クズの転移勇者ども
第53話 カースト逆転
――――【横田目線】(ブリューナク王国王宮)
あー、マジつまんね。
異世界来たら、男子どもをけしかけて岡田を犯させようって思ってたのになんかよく分かんないことやって、さっさと退場してやんの。まあ岡田が抜けて王子があたしのこと、溺愛してくるかと思ったら、ふざけんなだし。
よりにもよって地味でクラス内カースト最低辺な根本を溺愛するとかありえないって!
王子のアレスが冴えない根本の手を取り、甘い言葉を吐いていた。非モテまっしぐらな根本はアレスに言い寄られ、困惑気味だ。
「南美……キミは本当に美しい心を持った女の子……いや聖女さまだ。この国は危機に瀕している。お願いだ、是非キミの力を私に、このブリューナク王国に貸して欲しい」
「そんな私に力なんて……でも私で良ければアレスさまのお役に立ちたいです」
どうせ、根本なんてこの国の人間にいいように使われて、捨てられるに決まってる。いい気になってんのも今だけだからっ!
「本当に!? それはありがたい! 多くの国民がキミの来訪を待ち望んでいたのだ。ささやかだがキミのためにパーティーも用意してある。っと、その衣装ではパーティーにはそぐわないかな。良かったら、ドレスを着てみないか?」
「わ、私がドレス!? そ、そ、そんな!」
「ドレスだけじゃないよ、私と一緒に踊ってくれないか?」
「そんな……私がアレスさまと踊るなんて……」
「アレスさまなんて他人行儀な呼び方じゃなくていいよ、南美。アレスと呼んでおくれ」
「ア、アレス……」
「なんだい南美」
「やややや、やっぱり恥ずかしいです」
「恥ずかしがることなんてないよ。私と南美はこの国を再興させるためのパートナーなんだから」
「パートナー!? パートナーってなんですか?」
「うん、そのことについてはパーティーのあとでじっくり話し合うとしようか」
「は、はい……」
アレスは根本の背に触れ、あたしたちを放置して奥へ籠もろうとしている。なんなのあたしたちを無視して、根本をお持ち帰りする気まんまんじゃん!
ありえないって!!!
あたしは目の前から消えようとしてる二人の前に立ちはだかる。
「アホくさあ……ちょっと、あたしらを勝手に呼び出しておいて、二人だけの世界に入るのは止めてくんない? 無視するとかマジふざけてんの?」
「ああ、忘れていたわけじゃない。従者に命じて、当面の生活に必要な物は用意させたはずだ。まだ必要なら言ってほしい。可能な限り、取り寄せよう。ただし、このブリューナク王国に力を貸してくれるという前提だけれども」
くっそ、あたしがアレスを睨んでも冷静そのものでまったく狼狽えたりしない。それどころか、アレスはメッチャあたしの好みのイケメンすぎるって。
根本に肩入れしなきゃ、推しにしてやってもいいのに……。
「ちょっとさ、王子。あんた、ちょっとイケメンだからって調子乗りすぎじゃない? 根本みたいな冴えない女子を猫かわいがりしてさ。岡田がただ聖女だって言ってるだけじゃん。あいつの言うことなんて信じてるとか馬鹿じゃない?」
「私は思う、愛は信頼に取る人物だと。私には分かる、キミよりは遥かにね」
「はあ!? あんた、とんでもなくあたしに失礼なこと言ってんの分かってんの?」
アレスは蒼く澄んだ瞳で、まるであたしの心の中を見透かしたように言ってくる。悔しくて、あたしはアレスのひらひらしたネクタイを掴んでいた。
あたしが睨んでいるのにアレスは涼しい顔をしている。根本はアレスの後ろでおどおどしていて、あたしをさらに苛立たせていた。
そんなときだ。
アレスを掴んだ腕に触れる手があった。アレスの手じゃない、別の男のもの。
「ははっ、やめなよ横田さん、王子さまに嫌われてやんの。色気振りまいたって、効果ゼロだよー。いい加減あきらメロン」
「大木、てめえ、いつからあたしにそんな舐めた口きけるようになったんだぁぁ? こらぁ! オナって洗ってない手であたしに触れんな、ボケが!」
大木の手を払い除け、いつものように蹴り飛ばそうとしたら、あたしの足が痛くて堪らない。蹴ろうとした大木の前に大きな亀がいて、硬い甲良で大木を守っていた。
「脅したって無駄無駄。ぼかぁね、チート持ちになったんだよ。少なくとも今の横田さんよりもぼかぁ間違いなく強いね。横田さんがぼくに全裸で土下座して頼みこんでくれたら、ぼかぁ、キミに力を貸してあげなくもないけどぉ」
ああ!? こいつカーストが逆転したとか思ってんの!?
ふざけんな!!!
―――――――――あとがき――――――――――
ありがとうございます。温かい読者のおかげで再開することができました。またお読み頂けるとありがたいです!
横田って誰やねん! な読者さまは下記を参照願います。
第24話 いじめっ子【ざまぁ】
https://kakuyomu.jp/my/works/16818093077292235875/episodes/16818093078862604885
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます