第66話 すっぽ抜け

――――【横田目線】


「ほら、アレス。あたしの靴をお舐め」

「はい、樹李亜さま」


 アレスに声を掛けると玉座に座るあたしの下に四つん這いで駆け寄ってくる。目の前で脚を組んでやるとズボンが膨れてるんだから、嫌らしいったらありゃしない。


 赤いハイヒールのつま先でアレスのおでこをつつくとアレスはハイヒールのつま先と踵を持ち、靴の甲をペロペロと舐め始めた。


「あはははは! 甲だけじゃなくて裏もしっかり舐めてよね」

「はひ、樹李亜ひゃま……」


 玉座の間にはもう一人お客を呼んでいた。根本だ。根本はアレスが無心であたしの靴を舐める光景を目の当たりにして、泣きながら手を伸ばしている。


「アレス、そんなことしないで!」


 根本の首には鉄の輪っかと鎖をつけられていて、まるで奴隷みたい。


「根本、かわいいじゃん! もっと泣いたら、大好きなアレスも答えてくれるかもね」

「こんなことして……絶対に許されないよ!」

「別に根本に許してもらわなくたって構わないって! ていうかあんたは自分の心配でもしたら?」


 お姫さまか、聖女さまだか分かんないけど、あたしを高いところから見下ろした罰よ。あんたにあたしを見下ろす権利なんてないの。


「あんたは人権ない人間なんだからさ」


 根本に立場ってもんを分からせていたら……。


「お~い、面白いもん見つけたぜ!」


 高橋が子どもみたいにはしゃぎなから、あたしたちに呼び掛けてきた。



 高橋か庭園まで来いと見に行くと断頭台ギロチンがセットされてあった。


「やっぱ革命っつたら断頭台だろ」


 馬鹿の高橋ですら知ってることに驚いた。


「おらぁぁ!!! てめえら死にたくなかったら、さっさとそいつを断頭台に掛けろ!」


 あたしに屈伏させられた恨みを弱い者にぶつけるみたいにどすどす地団駄を踏みながら兵士に命令していた。


「「「陛下ぁぁぁ!!!」」」

「泣くな! 我の命で国民が助かるなら、この命、いくらでも差し出そう!」


 兵士たちが涙を流しながら、国王だった男を断頭台に掛け、木枠のロックをする。


「ふん、格好つけんなって。どうせ、あんたらはさ、あたしたちを扱き使って用済みになったら、殺すつもりだったんでしょ? だったらぁ、こっちが先にやってやんよ」


 井川に引きずられるようにして来た根本が真っ青な顔してあたしに訴えかけてくるけど、井川に鎖を引かれて、一歩も動けない。


「横田さん! これはそんな物語じゃないから! そんなことしたら、取り返しのつかないことになっちゃう!」

「あんたはキモオタどもに犯されたくなかったら黙ってな!」


 あたしが手を振り下ろすと大木が兵士のおしりを蹴り、ロープを切るよう促していた……。



――――【ブラッド目線】(横田たちがブリューナク王国を支配後)


 戦士ねえ……。


 チート持ちって聞いて、凄いのかと内心ビビってたんだが、拍子抜けしてしまう。いやいや油断は禁物だ。彼はまだ本気だしてないかもしれない。


「抜けねえ!!! なんて馬鹿力してやがるんだよ!!! 離せ、離せよ! 離さねえとぶっ殺すぞ、ゴラァァァ!!!」


 俺は指二本で高橋の両手剣ツヴァイハンダーを挟んでいた。


「ブラッドさま……そんな今夜も硬くて逞しくてご立派なモノを挟んで欲しいなんて……頑張ります」


 フリージアが馬車から顔を出し、俺に手を振って戦況を見守っていた。


 俺……そんなアピールしたかに? 違った、したかな?


 勘違いも甚だしいフリージアに呆れていると王都の方からぞろぞろと人が集まり出す。


「おう! おまえらいいとこに来た! この馬鹿力をなんとか足留めしておいてくれ。足留めできたら、おれが片付けてやる」


 集まり出した者たちの顔ぶれを見ると、ああ、どっかで見たことがある顔がちらほらと。


「ブラッド殿下、いやブラッド! リーベンラシア王国はビスマルク八世が退位されたことにより、ジークフリート殿下が即位されることになる。おまえはお払い箱だ!」


 俺のことを良く思わない貴族たちが混乱に乗じて、監禁されていたジークフリートを解放して担ぎ上げたらしい。なるほど確かに諸侯や兵を集めたことが仇になったようだ。


「ブラッド殿下!」


 高橋と戯れている間に俺というかフリージアか助けた騎士が追いついてきた。


「貴様は避難民を安全に逃がすことを優先しろ。だがその中に復讐を願う者がいれば俺の下へ来るよう伝えるのだ」

「御意!」


 騎士は逃げゆく人々を見事に誘導していた。このつまらない混乱が収束したら、名前を訊いて爵位を与えてあげないと!


 その席はたくさん空きそうだし。


「ククク……ちょうどいい! 俺はこの機会に造反者を炙り出してやるつもりだったのだ! まとめて掛かってくるがいい」


 俺はうんうん唸っている馬鹿橋、じゃなかった高橋の両手剣を離した。するとおかしなことが起こる。


「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!」


 すぽんと俺の指から抜けた高橋は情けない声を出したかと思ったら、振り上げて引き抜こうとしていたんだろう、彼は剣が後ろにそっくり返って猛烈な縦回転しながら、砂煙をもうもうと上げながら裏切り者たちに向かっていった。


 物凄い勢いで転がってゆくところを観るに案外力は強かったのかもしれない。


 まるでバグだな。


 俺はアマプラで視聴したくっさい花の形をした敵MAが出てくるガンダムの映画のことを思い出してしまっていた。


―――――――――あとがき――――――――――

作者、アイマスのこと全然知らないのに30MSの櫻木真乃ちゃんと大崎甘奈ちゃんを作ったですよ。ヤバいですね、この美プラ。まさにバンダイの狂気ですよ、このかわいさは!!!


※明日の更新ですがお食事時にそぐわない表現があるため、2時間早めまして10時02分に更新予定です。何卒ご了承願います。

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