かれるなんて!」


「オモネール殿、ここは我らが力を合わせ、轟炎で殿下の外皮を柔らかくするしかありませんぞ、ボフゥ」

「確かに……」

 

すべてを無に帰す轟火アトムフランメ


 二人は詠唱を重ね、俺に向かって同時に手を翳す。すると二人の目の前にリーベンラシア城よりも大きな火球が現れ、ソンタックがマイスターシールドで火球の熱で二人が焼け死なないよう防いでいた。


 その巨大な火球が俺に迫ってくる。


 本当のことを言えば……。


 片手で振り払うことは可能だ。


 だが三人の努力と想いを無に帰すような真似はしたくなかったので甘んじて、巨大火球を受け止めることにした。


 小さな太陽とも称されるアトムフランメだ。


 俺に衝突する前から吹き出す熱線で服は焼け焦げる。すでに全裸になってしまっているが、サウナどころか、政務で疲れ果てたあとに、ぬるま湯に浸かっているような心地良さがある。


 いやまだ食らっていない。


「うおおぉぉぉーーー!!!」


 食らえば俺は大火傷どころか消し飛ぶかもしれない。そう思うと炎に向かってダッシュしていた。


「ブラッドさまっ、なにを!?」

「よ、避けてーーー!!!」

「そんな真正面からボフゥ!」


 やらせておいてなんだが、そういう問題でもない気がした。


 荒野とはいえ、食らって威力を軽減しなければ国民や土地に被害が出る。ついに轟火は俺の皮膚に触れるが煙すら出ず、また焼け爛れることもなく炎は鎮火していった。


 三十分ほど魔法の炎は俺を焼こうとしていたみたいだが、結局俺を全裸にしただけで、はっきり言って効果はまったくない。


 俺より前の光景は土や石がどろどろに溶け、一度マグマのように真っ赤に輝いていたが冷えて固まり、黒曜石ができているようだった。


「貴様たちの連携……なかなか良かったぞ、これからも励めよ」

「「「ブラッドさまーーーっ!!!」」」


 三人は号泣していた。


 俺が無事だったことがうれしいのか、それとも俺に誉められたことなのか、はたまた最大級の魔法が効かなかったことが悲しいのか、正直分からない。


 全裸で立ち去る俺の姿をただただ見守っていた。



 そんなこんながありスクワットで鍛えた脚力でジャンプし、俺はロケットもなく、成層圏を越え、宇宙空間へとたどり着いていた。


 鍛えた上げた眼筋の一つ、毛様体筋を収縮させると宇宙空間からでさえ、リーベンラシア王宮で起こっていることがスパイ衛星以上の精度で手に取るように見える!


 コビウルと彼に付き従っていた兵士たちがジークフリートと知らない者たちの手により断頭台に掛けられいる。しかもコビウルたちの身体は相当痛めつけられたのだろう、紫色の痣と瘤だらけ……。


 俺は異世界の惑星の重力に従い、そのまま城門へと一直線に降下してゆく。空気の層との摩擦熱で俺の服はまた焼け落ちるが熱くはない。



 ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!



 加速のついた俺は隕石のようになり、城門だけでなく市街地すら破壊していた。辛うじて王宮の壁が残っていたが……。


「貴様たち! 俺が引き継ぐべき美しいリーベンラシアの王都を破壊するとは……絶対に許さんぞ!!!」


 えっと、確かに俺が破壊するまえに王都は壊れてたんだけど、言っても三分の一も壊れてなかった。


 多分ブラッドは王都を破壊した責任をすべてジークフリートに擦り付けるつもりなんだろう。俺が大声で叫ぶとジークフリートたちはポカンと口を開けたままでいた。


―――――――――――――――――――――――

今日(7/20)はルナマリアとデュエルブリッツの発売日なのですよ! 硬派な作者はルナマリアに一瞥もくれず購入しましたよ。



ルナマリアを!



あとからデュエルブリッツも発売だと知った……。バンダイさん、お願いです。パイスーだけじゃなくミススカ赤服も出してくださいぃぃぃぃ!!!

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