第37話 スパダリたちの仲間割れ【ざまぁ】
――――【ジークフリート目線】
「ジークフリート、本当に道は合ってるんだよな?」
せっかくボクが道案内を買って出たというのにアレックスが先輩風を吹かせて、文句を言ってくる。
「ボクの案内が間違っているとでも?」
「いや、そうは言っていない。ただ別のルートはなかったのかと」
「同じじゃないか!」
「いやアレックスパイセンは、んなこと言ってねえと思うぞ」
レオンまでアレックスの肩を持つ。
「ボクはね、キミたちがブラッドに一泡吹かせたいというから、敢えてこのルートを選んだというのに反対する気なのかな?」
「反対はしていない。ジークフリートが言うようにブラッド殿下が次期聖女とも目されるフリージアを性奴隷のように扱っているのならば、許されることではないからな」
「あのフリージアがブラッド殿下に全裸にされた上に首輪をつけられ、四つん這いで王宮を散歩させられるなど考えられん。羨ましい……」
レオンの奴、羨ましいとか言ってないか? ボクだって、できるならやってやりたいよ!
まあすべてでないにしろ、ボクがあることないことアレックスとレオンに吹き込んだら、すぐにボクに協力してくれた。やはり誰もがフリージアの美しさの前には骨抜きにされてしまう。
かくゆうボクもそうだ!
だがそんなフリージアを独り占めするブラッドは絶対に許せない!!!
まあブラッドがフリージアを好きにできるのも、もう終わりだ。ボクがブラギノール高原で大量のモンスター討伐の武功をあげれば、リーベンラシアどころか世界中の女の子がボクの前で股を開くことになるだろう。
もちろん、フリージアも、リリーもだ!
なんたって一騎当千の二人と戦闘と知略に長けたボクがいれば、モンスターの大群なんて一捻りさ。
せっかくボクがいい気分に浸っているというのにアレックスとレオンが水を差してくる。いやボクたちが浸っているのは毒沼だった……。
「しかしだ。この毒沼の体力消費は酷くないか?」
「確かに……気を抜くと意識が遠のいて、顔を毒沼にうずめてしまいそうになっちまう」
「我慢しなよ、ここを抜ければ一気にブラギノール高原なんだからさ」
なんて強がって、二人に悟られないように毒沼を進むが、一歩踏み出すごとにガッ、ガッと目の前が真っ赤に染まって体力を持っていかれる。
ボクの周りでは火山由来の腐食性ガスが奥底から湧いてきて、沼の表面でポコッと泡立ち弾けていた。
「くっそ! オレは先に行くぜ」
レオンが勢い任せで毒沼を抜けようとする。だが足を取られる沼地で悪手だ。
「待って! そんな無理したら……」
ボクの読み通り、レオンは痺れを切らしてくれた。この毒沼は
安全に渡るのには生け贄を捧げて、渡るのが正解だ。
「うおっ! あぁぁぁーーっ!」
ほら言わんこっちゃない。
バランスを崩し、前に倒れたレオン。最初こそ苦しそうにじたばた暴れていたが、やがて静かになった。
「馬鹿は置いてゆく」
「なっ!? ちょっと待て、ジークフリート!」
力尽きたのか前のめりになり、徐々に毒沼の奥底へ沈みつつあるレオン。ボクはそのレオンの背に最後の力を振り絞り、飛び乗る。またそこからレオンを踏み台にして、毒沼を飛び越えた。
「おい、ジークフリート! 私まで置いてゆく気か?」
「おまえで決めろ。仲間を見捨ててでも生き残るか、仲間想いの善人で死ぬかを!」
「くっ、す、済まない。レオン……これもフリージアを救うためなんだ……私がフリージアを妻に迎えたそのときはレオン、おまえの慰霊碑は建ててやるからな。恨むなよ……」
アレックスはレオンの背中に飛び乗る前に祈りを捧げていたが、結局レオンを踏み台にして毒沼を渡りきった。
「やり過ぎだぞ、ジークフリート!」
「はあ? アレックスだって自分の命欲しさにレオンを犠牲にしたじゃないか! キミがボクに意見する権利なんてないんじゃないか?」
「時間が掛かっても別ルートを歩むべきだった」
「おいおい、ブラッドを蹴落としたら、次期国王はボクなんだぞ。そのボクに逆らう気?」
「はあ……言っておくが、あんたは王の器なんかじゃない。はっきり言って、ブラッドの靴を舐めている方がお似合いだ!」
「なんだとーーーーっ!」
「あんたがやる気ならその喧嘩、このアレックス・キスカが買ってやる」
学友だとか勘違いしたのか、このボクに下僕であるはずのアレックスがグローブを叩きつけていた。
「いいだろう。ここがおまえの死に場所だ!」
「それはこっちの台詞だ!」
―――――――――あとがき――――――――――
ニケスイの空住キオ先生が以前に描かれた漫画のタイトルが凄すぎた……。
その名も『メスガキサキュバス制裁ナマイキ赤ちゃん部屋をわからせ棒で更生ノック』!
なおニケスイはWeb版のコロコロなのでとても健全ですっ!!!!!
これに近いタイトルでカクヨムに投稿したら、怒られるかな? やっぱり怒られるよなぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます