第65話 あげまんが女王

――――【横田目線】(ブリューナク王国が宣戦布告前)


 そこそこのイケメンだったけど、真面目なのが災いして童貞だった堤。最初はへこへことしか腰を動かせなかったけど、あたしがリードしてやったら、ちゃんとまともになってて笑えた。


「もしかしたらオレは人生の半分は損していたのかもしれない……」

「もしかしなくても損してたね、あんたは」


 ベッドの縁に座り深刻に考える堤に背を向け、ブラのホック留める。ショーツを履こうとしたときだった。


「オレはおまえのためなら、なんでもしたいと思う」


 堤がびっくりするような言葉を吐いたのだ。意外としか言い様がない。大概の男は寝たら、俺の女扱いしてくるというのに……。


 もしかしたらと思い、ステータスを確認すると【傀儡 堤】って出てる。


「あははははっ! イケメン食って、操れるとか最高じゃない。んじゃ、根本に入れあげてる王子さまを寝取ってやろうじゃないの!」



――――王宮内応接室。


 それからはあたしはやりたい放題だった。あたしたちに与えられた応接室は実質ミーティングルームと化していて、そこに反抗的なキモオタどもを呼び出して折檻していた。


「おらぁっ!」

「やめで……いがわ……ぐん……いうごどぎぐがらぁぁ……」


 大木は勇者の井川に胸ぐらを掴まれ、あたしの前に突き出される。井川に殴られたらしく顔をパンパンに腫らしていた。あ、いや元々か……。


 ちなみに……堤とタイマン張った井川と高橋は結局ボコられ、すでにあたしの手下だ。


 大木は頭を床にこすりつけられ、井川に土下座させられている。


「大木とおまえらキモヲタはあたしに逆らったら、堤がただじゃおかないよ。堤に氷漬けやら、炎で蒸し焼きにされんのが嫌ならあたしに服従しな。あたしに従えば、それなりにいい思いはさせてやっから」

「はびぃぃぃぃ……」


 それにしてもあたしの傍に執事みたいに仕える堤にはウケる。


 童貞捨てたらパワーアップとか!


「オレは横田のおかげで【大賢者】になれたらしい……」


 この調子ならあたしがこの国、いいえこの世界で好き放題できるのも時間の問題って奴ね。


 それじゃ手始めにアレスを根本から寝取ってやりゃあ……。



 そのままの勢いに任せて、クラスメート全員でアレスの部屋になだれ込んだ。


「ホント、無駄なことして。あんたたち雑魚が束になっても勝てっこないのに」


 アレスの部屋の周りには、あたしたちに抵抗した兵士や従者が転がってる。ドアは中から鍵が掛けられてるのか開かなかったけど、堤が爆炎魔法で吹き飛ばしぽっかり大きな穴が開いてる。


 部屋ん中に入るとアレスが根本を後ろに下がらせ、あたしたちには指一本触れさせないって感じで守ってた。


「くっさ! おいおい、王子さまよぉ、おまえの目は腐ってんのかよ。いやいや根本にぞっこんとか、目じゃなくて頭もいかれてたか?」


「私のことを悪く言うなら、ともかく南美のことを悪く言う者は何人たりとも許さない。いますぐここで南美に非礼を詫びるなら、一ヶ月の投獄と百叩きの刑で許そう」


「あははは! あたしが根本に謝るだって? 冗談きっつ!」


 根本の奴、ここに来る前みたいに後ろでぶるぶる震えながら、「なんで? どうして?」って呟いてやがった。


 未だにあたしが孤立してるとか思ってやがるんだろうな。


 バッカじゃないの?


 おまえがカーストを逆転させたようにあたしもひっくり返せるんだよ、他人の力じゃなくてあたし自身の力でな!


 あたしが根本に謝らないでいるとアレスが剣を抜いて、宣言した。


「謝るつもりはないと……。ではキミたちをブリューナク王国から追放する!」

「はあ? 追放されんのはあんたの方よ! みんな、やっちゃって!」

「分かった」


 堤がロボットみたいに無機質な返事をするとあたしの子分になった男子たちがアレスに向かって襲い掛かっていった。


「南美、私の後ろに下がっていてくれ。キミは私か必ず守る」



 まあ、多勢に無勢って奴でいくら王子つってもあたしたち転移してきたチート持ちに叶うわけなくて、一瞬で捕らえられちゃった!



 あたしは鉄格子のある牢屋の中にいる根本に見せつけた。


「あはははは! ほら、おまえの大好きなアレスはあたしの虜になっちゃった!」


 雑魚いけど顔だけはイケメンだから根本の目の前で寝取ってやったら、泣いてやんの。元々不釣り合いなんだよ、おまえには!


「せっかくだから、あんたの彼氏寝取り記念に教えてあげる。あたしがあんたを嫌う理由を」

「私が……嫌われる理由……?」


「ああ、そうだよ。あんたって、泣けばとうにかなるって思ってる。はっきり言って、あたしそういう女が一番嫌いなの。見てるだけ、そばにいるだけでムカつくから! 自分で問題を何一つ解決しようとしない。誰かの陰に隠れて、こそこそしてるだけ」


「そんなこと……な……」

「岡田もそんなあんたの態度が嫌んなって、出て行ったんじゃないの? あははは、どう親友に裏切られた気持ちは? それとも根本とは絶交とか言ってもらった方が良かった?」


「ううっ……」

「ほら、すぐ泣く。あんたみたいな人間はさ、異世界に来ても無駄だったんだよ。だって役立たずはどこに行っても役立たずなんだからさ。諦めて、肉便器にでもなった方が人の役に立つんじゃない?」


 キモオタどもの相手には根本みたいなのがお似合い。まあその前に岡田が残ってるから、そのあとだけど!


 いまなら確実に岡田を殺れる!


―――――――――あとがき――――――――――

いじめ、ダメ、絶対!

やはりアレスをねーぽんから寝取った横田には厳しいお仕置きが必要です、という読者さまはフォロー、ご評価をお願い申し上げます。

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