第32話 間男と浮気彼女の潰し合い【ざまぁ】
――――【クリスタ目線】
もしゃもしゃと放り投げた薬草をむさぼり食うキノコ人間。私はキノコ人間が食ってる隙にその場を逃げ出した。
森の様子までおかしい。
ぐにゃぐにゃと木の幹が曲がりくねったように揺れている。色も変。幹や枝は茶色、葉っぱは緑のはずなのにピンクや青、おまけに黒や白まで混じってて、現代アートみたいなサイケデリックな色彩をしていた。
さっき吸引した危ないキノコのためなんだろう。
もしかしたら、あのキノコ人間も幻覚なのかも。
でもダントツの気持ち悪さだったので幻覚が解けたとしても、おしりから赤緑色の変な血を流してる光景は二度と見たくない。
二時間くらい歩いていると、吸引したキノコの効果は薄れ、幻想的な視界はすっかり元の緑と茶色に被われたただの森へと戻ってしまう。だけど、おかしなことに気づいた。
うそ?
道に迷った?
いつもなら来た道はすぐ分かるのに今日に限って、どこにいるのすら分からない!
そのとき、身の毛もよだつような悪寒が走った。後ろから来る悪寒に振り返ろうとしたが、遅かった。私は後ろから首根っこを腕で押さえられてしまう。私を捕らえた何者かが耳元でささやいた。
「おとなひくひろぉ。騒いだら殺ひゅ」
「は、はい……」
恐怖のあまり枯れるような声を絞り出して、後ろで私を拘束している者に返事した。
「持ち物をしゅてろ」
すーはー、すーはーと、どうやら私の匂いを嗅いでいるらしく、前世で出くわしてしまった痴漢と同じ変質者で間違いない。
――――回想。
入社一年目の暑い日のことだった。出社するため、ドア付近で満員の電車に揺られていると……。
『……!?』
声が出ない。
いきなり誰か分からない人から、おしりを掴まれた。掴まれたことにびっくりしていると、その手はいやらしい手つきでおしりから下がり、ストッキングを履いた内股を撫でてきていた。
恐怖から声を出せないでいると、いやらしい手はエスカレートしてゆき、スカートの中まで入ってこようとしていた。
しかし!
『おい、止めろ。俺の彼女に何するんだ!』
『ひっ!?』
良く通る男の人の声が満員の社内に響いた。その声に驚いたのか、私のおしりを触っていた痴漢が情けない声を上げている。
私に手を出してきた薄毛の痴漢はスーツの上からでも分かるくらい隆起した智くん逆三角形の体系を見て震えあがる。
その智くんに私のおしりを触っていた手を掴まれたのだ。痴漢は智くんの力に微動だにできないでいた。
『あんた……この女のおしりを触っていたよな?』
『お、おれは触って……ひっ!?』
『もう一度聞く。触ってたよな?』
『は、はい……』
普段はおっとりしてる智くんが見せる有無を言わせぬ凄みに私の心はときめく。
電車内で遭遇してしまった痴漢は智くんが捕まえ、次の駅で駅員さんに突き出していた。
『大丈夫?』
筋骨隆々の身体からは想像できないくらい優しい声で訊ねてくる智くん。でも向こうは私のことに気づいてなさそうだった。
『あ、あの……二係の岡田くんですよね?』
『あ、うん。なぜ俺のことを?』
『同じ会社ですから。四係の井澤です』
智くんに伝えると数秒のタイムラグがあり、彼が答えた。
『えっ!? 井澤さん? 俺のこと、知ってたんだ。いつもこの電車に乗ってたの? 意外だなぁ』
彼は私が知っていたことが照れくさかったのか頬を人差し指で掻いていた。
智くんとの馴れ初めを思い出してしまったけど、そんな優しくて頼りになる智くんはもういない……。私が彼を裏切ったんだから。
でも、もしかしたら……。
「助けてーーーーーーっ!!! 智くんっ!!!」
一縷の望みから私は元カレの名前を叫んでいた。
「おまひぇ、なんれしょのなまふぇふぉ!!!」
なになになに!?
あまりの滑舌の悪さに何を言ってるのか、さっぱり分からなかったけど、私が智くんの名前を言ったら私の喉元に食い込んでいた腕が外れてた……。
もしかして、後ろにいる何者かが智くん?
まさかと思い私は振り返る。
けど、すぐに振り返ったことを後悔した。
顔はぼこぼこに腫れ上がって身体は痣だらけ、キノコ人間どころか、ゴブリンの中でも特級に不細工な奴じゃない!
「きゃっ!」
超絶ブサイクは振り返った私の肩を掴んで、大きな木の幹に押し当ててきた。それだけに止まらず、私の服の襟を掴んで、一気に引き裂く。
「お、犯されるっ!!! 助けてっ! 誰かぁぁぁーーーーっ!!!」
「ひゃひゃひゃ! こんにゃひょころでしゃけぼうが人にゃんて、こにぇよ!!!」
「許して! 口でするから!」
「こひとら、おんにゃ日照りでまいにひガチガチなんらよ! 上のくひらけれ、終わるひょか思っれんのかぁ!!!」
意味不明だけど、男がすごく怒ってんのは分かる。私は犯されないように自分から男の股間に顔をやった。
く、臭い!!!
最早臭いを通り越して痛いくらい! 一言で臭さを言い表すとイカが腐って、強烈なアンモニア臭が湧いてきているよう。とにかく目まで痛いし、鼻が当たるだけで思わず吐いてしまいそうなくらい男の下半身はヤバい。
「あくしろ! この雌豚がっ!!!」
うおおおおええぇぇぇ!!!
目を閉じ、鼻を摘まんで口に入れた瞬間に胃酸が逆流しそうになる。
「たまんにぇぇ……」
男から油断したような声が漏れた。
今がチャンス!
私は前世でも転生してからも、それ以上強く噛んだことないってくらい、顎に力を込めに込めた。
「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」
超絶ブサイクはざまぁ見ろってくらいに、痛がり叫んでいた。私は食いちぎった竿を吐き捨てる。なにかホラー映画のように悶えるようにうねることもなく、ただ短いソーセージのような男性の象徴が転がっていた。
「お、オレひゃまのチンボルぎゃぁぁ……」
私の大切なお口を犯した男はわなわなと震えながら、力なく言葉にする。
「ばーか! ばーか! 私を傷物にしようとした代償よ!」
私は股間を両手で押さえる男に向かって、言い放っていた。
―――――――――あとがき――――――――――
あらら……間男とも知らず、噛みちぎっちゃったw
まあ、智を裏切った元カノが許される訳ありませんよね? 元カノもざまぁされるべきという読者さまはぜひフォロー、ご評価お願いいたします。
うおおおーーっ! ドラノベの応募期間が終わってしまいました。作者、残念なことに期日までに規定文字数に達することが出来ませんした……。ですが、そんなことは読者さまには関係ありませんのでこのまま10万字まで書き続けようと思います。
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