第34話 罠に嵌まるスパダリ
――――【ジークフリート目線】
くそっ! 今日はフリージアが来ていない……。
二人で話しているから、てっきり淫行に及んでいると思い、パンツを脱いだというのに金玉みたいに光るグラーツの禿頭を見て、ボクのフリージア分からせ棒は萎えに萎えてしまった。
フリージアは来なさそうなんで、ボクはズボンを履いて立ち去さろうとする。そういえば……昨日のズボンと下着が見つからないんだが、どこに行ったんだろうか?
もしかして、リリーの奴が回収して、ボクの魅力の詰まった香りを嗅ぎながら、自慰に使っているのかもしれないな。
ふっ、ボクはなんて罪な男なんだろう。
あいつはボクへの想いを素直に出せないツンデレだなぁ、はははっ!
そう思うと昨日の暴力もかわいく思えてくるじゃないか。仕方ないな……ボクはフリージア一筋なんだが、一夜の過ちくらいなら冒しても構わないかな。
ただし、リリーがボクの靴を舐めたならだけど。
ブラッドと同じ空気を吸ってると馬鹿になりそうで、その場を離れようとしたときだった。グラーツが深刻な顔をして、ブラッドに告げていた。
「ブラッド殿下! 大変にございます」
「なんだ? 俺はこの通り学生生活を満喫しているのだぞ」
「それは承知しておりますが国王陛下からのご命で……」
「父上がだと!?」
「はい……なんでもブラギノール高原にモンスターどもが大挙して押し寄せたそうで、その討伐で『初陣を飾れ』とのことです」
やった!
二人のやり取りを聞いていて、ボクは小躍りしそうになっていた。
「ははは! 聞いたぞ、聞いた! ブラギノール高原だな、ボクがブラッドより先回りして武功を立てれば、奴は父上から見放されるに違いない」
ボクは見たくもないブラッドの部屋で最高の情報を盗み聞きいたのだ。
初戦こそブラッドの卑怯なやり口に苦汁を飲まされてしまった。だが次こそはブラッドに苦汁を飲ませ、フリージアにはたっぷりボクの子種汁を飲ませてやるんだ!
「絶対にフリージアをブラッドから寝取ってやる! ついでにリリーもボクの妾にしてやるからなぁ!」
――――【ブラッド目線】
「これで良かったのですかなぁ?」
「良いにー決まってーいる!」
「そうですぞ、ボフ~。ジークフリート殿下はあろうことか、ブラッド殿下を出し抜こうとされている」
「確かにコビウルの言う通りであるな。まさに兄を出し抜こうなど不敬の極み!」
「そうだー! 間違いないー!」
早速準備のためドアを開けようとすると三馬鹿の声が聞こえてきて、なにやら話し合っているようだった。
「久しいな」
「ブラッド殿下! おなつかしゅうございます」
三人と会うのはかれこれ五年ぶりだろうか?
俺の顔を見た三人はすぐさま跪いて、臣下の礼を取った。オモネールが始めに口を開く。
「ブラッド殿下、モンスター共はブラギノール高原に非ずですぞ」
「キャステル高原にてー! 押し寄せるモンスター共をー! 見たのですぅぅーーー!!!」
「なんだと!?」
俺が三馬鹿を見ると、彼らはぶるるっと震えあがる。その様子を見るに彼らは嘘は言ってないようだ。
「ブラギノール高原は陽動、本隊はキャステル高原と来たか……」
別にグラーツ団長が俺を嵌めようとした訳ではなさそうだが、情報伝達に齟齬が生じたのかもしれない。
「ブラッド殿下のご慧眼、このオモネール、感服いたしました」
「我々をー! モンスターの襲撃を予測して監視のために派遣されたのですなー!!!」
「ボフゥゥ、素晴らしいでございますぞ!」
え? まったく予想なんてしてないよ。
たまたま超レアアイテムの黄金草採取という理由をつけて、フリージアから遠ざけるだけだったんだから……。
「ブラッド殿下……。私は殿下のように聡明で寛大なお方に出会ったことがございません」
「我々がーなんの成果もー得られずにーいるのに咎めることもなくー、継続させてくれたこと、感謝の極み!!!」
「そのお陰で我ら、黄金草を入手できたのでボフ」
は? 手に入んの? あの超レアアイテム……。
ごめん、俺……三人のこと三馬鹿とか思ってたけど、超有能過ぎんじゃん!
俺も『フォーチューン・エンゲージ』やってたときは見つけられなかったのに……。
そういや久し振りに顔を見た三人は原作でいがみ合うこともなく、なにか固い友情のような結束が芽生えているように見えた。
それだけじゃない、レンジャー訓練のような五年間の地獄を見てきた者たちだ、面構えが違う!
ヒョロガリ、猪突猛進、デブなど欠点があったが今はどうだ、そんな面影は皆無でみんな落ち着き払い精悍な顔つきをしていた。
―――――――――あとがき――――――――――
ジークくん、喜び勇んでブラッドを出し抜こうとしてるんだけど、間違いなくざまぁになっちゃうんだろうなぁw キモいジークくんがざまぁされるところが見たい読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。
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