第41話 モンスター愛護団体
――――王都へ通ずる街道。
馬に乗り、俺は先頭をゆっくり進んでいた。
「貴様らはどう思う?」
傍らに控えるオモネールたちに訊ねた。
「そんな!? ブラッド殿下の立てた武功です」
「そうだーっ! なぜ譲ってしまうのですかー?」
「今回の武功なら月桂冠付き金獅子勲章間違いなしですぞ、それをみすみす捨ててしまうなど……ボフゥ……」
まあ反対されるだろうとは思った。
「安心しろ。貴様らの武功はジークフリートに保障させる」
「我々の武功など、どうでも良いのです」
「ブラッド殿下の名がー! 我が国はおろか、周辺の国々に轟くことこそがー、我らの最大の幸せー」
「そうですぞ、我らはブラッド殿下ためだから、私財を投げ打つ覚悟で……」
「痴れ者どもがーーーーーーーーーーーっ!!!」
「「「ひっ!?」」」
俺が三人の忠誠心に感動を覚えているとブラッド語に変換されて怒号が響いてしまう。オモネールたちはおろか、後ろにいる兵士たちまで腰を抜かしそえになっていた。
「この程度の武功、俺に取ってはゴミ屑に過ぎん。情けない弟に譲ってやる。俺には貴様らのような優秀な部下がいるのだ。いつでも武功など立てられるに決まっているだろう」
「くっ……ブラッド殿下の仰る通り……」
「オレは猛烈にー感動しているぅぅーーっ!」
「ボフゥゥ……ボフゥゥ……、殿下ぁぁぁ……」
「ええい、貴様ら女々しいぞ、涙を拭け、鼻水を垂らすな!」
感極まって、顔をぐしゃぐしゃにしていた三人にブラッドは怒っていたが、俺は微笑ましく思った。
兵士たちの休憩のため、野営していると……。
魚でも釣ろうかと出掛けた川原でワイルドボウとブラッディベアが対峙していた。両者ともに一トンを超える巨体である。どうもブラッディベアは子連れで相当気が立っているようだった。
まあ俺にとってまったく関係のない話で、両者ともに放置していると周辺の村に甚大な被害をもたらすので狩ることに決めた。
俗に猪突猛進というが、ワイルドボウはいきなり草むらから現れて、突進してくるから注意が必要だ。つい先日もこれほど大きな体躯でないにしろ、小型のワイルドボウに兵士が襲われ、怪我をしている。
そのときは脇腹を角で穿たれたが幸い、
俺はワイルドボウの注意を引くため、牽制で野球用のボール大の石を投げつけた。これで向かってきてくれるとありがたいんだが……。
石は見事にワイルドボウへヒットする。
だがワイルドボウはピクリとも動かない。
俺の投げた石で頭蓋骨に風穴が開いて、倒れてしまったようだ……。
牽制とはいったい……。
グルルルァァァァァーーー!!!
ワイルドボウが倒れたことを目の当たりにしたブラッディベアは立ち上がり、両前脚を振り上げて威嚇してきた。その前脚には引っかかれでもすれば、即死級の鋭い爪が生えている。
「子連れの相手を殺す気は俺にはない。この場を去れ、馬鹿者が!」
俺が睨みを利かせ、ブラッディベアに語りかけるが……五メートルはあろうかという巨躯が俺に向かって突進してきた。
「所詮は畜生。人の言葉など通じぬか……」
俺はブラッディベアの突進を闘牛士のようにギリギリまで引きつける。お互いの鼻先が接しようとした瞬間、ブラッディベアに頭突きを敢行した。一度でいいから熊と相撲を取ってみたかったのだ。
だが……。
俺の身体は血まみれになっていた。もしかしたら、油断によりブラッディベアの一撃を食らってしまったのかもしれない。
上手く衛生兵が俺を見つけてくれれば……って、どこも痛くない。
おかしいと思い、正面を見ると倒れていたのはブラッディベアで、額を血だらけにして大の字で倒れていた。子熊が気になって、ちらと見ると蜘蛛の子を散らしたように二匹の子熊が森へと帰ってゆく。
俺は熊と相撲を取った金太郎にすら成れないらしい……。
「ブラッド殿下が仕留められたのですか!?」
「いや相打ちになったのか、共倒れになっていた」
「素晴らしい幸運ですな、ボフゥ」
「我が君はー、神も味方してるぞー!」
自分で運ぶこともできたが面倒臭そうなことになると思ったので、三人には適当な理由をつけて言っておいた。
兵士たちが数十人掛かりで二体のモンスターを鍋料理にするため、血抜きの下処理をしていると妖しげな旗を持った集団が現れた。
「我々はモンスター愛護団体『熊を守護る会』だ。おまえたちのやっていることは熊との対話を無視しているっ! これは神への冒涜だ!!!」
「「「「「そうだ! そうだ!」」」」」
はちみつ食べたいなぁ~。
俺は思わず黄色い熊さんのように現実逃避したくなる。せめて異世界にはこんな馬鹿な連中は出さないで欲しい。
そう言えば原作では、フリージアたちはモンスター討伐に出かけたが、街はモンスター愛護団体により討伐が上手くできないでいた。
苦渋の決断でモンスターを狩るフリージアたち。
『熊を守護る会』の妨害に遭いながらもフリージアたちは討伐に成功した。だけどフリージアたちはモンスター愛護団体から猛批判を浴びてしまうのだった。
「オモネール、ソンタック、コビウル! この者たちを歓迎してやれ!」
「「「御意!!!」」」
―――――――――あとがき――――――――――
【注意】言わなくても聡明な読者さまならお分かりになると思いますが、このお話はフィクションです。
ということで愛護団体がどう、ざまぁされるか楽しみという読者さまはフォロー、ご評価お願い致します。
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