第56話 クズ女の悪だくみ

――――【ねーぽん目線】


 夢のような舞踏会を迎えられたことに感動を覚えてしまった。アレスから見つめられるだけで、恥ずかしくてドキドキしちゃう。


 私をいじめていた横田さんたちから守ってくれたアレス。愛ちゃんも私を守ってくれたけど、女の子から守られるのと男の子から守られるのでは、やっぱり違うんだな、と実感した。


「聖女さま、お茶が入りました。冷めないうちにどえぞ」

「あまり気をつかわなくて、大丈夫ですよ。家ではぞんざいな扱いされてましたから……」 


 メイドさんは私の言葉にきょとんとした表情を見せてる。意味が分からなかったのかな?


 金髪に蒼い目をしたメイドさん。それこそ映画に出てくる女優さんかと見違えてしまいそうなくらい美しい人なのにメイドをしていることが驚きだった。


 それに比べて私なんて……。


「あの……私と友だちになってくれませんか?」

「私と聖女さまがですか?」

「はい……ダメですか?」

「そんな滅相もございません! 私みたいなメイドでも聖女さまとお友だちだなんて……」


「私も元いた世界では底辺……あ、えっと……庶民と変わりませんでしたから大丈夫です」

「そうだったのですね。聖女さまがよろしければ私は構いませんよ。私はハンナと申します、以後お見知りおきを」


「はい! ハンナさん」


 ハンナさんは私より三つ年上で優しいお姉さんって感じがした。



 アレスが臣下の人たちに命じて、私にお姫さまが暮らすような部屋を用意してくれたの。そこには常にメイドさんがいて、私を気にかけてくれる。


 家じゃお父さんもお母さんも私のことなんてちっとも気にかけてくれなかったのに、異世界の人たちはみんな私のことを大切にしてくれている。それもこれも愛ちゃんのおかげだ。


 愛ちゃんは大事な大事なお兄さんを亡くして、自棄になったんじゃないかと思ったけど、まったくそんなことなくて本当に心の強い子なんだって思った。


 私もちょっとでも愛ちゃんみたく強い心を持てるように頑張りたいと思う。


「あの……ごめんなさい」

「はい、聖女さま。どうかなされましたか?」


 私にできることなんてほとんどないけど、趣味を生かして、彼になにかプレゼントしたいと思った。


「羊毛ってありますか?」

「はい、ございますよ。すぐに取ってきますね」


 ハンナさんが持ってきてくれた羊毛で私は作業を始めた。



――――【横田目線】


 ――――いいぞ、大木!


 ――――けしからん、もっとやれ!


 ヲタ男子どもに取り囲まれ、あたしのブラの前中心真ん中とショーツの紐が溶かされようとしていたときだった。ここが外れればあたしの大事なとこはヲタ男子どもの晒し者になってしまう!


「や、止めてくれ……もうおまえらをいじめたりしないから……」

「はあ? いまさら謝ってももう遅いって! ああ~、ギャルの樹李亜ちゃんの裸って、どんな色形してるんだろうね~、楽しみ!」


 こっちがちゃんと謝ってんのに大木はヲタ男子どもに持ち上げられて、あたしの言葉に聞く耳を持たない……。


 紐と前中心が溶け、あたしが生き恥を晒してしまうときだった。


 眼鏡と量産型主人公な髪型、冴えてるか冴えてないかで言えば……ヲタ男子どもよりは百倍マシって感じ。


 まああたしからしたらギリ付き合ってもいいかなぁ、ってくらいの見た目。ああ、もちろん向こうから土下座して頼まれたら、だけど。


「もうそれくらいでいいだろ。横田も反省している」

「なんだよ、堤くんは見たくないのか? 樹李亜ちゃんのヌードを!」


「見たいか見たくないか、で言えば……見たい。だが無理やりというのは外道のやることだろ」

「なに正義の味方ぶってんだよ。委員長なのに根本のことはスルーしてたくせに!」


 堤は大木に痛いところを突かれたのか眼鏡のブリッジに触れ、位置を戻した。大木の問いに答えることなく話をぶった切るように言い放つ。


「おい、大木。いい気になるなよ。たかだかAランクになったからと言って、なんでもやっていいわけじゃない」


「堤くん……いや、堤! ぼくはもう底辺なんかじゃないっ! いくら堤が勉強ができたからって、異世界で強いわけじゃないからなっ! こっちではぼくの方が有利に立ち回れる」


「大した自信だな。分かった。ならオレとひとデュエル頼もうか」

「望むところだ!」


 なんか分かんないけど岡田の次に勉強のできた堤がしゃしゃり出てきて、大木と対決するっぽい。


「いくらカースト上位だからって今までのぼくと思ってたら、痛い目見るんだからね! いけ! スラりん!」


 大木はあたしにまとわりついていたスライムに命じて、堤へ襲い掛からせた。どちらにせよ、あたしは全裸にされずに助かったみたいだけど……。


 いやいやあのキモデブのおかけであたしの脇毛が濃いって噂か広まっちまったじゃねえか! 必ずあのキモデブに落とし前つけさせてやんだから!


 スライムからようやく解放され、あたしが手ブラで胸元を隠し、横座りしている間にもスライムは堤の前で丸餅みたいな形からモモンガが飛ぶための皮を広げたように襲い掛かっていた。



刻を止める氷の牢獄アイシクルプリズン



 堤が手をかざしただけで大木のスライムは空中で固まり、すぐに床へと落ちた。落ちた氷漬けのスライムはバラバラになって砕けてしまう。


「うわぁぁぁーーーーっ! ボ、ボクのスラりんがぁぁぁーーーーっ!!!」

「勉強もせず、ただ欲望を満たすだけに生きてきた人間の末路だ。覚悟しろ、大木」


「よ、よくもぼくのスラりんを! 召喚サモンランドタートル! あれっ? ランドタートル! 出てこいっ! 出てこいったら!」


「なんど試しても無駄のようだぞ。オレの分析ではおまえはモンスターをこの場に一体しか召喚できない。おまえご自慢のスライムとやらもまだ完全に死んでいないようだからな」


 堤が大木に向かって手をかざすと、大木は堤に土下座し始めた。手を合わせたあと、ペコペコと身体を折り畳む。


 マジ滑稽!


「たっ、助けて! 堤くんも人殺しなんかしたら、夢見が悪くなるだろ? や、止めようね、人殺し」


「そうだな……同級生を殺してしまうというのは道徳的に良くない。だがクラス委員として、おまえを野放しにしておくこともできないな。放置しておけば必ずクラスメートに害を及ぼす」


 堤は大木の周りにいたヲタ男子どもを睨み付けると奴らはビビって視線を逸らしたり、俯いたり、している。



 いーこと考えたぁ!



 堤を利用すれば、あたしがまたカースト上位に返り咲けるじゃん!!! そしたら、クソ根本にまた立場ってもんを分からせてあ・げ・る!


―――――――――あとがき――――――――――

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