第40話 醜い争い

 ジークフリートとアレックスがお互いを殴り合い揉みくちゃになっている横で、マクシミリアンと村娘がお互いに罵り合っている。レオンはというと檻の隅っこに座り、ただ青い顔でぶるぶると震えていた。


「ククク……まるで動物園だな」

「その通りにございます」

「ハハッー! 笑えるぜー」

「誠に愉快ですなぁ、ボフゥ」


「ブラッド! おまえが仕組んだ罠だったんだな! 父上に言いつけてやるっ!」


 ジークフリートがどこかで聞いたことのあるような台詞を吐いてくる。


 どこだ?


 思い出した!


 ブラッドがやらかして、リリーと共にジークフリートに拘束されたときの台詞だ。声優さんのイメージがあったから、なかなか思い出せなかった。


「俺が仕組んだ罠だと? むしろ俺を罠に掛けようとしていたのは貴様の方だろ、ジークフリート!」

「ぐぬぬ……」


「ああ? 図星か。父上からモンスター討伐の任を賜ったのは、何を隠そう……この俺だっ! その手柄を横取りしようとして、失敗。あまつさえ、俺に責任を擦り付けようなど、笑えてきてへそで茶会ができてしまいそうだぞ、ふはははははは!」


「ぶるるるるわぁぁぁぁっ!!!」


 それまで静かにしていたレオンが首を左右に激しく振りながら雄叫びを上げて、暴れ出した。ソンタックにより手枷、足枷をされていたが、檻の中を転びながらも中にいるジークフリートたちに襲いかかっている。


「ブラッド殿下……残念なことにレオン殿はすでに施しようがなく、ゾンビ化が進んでしまいました。ああ、お労しや……プークスクスッ」


 沈痛な面持ちでソンタックは語っていたが、彼は最後に堪えきれず笑いを漏らした。


 ソンタックのアゼル子爵家とレオンのリオネル伯爵家は犬猿の仲であり、原作ではソンタックも悪いのだが、レオンに見事にざまぁされている。


「やだっ! なになになに!?」

「バイオハザードじゃねえぞ、ごらぁ!!!」


 えっ!?


 いま、バイオハザードって聞こえなかったか?


「ばわぁぁぁっ、ぐるるるるるるらぁぁっ!!!」


 喋ってたのはマクシミリアンかな? 


 なんか、そんな風に聞こえたけど滑舌が悪すぎて、気のせいか空耳に聞こえてしまったんだろう。


 ゾンビ化解除のイベントが『フォーチュン・エンゲージ』であったけど、それが可能なのは聖女の力に目覚めたフリージアだけ。しかも彼女の真珠のような涙が必要なのだ。


 狭い檻の中で命掛けの鬼ごっこの行く末を見守っていた。


「メーガス家のマクシミリアンを生け贄にしろ!」

「「「なっ!?」」」」


 ジークフリートは最も弱ったマクシミリアンを指差すと、さっきまで殴り合うほど喧嘩していたのにアレックスがジークフリートの命令に従い、マクシミリアンの肩を後ろからガッチリ拘束していた。 


「いやよーーーっ! 死にたくないわ!」


 そこに村娘も加わり、マクシミリアンはゾンビ化したレオンにその身を突き出されている。


「実に醜い!」


 人間、切羽詰まってしまうと簡単に仲間を裏切ってしまうとか酷いな。


「見るに耐えんな」


 俺がオモネールたちに目配せすると、


「「「【絶対氷結フリーズオブダイヤモンド】」」」


 三人は頷き、三和詠唱トライアドでレオンを氷漬けにしていた。


「はあ……助かった。ブラッドっ! なぜもっと早くボクを助けないんだ! 血を分けた弟を殺す気かーっ!!!」

「ブラッド殿下、あやつも固めましょうか?」


 オモネールがジークフリートを見ながら訊ねてくるが、その様子を見た途端ジークフリートはビビってしまったのか、溜まり込んでしまう。


「ふん、雑魚めが! 尻拭いをしてやった兄を愚弄するなど、まさに……愚弟!!!」

「ぐぬぬ……ぐぬぬぅぅぅ……」


 ジークフリートは悔しそうに床を叩いて、悔しがっていた。


 このままジークフリートを王都まで連行すれば、第二王子と言えど厳しい処分が下る可能性がある。ブラッドとジークフリートの父であり、国王ビスマルク八世は公平な判断を下す男だ。


 『フォーチュン・エンゲージ』で、ブラッドがフリージアの婚約破棄を始めとするやらかしが露見したとき、ビスマルクはブラッドを廃嫡した上、二階級降爵、さらに辺境へ追放するという厳しい処分を与えている。


 あくまで俺の予想だが、おそらくジークフリートは王位継承権を剥奪されるんじゃないかと……。フリージアは俺に懐いている様子はあるが、死亡フラグが働いて、ジークフリートになにかあれば俺の命はどうなるか分からない。


 そのため、俺はあることを考えていた。


 オモネールたちに訊ねたら、彼らは絶対に反対すると思うけど……。


―――――――――あとがき――――――――――

公開終了まであと残り少々の話を残すところとなりました。ドラノベも規定文字数が足りずに終わってしまったので、心置きなく閉じることができます。(改稿して公募へ送る予定)

終わるんじゃねえ、とお思いの読者さまに朗報!

https://kakuyomu.jp/works/16818093077292235875

上記ページの3つ並んだ★ボタンを押すことで作品を継続させることができる……かも。いくつ押すかはあなた次第! ★1000くらいあればうれしいな。

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